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思い上がり
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「疲れている顔をしているわ。無理して会わなくていいのよ。」
ステラおば様はそう言った。
これからエイレン侯爵邸に、モリス侯爵様と共にアラン様とセレーナ様がやって来るらしい。
謝罪がしたいと。
『侯爵夫人に相応しくない。』
それは婚約が決まってからずっと私も思っていた事だった。
本人ですらそう思っていたのだ。
アラン様がそう思っていても仕方がない。
パーティーで婚約破棄を伝えられるとは思わなかったけれども……
でも確かに私にも至らないところがあった。
侯爵夫人に相応しくない事も、想い合っているメグ様の事も、全部見て見ぬ振りをしていたのだから。
モリス侯爵家からの一方的な謝罪は違うとも思った。
「そうは言っても、聞きたくもない話を聞かせる事になる。もちろん婚約は破棄されるが、あちらの有責をはっきりさせ条件をまとめる事になる。私達に任せていればいいんだ。わざわざ傷つかなくてもいい。」
ロバートおじ様もそう言ってくれた。
でもこれは自分自身の事なのだ。
しっかり見届けてからハーフナー領に帰りたい。
自分の口から家族にすべて説明できるくらいには知っておきたいのだ。
聞きたくない話を聞くなど今更で、昨日の婚約破棄以上のショックはない。
その時の私はそう思っていた。
それすらも私の思い上がりで、自惚れ甚だしいのだとも気付かずに。
「モリス侯爵様が来られました。」
「通してくれ。」
おじ様の執事が報告すればおじ様が返事した。
暫くするとノックと共に扉が開く。
背中にピリっと緊張が走る。
出迎えに立ち上がると、モリス侯爵に続いてアラン様とセレーナ様も入って来た。
「ようこそおいで下さいました。どうぞお掛けください。」
にこやかにおじ様が言った。
「……どうぞ?アラン様も。」
訝しげな声でおじ様が言う。
気不味さで見る事が出来なかったけれど、その言葉でつられるようにアラン様の方に顔を向けた。
モリス侯爵様も振り向き怪訝そうにアラン様を見る。
アラン様は呆然と立ち尽くし、真っ直ぐに私を見て目を丸くしていた。
一体どうしたのだろうか……
「リーネ?こんなところに何故?」
「え……」
アラン様の言葉に思わず声が出た。
私が居ると思わなかった?
それにしても……少し様子が変だ。
すると隣のステラおば様が鼻で笑うのが聞こえた。
「やっぱりね。そうじゃないかと思ったのよ。」
思わずおば様を見たが、おば様は真っ直ぐアラン様を見ており目を逸らす事はない。
「あなた、ここに居るリーネと、ブロンドで朝の訪問を続けていたリーネ。別人だと思っているのではなくて?」
え?!
瞠目してアラン様を見れば、モリス侯爵もセレーナ様も驚いたようにアラン様に視線を向けた。
アラン様はこぼれそうなくらい目を見開いておば様を見ていた。
わななく唇は何を言おうとしているのか。
でも言葉が発せられる事はない。
アラン様の様子におば様が言った事は正しいのだとわかる。
皆が絶句している中、おば様は私の肩を抱いて続けた。
「彼女こそがハーフナー伯爵令嬢キャロラインよ。ブロンドでド派手メイクのあの姿はあなたが望んだと聞いているのだけれど、違うのかしら?」
「何故俺が!」
思わず言ってしまったかのように否定の声を上げる。
私はどうしようもなく立ちすくんでいた。
まさか……考えた事もなかった。
素顔の私はもちろん知ってくれているのだろうと。
それすらも思い上がりだったのだと誰が思うだろうか。
ひとつ疑問に思えば次から次から湧いてくる。
悪役令嬢はアラン様が望んだものじゃない?
ではあの手紙は?
一体私はアラン様の瞳にどう映っていたの?
まるで足元がガラガラと崩れていくような感覚に陥る。
独りよがりの自分に恥ずかしさで顔から火が出そうになり、真っ赤になった顔を俯いて隠すのが今出来る精一杯だった。
ステラおば様はそう言った。
これからエイレン侯爵邸に、モリス侯爵様と共にアラン様とセレーナ様がやって来るらしい。
謝罪がしたいと。
『侯爵夫人に相応しくない。』
それは婚約が決まってからずっと私も思っていた事だった。
本人ですらそう思っていたのだ。
アラン様がそう思っていても仕方がない。
パーティーで婚約破棄を伝えられるとは思わなかったけれども……
でも確かに私にも至らないところがあった。
侯爵夫人に相応しくない事も、想い合っているメグ様の事も、全部見て見ぬ振りをしていたのだから。
モリス侯爵家からの一方的な謝罪は違うとも思った。
「そうは言っても、聞きたくもない話を聞かせる事になる。もちろん婚約は破棄されるが、あちらの有責をはっきりさせ条件をまとめる事になる。私達に任せていればいいんだ。わざわざ傷つかなくてもいい。」
ロバートおじ様もそう言ってくれた。
でもこれは自分自身の事なのだ。
しっかり見届けてからハーフナー領に帰りたい。
自分の口から家族にすべて説明できるくらいには知っておきたいのだ。
聞きたくない話を聞くなど今更で、昨日の婚約破棄以上のショックはない。
その時の私はそう思っていた。
それすらも私の思い上がりで、自惚れ甚だしいのだとも気付かずに。
「モリス侯爵様が来られました。」
「通してくれ。」
おじ様の執事が報告すればおじ様が返事した。
暫くするとノックと共に扉が開く。
背中にピリっと緊張が走る。
出迎えに立ち上がると、モリス侯爵に続いてアラン様とセレーナ様も入って来た。
「ようこそおいで下さいました。どうぞお掛けください。」
にこやかにおじ様が言った。
「……どうぞ?アラン様も。」
訝しげな声でおじ様が言う。
気不味さで見る事が出来なかったけれど、その言葉でつられるようにアラン様の方に顔を向けた。
モリス侯爵様も振り向き怪訝そうにアラン様を見る。
アラン様は呆然と立ち尽くし、真っ直ぐに私を見て目を丸くしていた。
一体どうしたのだろうか……
「リーネ?こんなところに何故?」
「え……」
アラン様の言葉に思わず声が出た。
私が居ると思わなかった?
それにしても……少し様子が変だ。
すると隣のステラおば様が鼻で笑うのが聞こえた。
「やっぱりね。そうじゃないかと思ったのよ。」
思わずおば様を見たが、おば様は真っ直ぐアラン様を見ており目を逸らす事はない。
「あなた、ここに居るリーネと、ブロンドで朝の訪問を続けていたリーネ。別人だと思っているのではなくて?」
え?!
瞠目してアラン様を見れば、モリス侯爵もセレーナ様も驚いたようにアラン様に視線を向けた。
アラン様はこぼれそうなくらい目を見開いておば様を見ていた。
わななく唇は何を言おうとしているのか。
でも言葉が発せられる事はない。
アラン様の様子におば様が言った事は正しいのだとわかる。
皆が絶句している中、おば様は私の肩を抱いて続けた。
「彼女こそがハーフナー伯爵令嬢キャロラインよ。ブロンドでド派手メイクのあの姿はあなたが望んだと聞いているのだけれど、違うのかしら?」
「何故俺が!」
思わず言ってしまったかのように否定の声を上げる。
私はどうしようもなく立ちすくんでいた。
まさか……考えた事もなかった。
素顔の私はもちろん知ってくれているのだろうと。
それすらも思い上がりだったのだと誰が思うだろうか。
ひとつ疑問に思えば次から次から湧いてくる。
悪役令嬢はアラン様が望んだものじゃない?
ではあの手紙は?
一体私はアラン様の瞳にどう映っていたの?
まるで足元がガラガラと崩れていくような感覚に陥る。
独りよがりの自分に恥ずかしさで顔から火が出そうになり、真っ赤になった顔を俯いて隠すのが今出来る精一杯だった。
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