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84 その後のこと 2
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「じゃあ、ダンジョンの管理をよろしく頼む」
「はい、お任せください。ルーシー先輩、ご指導のほど、よろしくお願いしますね」
「う、うむ、任せるのじゃ。ビシビシ鍛えてやるのじゃ」
まあ、そういうことで、最古のダンジョンの始末はなんとかうまくいった。
ルーシーは、〈メイド使い魔〉に転移魔法陣を設置させ、ときどき、ダンジョン経営の手ほどきに訪れることになった。
「あの、ご主人様……」
さて、ダンジョンから出て街に帰ろうかと思っていると、〈メイド使い魔〉が何やら上目遣いで俺を見つめた。
「ん、何だ?」
「私にも名前をいただけませんか?」
ああ、忘れていた。確かに名前がないと呼びにくいし、かわいそうだ。
「ううん、そうだな……メイド…メイ…よし、決めた、メイリーにしよう。お前は今日から《メイリー》だ」
「メイリー……可愛いです、嬉しいです、ありがとうございます、ご主人様!」
ルーシーやアンガス、それから表情は見えないがおそらくナビも、ジト目で見つめていたが、俺はにやけながらメイリーの頭を撫でてやった。
「あ、そうだ。なあ、メイリー、三十九階層にやたら強い金属のアンドロイドのような奴がいたんだが、あれは何だ?」
俺の問いに、メイリーは一瞬きょとんとしていたが、「ああ」と手を叩いてこう言った。
「ああ、あれは進化したメタルスライムですよ」
えええっ、と、俺たちは同時に叫び声を上げた。
俺「ま、まじか……とてつもない魔力だったぞ」
アンガス「あれが、メタルスライムだと? バカな……」
ルーシー「とんでもない進化じゃのう……いったい何を食えばそんな進化をするのじゃ?」
「あの子はですねえ、古竜たちが三百年前にここに住み着いてから、ずっと竜たちの魔力を魔石にため込んで進化していったんですよ。だから、考える力も持っていますし……」
「そうか、なるほどな……スライムといっても侮れないな」
それから俺たちはメイリーに別れを告げ、ダンジョンを上へ上へと上っていった。途中、三十九階で、ストレージに入れていた〈進化メタルスライム〉を解放してやった。メイリーの支配下にあるそいつは、外に出ると、申し訳なさそうに丸くなって、すごすごと部屋の隅に去っていった。
♢♢♢
来た時より何倍も早く、俺たちはダンジョンを駆け上がっていった。途中で一回だけキャンプをしただけで、出発から一日半でダンジョンを脱出したのであった。
「じゃあ、ドラゴンたちを出すぞ」
入口から少し離れた谷の平らになった場所で、俺はそう言ってストレージから三頭の古竜たちを外に出した。
彼らはまだ、ベヒモスから受けたダメージのために起き上がることができず、首だけを持ち上げて苦しそうな息をしていた。
「お前たち、言葉は分かるか?」
俺の問いかけに、一番大きな赤黒い皮膚の古竜が答えた。
「ああ、分かる。我らをどうするつもりだ?」
「心配するな。まず、ポーションをやるから傷を癒せ。それから、このダンジョンには二度と来ないことを約束してくれ。そうすれば、何もしない」
「分かった。お前たちの力はベヒモスの洞窟で見せてもらった。その言葉に従おう」
俺は自家製のポーションを二個ずつ、ドラゴンたちに飲ませた。体が大きいのでもっと必要かなと思ったら、一本で立ち上がり、二本目ですっかり元気になった。
「素晴らしい効能だな、助かった、感謝する。我が妻子たちも感謝している」
「そうか、家族だったんだな。だが、すまないがダンジョンや人間の街の近くにいてもらうと、魔物たちが増えすぎて困るんだ。向こうの山脈のどこかに、住む場所を見つけてくれないか?」
「ああ、もともと我らは海の向こうの、世界樹の近くに住んでいたのだ。だが、一族の中で争いが起きてな、我はその争いから逃れてきたのだ。故郷にはもう帰ることはできないから、山のどこかに棲み処を探すとしよう。では、さらばだ、強き人間たちよ」
三頭の古竜たちは、一斉に元気な叫び声を上げると、背中の羽を動かしてふわりと空中に舞い上がった。
俺たちは風圧に吹き飛ばされないように、岩にしがみつきながら彼らを見送った。
♢♢♢
「トーマ、世話になったな、感謝する」
「主殿、実に楽しかったのじゃ。また、一緒に冒険をしようぞ、待っておるでな」
竜たちを見送り、久しぶりに外の空気を腹いっぱい吸いながら谷を上りきった後、俺たちは別れの言葉を交わした。
「そうだな、また、三人で暴れるのも面白いかもな」
俺たちは自然に三つの手を重ね合い、微笑みを交わし合った。そして、アンガスはあの日のように、背を向けると一切振り返らずに娘の待つ棲み処へ去っていった。
ルーシーと俺は彼を見送った後、しばらく他愛もない話をして名残を惜しんだ。
「では、主殿、さらばじゃ」
彼女はすばやく俺に抱きついて唇を重ねた後、呆然とする俺を置いてシュルシュルと空間の一点に吸い込まれていった。
(あいつ、いつの間にか目覚めちまったのかな……?)
『そういう風に作ってしまったのですから、すべては、マスターの心の反映ですよ』
ナビにそう言われると、何も言い返せない〝元おっさん〟の俺だった。
♢♢♢
一週間ぶりにパルトスの街に帰ってきた。
ちょうど夕方の閉門前で、仕事帰りの冒険者や商人たちで門の前には長い列ができていた。俺はその列の一番後ろに並んで、順番が来るのを待っていた。
ところが、しばらくすると、顔見知りの門番が慌てた様子で俺のもとへ走ってきた。
「おお、やっぱりトーマだったか。お前、何をのんきに並んでるんだ。さあ、来い」
大男の門番は、俺が挨拶する前に抱きかかえるようにして門の方へ連れて行った。
「ちょ、ちょっと、ボイドさん、どうしたんですか?」
「どうもこうもあるかよ。今、ギルドは大騒ぎになってるんだぞ。明日にでも、お前を探すための捜索隊が結成されようとしているんだ。早く、ウェイドさんに無事な姿を見せてやれ」
門番はそう言うと、俺を門の内側に押しやった。
(一週間くらいかかるって、ウェイドさんには言ったんだけどな)
『明日がちょうど一週間目なので、マスターが帰ってこないときは捜索隊を出すつもりだったのではないでしょうか』
まあ、ナビの言う通りだろうが、もう少し俺を信じてくれてもいいじゃないか。といっても、俺一人の力じゃ最奥までたどり着けなかったからな、しかたないか。
俺は夕暮れの街を急ぎ足で歩きながら、広場の奥の冒険者ギルドの前に着いた。
「こんばんは……」
俺が静かにドアを開けて入ると、ざわざわしていたロビーが一瞬にして静まり返った。
「ト、トーマ君っ! 帰って来たんだね、よかった」
バークさんの声が響き渡ると、すぐに奥の事務室からドスドスと走ってくる音が聞こえた。
「トーマっ! 帰って来やがったか……」
ウェイドさんはそのままカウンターを飛び越えて、俺にぶつかってくると、がっしりと俺の体を抱きしめた。
「……心配させやがって……」
「す、すみませんでした、く、苦しい、ウェイドさん、苦しいですって……」
ようやくウェイドさんは解放してくれたが、俺の周りには、顔見知りの冒険者たちが集まってきた。
「トーマ、無事でよかった、心配したぞ」
《虹の翼》の面々も元気そうで、口々に俺の無事を喜んでくれた。
「ルードさん、お久しぶりです、来ていたんですね」
「ああ、タナトスでダンジョン攻略を中心に稼いでいたんだがな、こっちで魔物が増えたっていうから来てみたんだ。そしたら、お前が調査に出て帰ってこないって言うからさ、捜索に加わろうと思ってたんだ」
「トーマ、無事だったんだな、良かったぜ」
《赤い雷光》のジェンスさんたちも、声をかけてくれた。
「よし、お前ら、少し静まれっ」
ウェイドさんの野太い声が響き渡った。
「さて、詳しいことは後でゆっくり聞かせてもらうことにして……トーマ、結果はどうだったんだ? お前ら、静かに聞くんだ。さあ、トーマ、こいつらにも聞かせてやってくれ」
ウェイドさんの言葉に、ロビーにいた冒険者たちはシーンと静まり返って俺に注目した。
「はい、調査は終わりました。ついでに、解決してきました。強力な助っ人が二人、協力してくれたので……もう、魔物の暴走は今後起きることはないでしょう」
俺の言葉に、ウェイドさんをはじめ周囲の人たちは呆気に取られて俺を見つめるばかりだった。
「ま、待て待て、それは確かのことなんだな?」
「はい、神に誓って」
「よし、お前ら、そういうことだ。詳しいことは、今から俺とバークで聞き取りをする。だから、今日のところは解散だ」
冒険者たちは、俺の口から詳しい話を聞きたくてウェイドにブーブーと文句を言ったが、ギルドマスターはそれを取り合わず、俺を抱きかかえるようにして、ドスドスと二階の自分の部屋へ連行していった。
「はい、お任せください。ルーシー先輩、ご指導のほど、よろしくお願いしますね」
「う、うむ、任せるのじゃ。ビシビシ鍛えてやるのじゃ」
まあ、そういうことで、最古のダンジョンの始末はなんとかうまくいった。
ルーシーは、〈メイド使い魔〉に転移魔法陣を設置させ、ときどき、ダンジョン経営の手ほどきに訪れることになった。
「あの、ご主人様……」
さて、ダンジョンから出て街に帰ろうかと思っていると、〈メイド使い魔〉が何やら上目遣いで俺を見つめた。
「ん、何だ?」
「私にも名前をいただけませんか?」
ああ、忘れていた。確かに名前がないと呼びにくいし、かわいそうだ。
「ううん、そうだな……メイド…メイ…よし、決めた、メイリーにしよう。お前は今日から《メイリー》だ」
「メイリー……可愛いです、嬉しいです、ありがとうございます、ご主人様!」
ルーシーやアンガス、それから表情は見えないがおそらくナビも、ジト目で見つめていたが、俺はにやけながらメイリーの頭を撫でてやった。
「あ、そうだ。なあ、メイリー、三十九階層にやたら強い金属のアンドロイドのような奴がいたんだが、あれは何だ?」
俺の問いに、メイリーは一瞬きょとんとしていたが、「ああ」と手を叩いてこう言った。
「ああ、あれは進化したメタルスライムですよ」
えええっ、と、俺たちは同時に叫び声を上げた。
俺「ま、まじか……とてつもない魔力だったぞ」
アンガス「あれが、メタルスライムだと? バカな……」
ルーシー「とんでもない進化じゃのう……いったい何を食えばそんな進化をするのじゃ?」
「あの子はですねえ、古竜たちが三百年前にここに住み着いてから、ずっと竜たちの魔力を魔石にため込んで進化していったんですよ。だから、考える力も持っていますし……」
「そうか、なるほどな……スライムといっても侮れないな」
それから俺たちはメイリーに別れを告げ、ダンジョンを上へ上へと上っていった。途中、三十九階で、ストレージに入れていた〈進化メタルスライム〉を解放してやった。メイリーの支配下にあるそいつは、外に出ると、申し訳なさそうに丸くなって、すごすごと部屋の隅に去っていった。
♢♢♢
来た時より何倍も早く、俺たちはダンジョンを駆け上がっていった。途中で一回だけキャンプをしただけで、出発から一日半でダンジョンを脱出したのであった。
「じゃあ、ドラゴンたちを出すぞ」
入口から少し離れた谷の平らになった場所で、俺はそう言ってストレージから三頭の古竜たちを外に出した。
彼らはまだ、ベヒモスから受けたダメージのために起き上がることができず、首だけを持ち上げて苦しそうな息をしていた。
「お前たち、言葉は分かるか?」
俺の問いかけに、一番大きな赤黒い皮膚の古竜が答えた。
「ああ、分かる。我らをどうするつもりだ?」
「心配するな。まず、ポーションをやるから傷を癒せ。それから、このダンジョンには二度と来ないことを約束してくれ。そうすれば、何もしない」
「分かった。お前たちの力はベヒモスの洞窟で見せてもらった。その言葉に従おう」
俺は自家製のポーションを二個ずつ、ドラゴンたちに飲ませた。体が大きいのでもっと必要かなと思ったら、一本で立ち上がり、二本目ですっかり元気になった。
「素晴らしい効能だな、助かった、感謝する。我が妻子たちも感謝している」
「そうか、家族だったんだな。だが、すまないがダンジョンや人間の街の近くにいてもらうと、魔物たちが増えすぎて困るんだ。向こうの山脈のどこかに、住む場所を見つけてくれないか?」
「ああ、もともと我らは海の向こうの、世界樹の近くに住んでいたのだ。だが、一族の中で争いが起きてな、我はその争いから逃れてきたのだ。故郷にはもう帰ることはできないから、山のどこかに棲み処を探すとしよう。では、さらばだ、強き人間たちよ」
三頭の古竜たちは、一斉に元気な叫び声を上げると、背中の羽を動かしてふわりと空中に舞い上がった。
俺たちは風圧に吹き飛ばされないように、岩にしがみつきながら彼らを見送った。
♢♢♢
「トーマ、世話になったな、感謝する」
「主殿、実に楽しかったのじゃ。また、一緒に冒険をしようぞ、待っておるでな」
竜たちを見送り、久しぶりに外の空気を腹いっぱい吸いながら谷を上りきった後、俺たちは別れの言葉を交わした。
「そうだな、また、三人で暴れるのも面白いかもな」
俺たちは自然に三つの手を重ね合い、微笑みを交わし合った。そして、アンガスはあの日のように、背を向けると一切振り返らずに娘の待つ棲み処へ去っていった。
ルーシーと俺は彼を見送った後、しばらく他愛もない話をして名残を惜しんだ。
「では、主殿、さらばじゃ」
彼女はすばやく俺に抱きついて唇を重ねた後、呆然とする俺を置いてシュルシュルと空間の一点に吸い込まれていった。
(あいつ、いつの間にか目覚めちまったのかな……?)
『そういう風に作ってしまったのですから、すべては、マスターの心の反映ですよ』
ナビにそう言われると、何も言い返せない〝元おっさん〟の俺だった。
♢♢♢
一週間ぶりにパルトスの街に帰ってきた。
ちょうど夕方の閉門前で、仕事帰りの冒険者や商人たちで門の前には長い列ができていた。俺はその列の一番後ろに並んで、順番が来るのを待っていた。
ところが、しばらくすると、顔見知りの門番が慌てた様子で俺のもとへ走ってきた。
「おお、やっぱりトーマだったか。お前、何をのんきに並んでるんだ。さあ、来い」
大男の門番は、俺が挨拶する前に抱きかかえるようにして門の方へ連れて行った。
「ちょ、ちょっと、ボイドさん、どうしたんですか?」
「どうもこうもあるかよ。今、ギルドは大騒ぎになってるんだぞ。明日にでも、お前を探すための捜索隊が結成されようとしているんだ。早く、ウェイドさんに無事な姿を見せてやれ」
門番はそう言うと、俺を門の内側に押しやった。
(一週間くらいかかるって、ウェイドさんには言ったんだけどな)
『明日がちょうど一週間目なので、マスターが帰ってこないときは捜索隊を出すつもりだったのではないでしょうか』
まあ、ナビの言う通りだろうが、もう少し俺を信じてくれてもいいじゃないか。といっても、俺一人の力じゃ最奥までたどり着けなかったからな、しかたないか。
俺は夕暮れの街を急ぎ足で歩きながら、広場の奥の冒険者ギルドの前に着いた。
「こんばんは……」
俺が静かにドアを開けて入ると、ざわざわしていたロビーが一瞬にして静まり返った。
「ト、トーマ君っ! 帰って来たんだね、よかった」
バークさんの声が響き渡ると、すぐに奥の事務室からドスドスと走ってくる音が聞こえた。
「トーマっ! 帰って来やがったか……」
ウェイドさんはそのままカウンターを飛び越えて、俺にぶつかってくると、がっしりと俺の体を抱きしめた。
「……心配させやがって……」
「す、すみませんでした、く、苦しい、ウェイドさん、苦しいですって……」
ようやくウェイドさんは解放してくれたが、俺の周りには、顔見知りの冒険者たちが集まってきた。
「トーマ、無事でよかった、心配したぞ」
《虹の翼》の面々も元気そうで、口々に俺の無事を喜んでくれた。
「ルードさん、お久しぶりです、来ていたんですね」
「ああ、タナトスでダンジョン攻略を中心に稼いでいたんだがな、こっちで魔物が増えたっていうから来てみたんだ。そしたら、お前が調査に出て帰ってこないって言うからさ、捜索に加わろうと思ってたんだ」
「トーマ、無事だったんだな、良かったぜ」
《赤い雷光》のジェンスさんたちも、声をかけてくれた。
「よし、お前ら、少し静まれっ」
ウェイドさんの野太い声が響き渡った。
「さて、詳しいことは後でゆっくり聞かせてもらうことにして……トーマ、結果はどうだったんだ? お前ら、静かに聞くんだ。さあ、トーマ、こいつらにも聞かせてやってくれ」
ウェイドさんの言葉に、ロビーにいた冒険者たちはシーンと静まり返って俺に注目した。
「はい、調査は終わりました。ついでに、解決してきました。強力な助っ人が二人、協力してくれたので……もう、魔物の暴走は今後起きることはないでしょう」
俺の言葉に、ウェイドさんをはじめ周囲の人たちは呆気に取られて俺を見つめるばかりだった。
「ま、待て待て、それは確かのことなんだな?」
「はい、神に誓って」
「よし、お前ら、そういうことだ。詳しいことは、今から俺とバークで聞き取りをする。だから、今日のところは解散だ」
冒険者たちは、俺の口から詳しい話を聞きたくてウェイドにブーブーと文句を言ったが、ギルドマスターはそれを取り合わず、俺を抱きかかえるようにして、ドスドスと二階の自分の部屋へ連行していった。
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