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ブルーサファイアの髪飾り
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「少し授業をサボり過ぎではないの、キャリー。」
エイミー様が少し眉を顰めてそういった。
今日は朝のメイクはしていない。
ほぼ毎朝高等部へ行っているとはいえ、たまに「明日は遠慮して欲しい」と手紙をいただいたりセレーナ様から伝言されることがある。
そして今日がその日だ。
なのでいつもならメイクをしているこの時間、ガゼボでおしゃべりに興じているのだ。
「ごめんなさいね、キャリー。メイクを落とさないと授業に出られないのよね。」
少し困った様にセレーナ様がフォローを入れてくれる。
「とはいえ……サボりすぎだわ。大丈夫なの?タンガス先生に授業中に随分怒られて、放課後呼び出しまでされていたじゃない!」
エイミー様の言い分に思わず目を細めた。
地理の授業の時の事を言っているのだろう。
あの迫力ある質問攻めは研究オタクならよく見かける光景だ。
だけれども単に夢中になって話しているだけ。
私は父や兄で慣れているけれど圧が凄いので傍目には怒っている様に見えるのだろう。
「心配かけてごめんなさい!でも大丈夫、怒られたりなどしていないわ。」
「でもいつかは怒られるわ。中等部は出席日数は問われないとはいえ、朝のメイクでしかあなたと会わないというのもどうなの。」
すると今度はベス様が首を傾げながら言う。
「だからかしら?アラン様とどうなっているのか、貴方の口から聞いた事ないかもしれないわね。」
ふと今気付いた様にエイミー様が言い
「実際悪役令嬢はどうなの?アラン様はどうなの?」と続けた。
困った。
悪役令嬢の方の私は相変わらずだ
報告できる事なんて何もない。
でも……
ランチを一緒にとるようになってから、朝でも私の言葉にたまに相槌を打ってくれるようになったのだ。
声色も随分柔らかくなった。
「アラン様はいつでも侯爵令息然とされていて……でも最近では悪役令嬢の私の話でも相槌は打っていただけるようにはなったわ。」
「ええ……その程度なの?手強いのは分かっていたけれど……。」
「あら!それでもお兄様はお家では私にキャリーの話をするわよ!お手紙も定期的に預かるしね。文通では良好よねえ?キャリー。」
セレーナ様が私に話を振る。
「え、ええ!もちろん!」
慌てて答えるも、私は一つのことが気になった。
アラン様はセレーナ様にどんな話をしているのー!
知りたいような知りたくないような、もぞもぞとした気分になる。
「まあ!お手紙ではどんなやり取りをされているの?」
ベス様が聞いてくる。
「え!!そ、それは……その……」
「まあ!良いじゃないのよ。キャリー。私には見せてくれるじゃない!いつもあなたの喋り方が可愛らしいとか、メイクも似合っているとか。あのお兄様がちゃんと褒めているのよ!ね?キャリー。大丈夫誰にも言ったりなんてしないわ!私達仲間内だけ、ね!」
私がマゴマゴしているとセレーナ様が暴露してしまい、顔が赤くなる。
「それは!とても順調じゃないの!何を隠す事があるの?!」
「そうよ、素敵な事じゃないの!」
もう!という感じでベス様とエイミー様が口々にいう。
恥ずかしがる私など置いて話がどんどん進んでいく。
「じゃあ朝の交流で会話をするようになるまで後一歩ね?!」
「話すようになれば、他の令嬢方を牽制できるわ!」
「け……牽制?」
不穏な言葉に思わず聞き返す。
「そうよ、何を今更!皆、自分の婚約者に他の令嬢が近付かないよう牽制しているのよ!アラン様は人気なんだからあなたももう少し頑張らないと……そうね……明日はアラン様の色のアクセサリーをつけていくっていうのはどうかしら?」
エイミー様は少し考えると思いついたように提案をした。
「良いわね!キャリー、あなたお兄様からアクセサリーは贈ってもらっているのかしら?」
セレーナ様が同意して私に聞いてくる。
「いいえ、アラン様から贈り物など頂いたことは……」
「まあなんて事!!それは本当なの?!」
「え?ええ……。」
セレーナ様の勢いに思わずたじろぎながらも返事をする。
「アクセサリーどころか贈り物をしない婚約者だなんて……!婚約が決まった時も?誕生日も?」
「婚約が決まった時も、私の誕生日も、まだ王都に来ていなかったから……」
「関係ないわ!手紙と一緒に送ることはできるのだから!!」
「でもカードはいただいているのよ?」
「カードだけじゃダメよ!!」
キッパリと言い放たれてポカンとしてしまった。
そういうものなの……?
ハァァとセレーナ様が長いため息をついた。
「……今度お兄様に言っておくわ……」
「アラン様は確かにそういうことに疎そうだものねえ。」
エイミー様も少し呆れ気味だ。
そ……そうだったのね!
「アラン様の色のアクセサリーなんかが贈られていたらそれを付けていけば、牽制にもなるかと思ったのだけれど……」
エイミー様が私を見ながらがっかりしたように言う。
なんだか居た堪れない……申し訳ないわ……
「ベス?黙り込んじゃってどうしたの?」
セレーナ様がふと気付いたようにベス様に水を向けた。
言われてベス様が急に黙り込んだことに気が付いた。
「え?いいえ、少し考え事を……」
「こんな話の途中に何を考えるというの?」
訝しげにセレーナ様が問う。
思わず私までメグ様を見つめてしまう……
と、そこでエイミー様が声を上げた。
「あら!ベス、あなたの髪飾りブルーサファイアかしら?ちょうど良いじゃない!キャリーに貸してあげなさいよ!アラン様の瞳の色だわ!」
宝石を借りる?!
そんな高価なものを?
思わず口を開こうとした時だった。
「ダメよ!!」
ベス様が大声を上げた。
突然の大声に開きかけた口を閉じてしまった。
「ちょ、ちょっと……どうしたのよ。声が大きいわ!」
エイミー様がバツが悪そうに言う。
「ご……ごめんなさい……!でも……でも……!!」
ベス様はブルーサファイアの髪飾りを手のひらで隠すように抑える。
一体どうしたと言うの……
ちらりとセレーナ様の方を伺うとセレーナ様も驚いている。
「ごめんなさい!」
それだけ言うとガタンと椅子を鳴らしてベス様はガゼボを出て行ってしまった。
私は訳が分からずベス様の後ろ姿とセレーナ様とを交互に見る。
すると急に納得顔になったセレーナ様が「ああ……そういう事ね…………」とボソリと呟くと、エイミー様がハッとした顔をセレーナ様に向けた。
私はただただ置いてけぼりで2人を眺めていた。
エイミー様が少し眉を顰めてそういった。
今日は朝のメイクはしていない。
ほぼ毎朝高等部へ行っているとはいえ、たまに「明日は遠慮して欲しい」と手紙をいただいたりセレーナ様から伝言されることがある。
そして今日がその日だ。
なのでいつもならメイクをしているこの時間、ガゼボでおしゃべりに興じているのだ。
「ごめんなさいね、キャリー。メイクを落とさないと授業に出られないのよね。」
少し困った様にセレーナ様がフォローを入れてくれる。
「とはいえ……サボりすぎだわ。大丈夫なの?タンガス先生に授業中に随分怒られて、放課後呼び出しまでされていたじゃない!」
エイミー様の言い分に思わず目を細めた。
地理の授業の時の事を言っているのだろう。
あの迫力ある質問攻めは研究オタクならよく見かける光景だ。
だけれども単に夢中になって話しているだけ。
私は父や兄で慣れているけれど圧が凄いので傍目には怒っている様に見えるのだろう。
「心配かけてごめんなさい!でも大丈夫、怒られたりなどしていないわ。」
「でもいつかは怒られるわ。中等部は出席日数は問われないとはいえ、朝のメイクでしかあなたと会わないというのもどうなの。」
すると今度はベス様が首を傾げながら言う。
「だからかしら?アラン様とどうなっているのか、貴方の口から聞いた事ないかもしれないわね。」
ふと今気付いた様にエイミー様が言い
「実際悪役令嬢はどうなの?アラン様はどうなの?」と続けた。
困った。
悪役令嬢の方の私は相変わらずだ
報告できる事なんて何もない。
でも……
ランチを一緒にとるようになってから、朝でも私の言葉にたまに相槌を打ってくれるようになったのだ。
声色も随分柔らかくなった。
「アラン様はいつでも侯爵令息然とされていて……でも最近では悪役令嬢の私の話でも相槌は打っていただけるようにはなったわ。」
「ええ……その程度なの?手強いのは分かっていたけれど……。」
「あら!それでもお兄様はお家では私にキャリーの話をするわよ!お手紙も定期的に預かるしね。文通では良好よねえ?キャリー。」
セレーナ様が私に話を振る。
「え、ええ!もちろん!」
慌てて答えるも、私は一つのことが気になった。
アラン様はセレーナ様にどんな話をしているのー!
知りたいような知りたくないような、もぞもぞとした気分になる。
「まあ!お手紙ではどんなやり取りをされているの?」
ベス様が聞いてくる。
「え!!そ、それは……その……」
「まあ!良いじゃないのよ。キャリー。私には見せてくれるじゃない!いつもあなたの喋り方が可愛らしいとか、メイクも似合っているとか。あのお兄様がちゃんと褒めているのよ!ね?キャリー。大丈夫誰にも言ったりなんてしないわ!私達仲間内だけ、ね!」
私がマゴマゴしているとセレーナ様が暴露してしまい、顔が赤くなる。
「それは!とても順調じゃないの!何を隠す事があるの?!」
「そうよ、素敵な事じゃないの!」
もう!という感じでベス様とエイミー様が口々にいう。
恥ずかしがる私など置いて話がどんどん進んでいく。
「じゃあ朝の交流で会話をするようになるまで後一歩ね?!」
「話すようになれば、他の令嬢方を牽制できるわ!」
「け……牽制?」
不穏な言葉に思わず聞き返す。
「そうよ、何を今更!皆、自分の婚約者に他の令嬢が近付かないよう牽制しているのよ!アラン様は人気なんだからあなたももう少し頑張らないと……そうね……明日はアラン様の色のアクセサリーをつけていくっていうのはどうかしら?」
エイミー様は少し考えると思いついたように提案をした。
「良いわね!キャリー、あなたお兄様からアクセサリーは贈ってもらっているのかしら?」
セレーナ様が同意して私に聞いてくる。
「いいえ、アラン様から贈り物など頂いたことは……」
「まあなんて事!!それは本当なの?!」
「え?ええ……。」
セレーナ様の勢いに思わずたじろぎながらも返事をする。
「アクセサリーどころか贈り物をしない婚約者だなんて……!婚約が決まった時も?誕生日も?」
「婚約が決まった時も、私の誕生日も、まだ王都に来ていなかったから……」
「関係ないわ!手紙と一緒に送ることはできるのだから!!」
「でもカードはいただいているのよ?」
「カードだけじゃダメよ!!」
キッパリと言い放たれてポカンとしてしまった。
そういうものなの……?
ハァァとセレーナ様が長いため息をついた。
「……今度お兄様に言っておくわ……」
「アラン様は確かにそういうことに疎そうだものねえ。」
エイミー様も少し呆れ気味だ。
そ……そうだったのね!
「アラン様の色のアクセサリーなんかが贈られていたらそれを付けていけば、牽制にもなるかと思ったのだけれど……」
エイミー様が私を見ながらがっかりしたように言う。
なんだか居た堪れない……申し訳ないわ……
「ベス?黙り込んじゃってどうしたの?」
セレーナ様がふと気付いたようにベス様に水を向けた。
言われてベス様が急に黙り込んだことに気が付いた。
「え?いいえ、少し考え事を……」
「こんな話の途中に何を考えるというの?」
訝しげにセレーナ様が問う。
思わず私までメグ様を見つめてしまう……
と、そこでエイミー様が声を上げた。
「あら!ベス、あなたの髪飾りブルーサファイアかしら?ちょうど良いじゃない!キャリーに貸してあげなさいよ!アラン様の瞳の色だわ!」
宝石を借りる?!
そんな高価なものを?
思わず口を開こうとした時だった。
「ダメよ!!」
ベス様が大声を上げた。
突然の大声に開きかけた口を閉じてしまった。
「ちょ、ちょっと……どうしたのよ。声が大きいわ!」
エイミー様がバツが悪そうに言う。
「ご……ごめんなさい……!でも……でも……!!」
ベス様はブルーサファイアの髪飾りを手のひらで隠すように抑える。
一体どうしたと言うの……
ちらりとセレーナ様の方を伺うとセレーナ様も驚いている。
「ごめんなさい!」
それだけ言うとガタンと椅子を鳴らしてベス様はガゼボを出て行ってしまった。
私は訳が分からずベス様の後ろ姿とセレーナ様とを交互に見る。
すると急に納得顔になったセレーナ様が「ああ……そういう事ね…………」とボソリと呟くと、エイミー様がハッとした顔をセレーナ様に向けた。
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