少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei

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83 その後のこと 1

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【お知らせ】
 いつも読んでくださって、ありがとうございます。
 本作も、いよいよ本編の終わりが近づいてきました。思うようにPVや★がいただけず、持病も悪化して、途中でやめようかという時期が何度もありましたが、そのたびにトーマの「やるだけのことはやってみようぜ」という声に励まされて、書き続けてまいりました。
トーマは好きな主人公なので、また成長した物語もいつか書きたいと思っています。

 ここまで、応援していただいた皆様、本当にありがとうございました。
 新作『神様の忘れ物』を来週から連載できたらと思っています。どうか、応援よろしくお願いいたします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ベヒモスが、もう一方の巨大な手によって飼い猫のようにおとなしく神界に連れ去られた後、その場に残ったアレッサ様が、優しく俺たちに声を掛けた。
「世話になったのう、アンガス、トーマ、ルーシー……何かお礼をしたいのじゃが、望みはあるか?」

「い、いいえ、そのような、滅相もございません。お姿を目にできただけで望外の幸せでございます」
 アンガスが、慌ててそう答えた。

 まあ、俺としてもアレッサ様の役に立てただけで満足だったが、一つだけ気になったのでこう言ってみた。
「アレッサ様、ダンジョンはどうなるのでしょうか? あの、もしよかったら、ダンジョンを俺に管理させてもらえませんか? いや、正確に言うと、ルーシーがドーラの街のダンジョンと掛け持ちで管理するのですが……」

「おお、そうであった、その問題が残っていたのう。よいぞ、我としても、誰かに管理を任せるより、そなたに管理してもらえれば安心じゃ。こちらこそよろしく頼む」

 やったね。言ってはみるものだな。

「ルーシーは何か望みはあるか?」

 アレッサ様の問いに、ルーシーはニコニコしながら首を振った。
「我は、もう欲しいものはすべて手に入れておる。だから、何もいらぬのじゃ。主殿の欲しいものが、我の欲しいものじゃ」

 アレッサ様は、目を細めて嬉しそうに微笑みながら頷いた。
「そうか……では、今後我に用があるときは、アンガスを通して伝えるがよい。アンガス、そなたにはこれを渡しておこう……」
 彼女はそう言うと、アンガスに自分が身に着けていたネックレスを手渡した。
「これに魔力を込めて呼びかければ、我と交信ができる。娘にも教えておくがよい」

「ははあっ、ありがたき幸せ。子々孫々、永遠に家宝として受け継いでまいります」

「うむ、まあ、失ったり壊れたりしたときは、また代わりを授けるゆえ、そう大げさに考えずともよいぞ。
 さて、いとし子たちよ、そろそろ別れの時間じゃ。また、会おうぞ。たまには、我を呼び出してくれ、千年の間仕事づくめでは、気が滅入るでな」

『いやはや、もう怠ける計画をしておるのか? さあ、帰るぞ、アレウス』

 アレッサ様は苦笑しながら、俺たちに手を振って、ゆっくりと上空に消えていった。それとともに、光もだんだん薄くなり、やがて元の薄暗がりの世界に戻った。

 主を失ったベヒモスの棲み処は、ただ茫洋として広く、静寂が包んでいた。

「よし、帰るか」
 俺の声に、まだ上を見上げていた二人は、我に返ったように俺の方を見た。

「まるで長い夢を見ていたような気分だ……トーマ、お前は本当に、何と言うか〝冷めている〟な。ものすごい経験をしたと思うのだが……」
 アンガスが、半ば呆れたようにそう言った。

「うははは……それが主殿なのじゃ、アンガスよ。面白いじゃろう? 我も興味が尽きぬのじゃ」

「おい、人を実験動物のように見るんじゃない、……ったく。それより、さっきの話だが、ダンジョンをもう一つ任せていいのか?」

「うむ、構わぬぞ。一つも二つもやることは同じだからのう。じゃが、それより、〈使い魔〉を作って管理させる方が簡単じゃぞ、主殿」

 俺は、ルーシーの言葉に驚いて聞き返した。
「はあ、〈使い魔〉を作る? どうやって?」

「簡単なことじゃ。コアをテイムした後、コアに命じるだけじゃ」

(そんなことができるのか? まあ、とにかくやってみよう)

「よし、やってみるか。じゃあダンジョンに戻ろう……っと、その前に、あの古竜たちをどうにかしないとな」
 俺は、亜空間の穴の前に倒れた三頭のエンシャントドラゴンたちを指さした。

「ふむ、とりあえず主殿のストレージの中に入れておいて、ダンジョンの外に出た時に、もうここに近づくな、と脅しておけばよいのではないか?」

 ルーシーの言葉に俺も同意して頷いた。
「うん、そうするか。じゃあ、収納っと……」
 俺は三頭の巨大なドラゴンをストレージの中に収納した。

「……まったく……規格外にもほどがある……相手は、一頭でも厄災級の古竜だぞ……」
 アンガスは一連の会話と俺の行動に、頭を抱えて思わずつぶやくのだった。


♢♢♢

 俺たちは、亜空間の穴を通ってダンジョンの最奥の部屋に戻った。

「じゃあ、やってみるぞ」
 俺は祭壇の上に上がって、そこに安置されている大きな紫色の魔石の前に立った。そして、おもむろに右手を魔石の上にかざし、目をつぶって〈テイム〉を発動する。

 ルーシーの時ほどではないが、それでもかなりの量の魔力を吸い取られた。やがて、吸い取られる魔力が減っていき、完全に止まると、魔石が薄緑色の光を放ち始めた。そして、その光は数秒後、次第に薄くなっていき消えた。

「よし、テイムできたようだ」
 俺はそう告げると、ストレージからマジックポーションを取り出して飲み干した。

「ルーシー、〈使い魔〉を作るときに、何か注意することはあるか?」

 俺の問いに、祭壇の下で見上げていたルーシーが首を小さく振って答えた。
「いや、特に何もないぞ。ただ、ちゃんと使い魔の姿をイメージしないと、出てこないからのう。コアを悩ませないように、はっきりとイメージを伝えるのじゃ」

「ああ、分かった。じゃあ、どうするかなぁ……ううん……やっぱり、使い魔っていったら、これでしょう」
 俺は、イメージをしっかりと思い浮かべてから、再び魔石の上に手をかざし、魔力を放出しながら心の中で念じた。
(さあ、忠実なるしもべよ、俺の前に姿を現せ!)

 ギュンッと魔力が吸い込まれるような感覚の後、魔石が一瞬強い光を放った。

『あ~あ…やっぱり、マスターの本質は〝おやじ〟なのですね』

 ナビの呆れたような声に、俺は少々憤慨しながら目を開いた。
(失礼だな。本質も何も、俺はもともとアラサーのおじさんだぞ)

「初めまして、ご主人様。呼び出していただいて、光栄ですう♪♪」

 俺の目の前に立っていたのは、俺のイメージと寸分違わぬ〝可愛らしいメイド〟だった。

「なあ、主殿、これが主殿の趣味なのか?」
 キャピッとしたメイド少女の〈使い魔〉を見たルーシーが、やや不満げに尋ねた。

「う、うん、まあ、そうかな」

「……分かったのじゃ。我も、その服を作るのじゃ」
 ルーシーが何やら対抗心をむき出しにしながら宣言した。
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