31 / 54
断罪後のアランとセレーナ
しおりを挟む
ーセレーナー
「許可するわけないだろう!こんな悪趣味な催しなど!」
ニコラス様がお兄様を怒鳴りつけた。
バッとお兄様がこちらを見る。
私の肩がビクリと跳ね上がった。
男性の怒鳴り合う声に恐怖で立っていられないほど足が震える。
後ろでメグとエイミーがへたり込んだ。
どうして?
そんな大袈裟な話じゃないでしょう?
確かに催しとして申請したら却下された。
それでも大丈夫だと思った。
いつだって田舎貴族は嘲笑の的。
キャリーをみんなの前で断罪すれば大盛り上がりだと思っていた。
生徒会のニコラス様もきっと大笑いするんだと。
そうなればニコラス様はお兄様のお友達。
無許可でも見逃してもらえるものだと思っていた。
実際は会場は静まり返り、拍手もまばら。
なぜなの?
罪を挙げ連ねる事が出来なかったから?
だってそれはキャリーが泣きもせず、あっさり退場してしまうから計画が狂ってしまった。
それでも、みっともなく会場を後にしたキャリーの姿は道化そのものだったというのに。
私達は強引に会場の外に出されたかと思うと、ニコラス様はお兄様に掴み掛かった。
「ハーフナー伯爵令嬢は何も知らなかったのではないのか!」
当然だわ。
あらかじめ言っておいたら面白くもなんともないじゃないの。
どうしてそんなに怒っているの?
中央貴族は田舎貴族をいつも馬鹿にしているでしょう?
笑い物にしているじゃない。
計画はずっと思い通りに進んでいたのにどうして?
ここに来てニコラス様の態度は予想外だった。
皆自分に賛同してくれるものだと思っていた。
どうやってキャリーを追い詰めたか、それを話せば皆手を叩いて面白がってくれるものだと思っていた。
どうしてよ……
震える足は耐えられなくなり、とうとう私はその場に崩れ落ちた。
ーアランー
「仰せのままに」
そう丁寧にカーテシーをすると、ハーフナー伯爵令嬢はあっさりと背を向けた。
拍子抜けしていると、強引にニコラスが入ってきた。
確かに悪役令嬢が退場した今、断罪すべき相手はいない。
俺達も退場すべきなのだろう。
だが俺を連れて行くニコラスは腹立たし気だ。
会場を出た途端ニコラスは俺の胸倉を掴み壁に押し付け怒鳴り出す。
理不尽に思った俺は頭に血が上り彼を怒鳴り返した。
しかし俺以上の大声で言い返された言葉に愕然とする。
「許可なんかだすわけないだろう!こんな悪趣味な催しなど!」
沸騰していた頭がみるみる冷えていく。
許可が出ていない?
「ハーフナー伯爵令嬢は何も知らなかったのではないのか!」
ぐっと黙り込んだ俺を見るニコラスの目は軽蔑。
「どうする気だ、アラン。」
静かに問いかけてくるニコラスの視線が次第に憐れみに変わっていく。
「本当に残念だよ……」
最後に失望の言葉を投げかけニコラスは去って行った。
どの位立ち尽くしていたか。
今俺にわかるのは、断罪劇は失敗したという事だ。
俺は腰の抜けたセレーナと令嬢達を落ち着かせて馬車に乗せ、それぞれの家へ送り届けた。
最後にモリス侯爵邸に帰ってくれば、待ち構えていたかの様に父上から呼び出された。
「許可するわけないだろう!こんな悪趣味な催しなど!」
ニコラス様がお兄様を怒鳴りつけた。
バッとお兄様がこちらを見る。
私の肩がビクリと跳ね上がった。
男性の怒鳴り合う声に恐怖で立っていられないほど足が震える。
後ろでメグとエイミーがへたり込んだ。
どうして?
そんな大袈裟な話じゃないでしょう?
確かに催しとして申請したら却下された。
それでも大丈夫だと思った。
いつだって田舎貴族は嘲笑の的。
キャリーをみんなの前で断罪すれば大盛り上がりだと思っていた。
生徒会のニコラス様もきっと大笑いするんだと。
そうなればニコラス様はお兄様のお友達。
無許可でも見逃してもらえるものだと思っていた。
実際は会場は静まり返り、拍手もまばら。
なぜなの?
罪を挙げ連ねる事が出来なかったから?
だってそれはキャリーが泣きもせず、あっさり退場してしまうから計画が狂ってしまった。
それでも、みっともなく会場を後にしたキャリーの姿は道化そのものだったというのに。
私達は強引に会場の外に出されたかと思うと、ニコラス様はお兄様に掴み掛かった。
「ハーフナー伯爵令嬢は何も知らなかったのではないのか!」
当然だわ。
あらかじめ言っておいたら面白くもなんともないじゃないの。
どうしてそんなに怒っているの?
中央貴族は田舎貴族をいつも馬鹿にしているでしょう?
笑い物にしているじゃない。
計画はずっと思い通りに進んでいたのにどうして?
ここに来てニコラス様の態度は予想外だった。
皆自分に賛同してくれるものだと思っていた。
どうやってキャリーを追い詰めたか、それを話せば皆手を叩いて面白がってくれるものだと思っていた。
どうしてよ……
震える足は耐えられなくなり、とうとう私はその場に崩れ落ちた。
ーアランー
「仰せのままに」
そう丁寧にカーテシーをすると、ハーフナー伯爵令嬢はあっさりと背を向けた。
拍子抜けしていると、強引にニコラスが入ってきた。
確かに悪役令嬢が退場した今、断罪すべき相手はいない。
俺達も退場すべきなのだろう。
だが俺を連れて行くニコラスは腹立たし気だ。
会場を出た途端ニコラスは俺の胸倉を掴み壁に押し付け怒鳴り出す。
理不尽に思った俺は頭に血が上り彼を怒鳴り返した。
しかし俺以上の大声で言い返された言葉に愕然とする。
「許可なんかだすわけないだろう!こんな悪趣味な催しなど!」
沸騰していた頭がみるみる冷えていく。
許可が出ていない?
「ハーフナー伯爵令嬢は何も知らなかったのではないのか!」
ぐっと黙り込んだ俺を見るニコラスの目は軽蔑。
「どうする気だ、アラン。」
静かに問いかけてくるニコラスの視線が次第に憐れみに変わっていく。
「本当に残念だよ……」
最後に失望の言葉を投げかけニコラスは去って行った。
どの位立ち尽くしていたか。
今俺にわかるのは、断罪劇は失敗したという事だ。
俺は腰の抜けたセレーナと令嬢達を落ち着かせて馬車に乗せ、それぞれの家へ送り届けた。
最後にモリス侯爵邸に帰ってくれば、待ち構えていたかの様に父上から呼び出された。
1,739
あなたにおすすめの小説
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
貴方が私を嫌う理由
柴田はつみ
恋愛
リリー――本名リリアーヌは、夫であるカイル侯爵から公然と冷遇されていた。
その関係はすでに修復不能なほどに歪み、夫婦としての実態は完全に失われている。
カイルは、彼女の類まれな美貌と、完璧すぎる立ち居振る舞いを「傲慢さの表れ」と決めつけ、意図的に距離を取った。リリーが何を語ろうとも、その声が届くことはない。
――けれど、リリーの心が向いているのは、夫ではなかった。
幼馴染であり、次期公爵であるクリス。
二人は人目を忍び、密やかな逢瀬を重ねてきた。その愛情に、疑いの余地はなかった。少なくとも、リリーはそう信じていた。
長年にわたり、リリーはカイル侯爵家が抱える深刻な財政難を、誰にも気づかれぬよう支え続けていた。
実家の財力を水面下で用い、侯爵家の体裁と存続を守る――それはすべて、未来のクリスを守るためだった。
もし自分が、破綻した結婚を理由に離縁や醜聞を残せば。
クリスが公爵位を継ぐその時、彼の足を引く「過去」になってしまう。
だからリリーは、耐えた。
未亡人という立場に甘んじる未来すら覚悟しながら、沈黙を選んだ。
しかし、その献身は――最も愛する相手に、歪んだ形で届いてしまう。
クリスは、彼女の行動を別の意味で受け取っていた。
リリーが社交の場でカイルと並び、毅然とした態度を崩さぬ姿を見て、彼は思ってしまったのだ。
――それは、形式的な夫婦関係を「完璧に保つ」ための努力。
――愛する夫を守るための、健気な妻の姿なのだと。
真実を知らぬまま、クリスの胸に芽生えたのは、理解ではなく――諦めだった。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
その結婚は、白紙にしましょう
香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。
彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。
念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。
浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」
身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。
けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。
「分かりました。その提案を、受け入れ──」
全然受け入れられませんけど!?
形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。
武骨で不器用な王国騎士団長。
二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。
婚約者を借りパクされました
朝山みどり
恋愛
「今晩の夜会はマイケルにクリスティーンのエスコートを頼んだから、レイは一人で行ってね」とお母様がわたしに言った。
わたしは、レイチャル・ブラウン。ブラウン伯爵の次女。わたしの家族は父のウィリアム。母のマーガレット。
兄、ギルバード。姉、クリスティーン。弟、バージルの六人家族。
わたしは家族のなかで一番影が薄い。我慢するのはわたし。わたしが我慢すればうまくいく。だけど家族はわたしが我慢していることも気付かない。そんな存在だ。
家族も婚約者も大事にするのはクリスティーン。わたしの一つ上の姉だ。
そのうえ、わたしは、さえない留学生のお世話を押し付けられてしまった。
裏切られ殺されたわたし。生まれ変わったわたしは今度こそ幸せになりたい。
たろ
恋愛
大好きな貴方はわたしを裏切り、そして殺されました。
次の人生では幸せになりたい。
前世を思い出したわたしには嫌悪しかない。もう貴方の愛はいらないから!!
自分が王妃だったこと。どんなに国王を愛していたか思い出すと胸が苦しくなる。でももう前世のことは忘れる。
そして元彼のことも。
現代と夢の中の前世の話が進行していきます。
とある伯爵の憂鬱
如月圭
恋愛
マリアはスチュワート伯爵家の一人娘で、今年、十八才の王立高等学校三年生である。マリアの婚約者は、近衛騎士団の副団長のジル=コーナー伯爵で金髪碧眼の美丈夫で二十五才の大人だった。そんなジルは、国王の第二王女のアイリーン王女殿下に気に入られて、王女の護衛騎士の任務をしてた。そのせいで、婚約者のマリアにそのしわ寄せが来て……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる