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謎の少女とスラム街の影
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クラリスはデスクを立ち、テオドールをソファに促した。
クラリスが逡巡している間も、テオドールは急かすことなく静かに待っていた。
「どこから話せばよいかしら……私が先代からあの森のお家を賜ったことは話したでしょ?」
「はい」
テオドールはゆっくりと答える。
「リンドル王国は、貴方も知っての通り、文化の異なる国々をつなぐ大陸の中央に位置しているの。だから王族として生まれた子どもたちは、幼い頃から東西南北に分かれて様々な文化を学ぶために、その国々へ足繁く通うわけ。
私は南側、そう、ランズ王国もそのひとつよね?」
「ですね」
「たまたまお世話になっていた時に、あの家を賜ったのよ? よくわからないでしょ?」
「はい、さっぱりです」
「だからね、私の話が下手なのではなくて、当の本人もよくわからないのよ」
…。
「当時の私はまだ幼くて、毎日裏の湖に出て眺めるのが好きだったの」
「暇だったのですね?」
…。
「5歳の時の話よ? ある日、その湖でボートに乗る親子がいたの。何だか温かい気持ちになったのを覚えてる。そして次第にお話しするようになって、お茶をご馳走になりに連れて来られたのがランズ王国王宮よ? 流石に5歳でも王女でもビビるわよ?」
「でしょうね」
「で、その時、親子と思っていた二人は親子じゃないと分かったのよ」
「そりゃ先代には王女はいませんからね」
…。
「とにかく、そんなこんなで私も他の国に行かされてたから、足が遠のいていたの。でもその後ここを訪れたのは、留学に来た時。国王陛下にご挨拶しに来た帰りに、ふらっと立ち寄ったら……まだあるじゃない? まだ入れるのかしらと、興味本位で鍵を回したら、これまたびっくり、開くじゃない? 嬉しくなって入って、驚いたわよ」
「余りの小ささにですか?」
「違うわよ! 考えてみて。私がこちらに来るのは、10年ぶりくらいよ? そしてあのハウスの鍵は二つだけ。少なくとも先代がお亡くなりになってからは誰も入れないはずなの。それなのに……キレイなのよ。誰かが定期的に風を通してるのね」
「先代がどなたかに託されたのでは?」
「誰よ? ってなると……ほら、あの時の少女しかないわよね」
…知らんがな
「妃殿下、話が見えません」
「だからね、私が誰かに狙われるとしたら、あのハウスが関係してるんじゃないかしらってこと。それ以外考えられないもの」
…。
「正確に言えばハウスではなく、私とあのハウスでともに遊んでいた少女。彼女が鍵のような気がするの」
「気がするって……」
「考えてもみて? 得体の知れない少女と国王よ? その二人の関係は? ただの少女が国王と会おうなんて、まず無理な話よ?」
「貴女のように、どこかの王女とかでは?」
「それは無い。子どもながら、彼女は私とは異なる環境で生活していると感じていたもの。でも不思議なの。身なりは貧相なのに、食事のマナーなんかは美しいの。今考えれば謎が多かった」
「その少女は今どこに?」
「スラム街よ。ほら、私がハンカチを渡している相手よ」
「は?」
「は?って……貴方、バカなの? 話の流れ的に分からない?」
…いやいや、あんたの話、さっぱりわからんぜ?
「いよいよ危なくなってきたわ。リザが……」
…リザって誰だよ? ってか話が遠回りしすぎじゃねえか?
混乱するテオドールの頭を整理しながら、彼はゆっくりとクラリスに声を掛けた。
クラリスが逡巡している間も、テオドールは急かすことなく静かに待っていた。
「どこから話せばよいかしら……私が先代からあの森のお家を賜ったことは話したでしょ?」
「はい」
テオドールはゆっくりと答える。
「リンドル王国は、貴方も知っての通り、文化の異なる国々をつなぐ大陸の中央に位置しているの。だから王族として生まれた子どもたちは、幼い頃から東西南北に分かれて様々な文化を学ぶために、その国々へ足繁く通うわけ。
私は南側、そう、ランズ王国もそのひとつよね?」
「ですね」
「たまたまお世話になっていた時に、あの家を賜ったのよ? よくわからないでしょ?」
「はい、さっぱりです」
「だからね、私の話が下手なのではなくて、当の本人もよくわからないのよ」
…。
「当時の私はまだ幼くて、毎日裏の湖に出て眺めるのが好きだったの」
「暇だったのですね?」
…。
「5歳の時の話よ? ある日、その湖でボートに乗る親子がいたの。何だか温かい気持ちになったのを覚えてる。そして次第にお話しするようになって、お茶をご馳走になりに連れて来られたのがランズ王国王宮よ? 流石に5歳でも王女でもビビるわよ?」
「でしょうね」
「で、その時、親子と思っていた二人は親子じゃないと分かったのよ」
「そりゃ先代には王女はいませんからね」
…。
「とにかく、そんなこんなで私も他の国に行かされてたから、足が遠のいていたの。でもその後ここを訪れたのは、留学に来た時。国王陛下にご挨拶しに来た帰りに、ふらっと立ち寄ったら……まだあるじゃない? まだ入れるのかしらと、興味本位で鍵を回したら、これまたびっくり、開くじゃない? 嬉しくなって入って、驚いたわよ」
「余りの小ささにですか?」
「違うわよ! 考えてみて。私がこちらに来るのは、10年ぶりくらいよ? そしてあのハウスの鍵は二つだけ。少なくとも先代がお亡くなりになってからは誰も入れないはずなの。それなのに……キレイなのよ。誰かが定期的に風を通してるのね」
「先代がどなたかに託されたのでは?」
「誰よ? ってなると……ほら、あの時の少女しかないわよね」
…知らんがな
「妃殿下、話が見えません」
「だからね、私が誰かに狙われるとしたら、あのハウスが関係してるんじゃないかしらってこと。それ以外考えられないもの」
…。
「正確に言えばハウスではなく、私とあのハウスでともに遊んでいた少女。彼女が鍵のような気がするの」
「気がするって……」
「考えてもみて? 得体の知れない少女と国王よ? その二人の関係は? ただの少女が国王と会おうなんて、まず無理な話よ?」
「貴女のように、どこかの王女とかでは?」
「それは無い。子どもながら、彼女は私とは異なる環境で生活していると感じていたもの。でも不思議なの。身なりは貧相なのに、食事のマナーなんかは美しいの。今考えれば謎が多かった」
「その少女は今どこに?」
「スラム街よ。ほら、私がハンカチを渡している相手よ」
「は?」
「は?って……貴方、バカなの? 話の流れ的に分からない?」
…いやいや、あんたの話、さっぱりわからんぜ?
「いよいよ危なくなってきたわ。リザが……」
…リザって誰だよ? ってか話が遠回りしすぎじゃねえか?
混乱するテオドールの頭を整理しながら、彼はゆっくりとクラリスに声を掛けた。
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