神様の忘れ物

mizuno sei

文字の大きさ
4 / 84

3 転生した独身OLは、新しい人生を歩み始める

しおりを挟む
 本日、連投二話目になります。
 どうか、応援よろしくお願いいたします。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 いやあ、びっくりした、というか、後で考えると腹が立ってきた。

(〈言語翻訳〉機能なんて、生まれた瞬間に自動で発動するものでしょう? なんで選択式なのよ、馬鹿じゃない? ノーなんて選ぶ人、いるの? まあ、よほど言語習得に燃えてる変人とか、いるかもしれないけどさ……ブツブツ……)

 これは、後で知ったことだけど、自動翻訳機能が選択式になっていたのは、転生者の前世の言語がいろいろ違うから、生まれた後、前世に合わせた言語に調節するためだったみたい。

 まあ、ともあれ、一番の障害が解決して良かった。うん、いちおう神様には感謝しなくちゃね。
(神様、どうもありがとう)

 さて、では改めて、私のこの世界でのステータスをじっくり見てみましょうか。
 今はおっぱいを飲んだ直後だし、おむつも替えてもらったし、しばらくは誰も来ないはずだ。
(では、ステータス、オープン!)

******

《名前》 リーリエ・ポーデット
《種族》 人族
《性別》 ♀
《年齢》 0歳
《職業》 ???
《状態》 健康

【ステータス】

《レベル》 1
《生命力》 31
《 力 》 3
《魔 力》 100
《物理防御力》 15
《魔法防御力》 35
《知 力》 92
《俊敏性》 2
《器用さ》 10
《 運 》 ──

《スキル》 火属性魔法Rnk1 土属性魔法Rnk1
      聖属性魔法Rnk1 無属性魔法Rnk1

《加 護》 運命の女神ラクシスの加護

******

(と、まあ、こんな感じ。ふふふ……やっぱり、この世界には「魔法」があった。やった~~って感じ? うん、期待してたから、これは嬉しい。しかも、四属性持ちよ、これって、けっこうすごいんじゃない? 知らんけど……。
 あと、気になるのが、《魔力》と《知力》が飛びぬけて高いこと。《知力》は、まあ前世の記憶持ちだから、高いのは分かるけど、魔力100って、なんか、赤ん坊が持ってていいのか、少し心配ではあるわね。
 それと、《運》が傍線って何? 運がいいの?悪いの? どっち? まあ、いいわ、いずれ分かるでしょう。
 それに、《加護》持ちよ。これはありがたい。どんな加護なのか楽しみね。加護をいただくのは〈運命の女神ラミシス〉様。今日から、お祈りを捧げますね、女神ラミシス様)

 こうして、私、中里衣津美改めリーリエ・ポーデットは、新しい人生を歩み始めたのだった。


♢♢♢

 転生して半年が過ぎた。リーリエ・ポーデットとして新しい人生を歩き始めた私の日々は、今のところ順調だ。

 私の新しい家族は、かなり裕福だと思う。まだ、家の外の世界はほとんど見ていないけれど、たまにレーニエ母さんやプラムさんが、私を抱っこして〈窓から見える〉外の世界を見せてくれる。
 この家は、かなり大きな街の中にあるようだ。見える範囲の建物は、石や木を組み合わせてできた大きな家が並んでいる。下に見える広い通りも石畳で、多くの人々や馬車が行き交っている。

 やはり、こうした転生もののアニメやラノベで見るように、この世界の文明度は、地球の中世の時代あたりで止まっているのかもしれない。魔法があまりにも便利なので、機械文明が発展しないのだろうね。
 
 それでも、意外だったのが〈トイレ〉だ。
 生後半年の私は、母に連れられて初めてこの世界のトイレに入った。
「ほら、リーリア、ここに座って。おしっこやうんちのときは、こうやってするのよ。まあ、あと一年後くらいにはできるようになってね」

 母さんはそう言って、陶器製の便器に私を座らせた。驚くことに、水洗トイレだった。たぶん〈魔道具〉だろう。まあ、こんなのが使える家は、よほど裕福な家に限られるだろうけど……。でも、水洗トイレがあるということは、おそらく水道も魔道具製だろうし、街には下水道施設が整備されているはずだ。

 このように、地球の中世より明らかに進んでいる面がある。ただ、貧富の差や身分制度などはどうだろうか?早く外に出て、この世界のことをもっと知りたい。


♢♢♢

 この世界にも明確な季節の変化がある。
 私が生まれた季節は、前世で言えば、たぶん「春」の終わりごろだったのではないかと思う。それから、だんだん気温が高くなり、その後二か月過ぎた頃からだんだんと涼しくなっていった。そして、今、部屋の中は心地よい暖かさだが、窓の外では灰色の空を背景に、白く小さなものが無数に空から舞い落ちている。そう、「雪」が降っている。

「まあま、あれ、なあに?」
 私は、おっぱいを飲むのを中断して、必死にたどたどしさを演じながら、窓の外を指さしてレーニエお母さんに尋ねる。

「あれはね、雪っていうのよ。さわるととっても冷たくて、すぐに溶けてお水になっちゃうの」

 私が初めて勇気を振り絞って、言葉を発したのはひと月ほど前のことだ。まず、「まあま」、「ぱあぱ」という言葉を、なるべくたどたどしく発してみた。本当は、もうぺらぺらとしゃべることはできる。でも、焦ってそんなへまはしない。私は、今度の人生を用心深く、しかし、自由に、思うがままに生きていきたい。そのためには、しっかり考えて、不幸を招くような迂闊なことはしない。

 まあ、それでも、生後半年余りの赤ん坊が言葉を発したのだから、家族はそりゃあもう、大騒ぎだったけどね。
(だって、もう、しゃべりたくてしゃべりたくて仕方がなかったんだもん……)


♢♢♢

 こうして、四年の歳月が平和に過ぎて、私は四歳になった。
 この四年間で、特に変わったことと言えば、そう、私に弟〈ロナン〉が生まれたことだ。もうすぐ一歳になる。金髪に灰青色の瞳のとっても可愛い弟だ。将来、弟を溺愛する自分の姿が想像できるわ。

「ただいま」

「おかえりなさい、パパ」

「おお、リーリエちゃん、ただいまぁ。んん、相変わらず可愛いなあ、わが娘は」

「レビー、お帰りなさい。夕食に間に合ってよかったわ。手を洗ってきて」

「ああ、ただいま、マイハニー。ん、うまそうな匂いだな、おなかがすいたよ」
 父さんはそう言って、母さんにキスをすると洗面所に向かった。

 父レブロンが帰宅する時間は、日によってまちまちだ。彼の仕事は商人、といっても、物を仕入れて売るという普通の商人ではない。保存がきく物品を、なるべく安く大量に買い付け、それを倉庫に入れて置き、市場でその物品が品薄になり、値上がりしたタイミングで商人に卸し売りするという、いわゆる〈投機商人〉だ。

 彼は、もともと裕福な商人の家の次男として生まれた。家の手伝いをしながら学び、いずれは家を出て、他の商人のもとで働くか、独立して自分の店を持つか、あるいは行商をするかの三択の道を選ばされた。
 成人した父が選んだのは、少し変わった二番目の道だった。彼の父が交易港に持っていた古い倉庫を財産としてもらい受けると、それを利用した〝投機商い〟を始めた。
 そして、それは大当たりして、またたくまに財を増やし、父は若くして一流商人の仲間入りを果たしたのだ。


 ここまでの私の話を聞いてくださった読者諸氏は、「あれ、おかしいぞ?」と、疑問を抱かれたことだろう。
 そう、私の転生後の人生は確かに、女神クローラ様によって、「良い人生」に振り分けられた。しかし、その後の使天使のへまによって、女神アトロフィス様は「普通の人生」の転生先に私の「モノクロニクル」を持っていかせたのだ。

 でも、この転生先は、どう考えても「恵まれた」「良い人生」の家である。決して「普通」の家ではない。これはどういうことか?

 実は、その答えはもう少し後になると分かる。もうしばらく待ってほしい。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

処理中です...