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アランの罰
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婚約が破棄されたあの日から一年以上経とうとしていた。
俺は高等部三年となっていた。
あの話し合いの後は父上によりひとりひとり罰が下された。
ウォルターは伯爵令息だったが籍を抜かれ罪人として鉱山で無期の強制労働の罰が与えられた。
封蝋印まで使い手紙を偽造した事は重罪のお家乗っ取り未遂とされた。
犯罪者を出した伯爵家は王家に爵位も領地も財産も返還した後、王都を追放。
未遂でなければ一家処刑だった。
エイレン侯爵家での話し合いの途中で父上がウォルターを拘束したのは正解で、不穏な空気を察したウォルターは荷物をまとめて逃げようとしていたところを取り押さえられたらしい。
話し合いが終わった後では手遅れだったろう。
セレーナは修道院に入った。
次期侯爵と話した後のセレーナは人が変わったように反省しており、自分から戒律の厳しい修道院を希望した。
重犯罪を唆したのだから処罰としては軽いと思うが、セレーナは希望を口にしただけで何もしておらず、ウォルターがすべて段取りしていた事から、セレーナは関わっていない事になった。
セレーナの取り巻きの男爵令嬢と子爵令嬢も別々の厳しい修道院に入る事になり、モリス侯爵家の婚約に横槍を入れたとしてそれぞれの家にも制裁が入った。
今はどちらの家も瀕死の状態だ。
そして俺は。
あんなことを仕出かした俺に父上は今まで通り学園に通い続ける事を罰とした。
そうして卒業までに名誉を回復できなければ廃嫡だと言われていた。
夏の長期休暇が終わり学園に通えば、針の筵だった。
いっそ侯爵領に蟄居だとかセレーナのように修道院に入れてくれればと思った。
学園では腫れ物のように皆に遠巻きにされる。
令嬢たちは目が合えばいつも何やらヒソヒソと話し出した。
そうしてそんな状況でも話しかけてくるのは、なんとか高位貴族と縁を繋ごうとしている下位貴族と、あまり評判の良くない令息達だった。
一番タチが悪いのが、評判の悪い令息達だ。
甘い言葉で悪い遊びに巧みに誘われる。
正直乗ってしまいたいと何度も思った。
刹那的だといわれようと、今この辛い状況から一瞬でも目がそらせる事ができるのならいっそ悪い遊びに手を染めるのもいいと思ったのだ。
そこで思い止まれたのはリーネのおかげだ。
もう二度と近付く事は許されていない。
だからといって彼女に胸を張れない自分にはなりたくなかった。
ただただ目の前にある課題をこなし努力と結果を積み上げていく。
次第にタチの悪い連中は話しかけてこなくなった。
代わりに声がかかったのは、かつて集まりで舌戦を繰り広げていた令息達だった。
また勉強会に参加する事になり、チームで取り組んだ課題は新聞に取り上げられるほどとなった。
「父上。ハーフナー伯爵家に謝罪に行くことは許されませんか。」
そう言えば執務机から顔を上げ俺を見ると、父上は苦い顔をした。
「わかっています。調子のいい話だと。しかしながら俺はハーフナー領と共同で行う川の治水や橋の建設にも関わりたいと思っています。その上できちんとした謝罪をしておきたいのです。」
「謝罪など。ハーフナー伯爵令嬢にいたっては二度と近付く事はならぬのをもう忘れたのか?」
「いいえ、忘れていません。今更なのもわかっています。ですがけじめがつかないのも確かです。筋は通したいのです。もちろん罵倒される覚悟はしています。」
父上は何か言いたい様な顔をしたが、開きかけた口からは大きなため息が漏れた。
「よかろう。そこまで言うならまずエイレン次期侯爵に伺いをたてよう。しかし、だ。断られたら諦めることだ。」
「ええ、もちろんです!」
トウプチ先生が激昂した姿は記憶に新しい。
しかし学園での俺の姿は彼女はよく知っているだろう。
孤立している姿は先生の溜飲を下げたのではないか。
折れず成果を上げる姿を見てくれていたらもしかしたら……
少しの期待を持って父上からの返事を待つ。
そうしてエイレン次期侯爵夫妻に会ってもらえる事になったと言われ、喜んだ。
「覚悟して行くがいい。」
父上から念を押される。
もちろんわかっている。
許してもらえるなんて思っていない。
リーネに対する贖罪の気持ちを表したいだけだ。
本気でそう思っていた。
ただただ甘い考えだとも気付かずに。
会ってもらえさえすれば半分成功だと思っていた愚かな俺はおおいに頭を打つ事になる。
俺は高等部三年となっていた。
あの話し合いの後は父上によりひとりひとり罰が下された。
ウォルターは伯爵令息だったが籍を抜かれ罪人として鉱山で無期の強制労働の罰が与えられた。
封蝋印まで使い手紙を偽造した事は重罪のお家乗っ取り未遂とされた。
犯罪者を出した伯爵家は王家に爵位も領地も財産も返還した後、王都を追放。
未遂でなければ一家処刑だった。
エイレン侯爵家での話し合いの途中で父上がウォルターを拘束したのは正解で、不穏な空気を察したウォルターは荷物をまとめて逃げようとしていたところを取り押さえられたらしい。
話し合いが終わった後では手遅れだったろう。
セレーナは修道院に入った。
次期侯爵と話した後のセレーナは人が変わったように反省しており、自分から戒律の厳しい修道院を希望した。
重犯罪を唆したのだから処罰としては軽いと思うが、セレーナは希望を口にしただけで何もしておらず、ウォルターがすべて段取りしていた事から、セレーナは関わっていない事になった。
セレーナの取り巻きの男爵令嬢と子爵令嬢も別々の厳しい修道院に入る事になり、モリス侯爵家の婚約に横槍を入れたとしてそれぞれの家にも制裁が入った。
今はどちらの家も瀕死の状態だ。
そして俺は。
あんなことを仕出かした俺に父上は今まで通り学園に通い続ける事を罰とした。
そうして卒業までに名誉を回復できなければ廃嫡だと言われていた。
夏の長期休暇が終わり学園に通えば、針の筵だった。
いっそ侯爵領に蟄居だとかセレーナのように修道院に入れてくれればと思った。
学園では腫れ物のように皆に遠巻きにされる。
令嬢たちは目が合えばいつも何やらヒソヒソと話し出した。
そうしてそんな状況でも話しかけてくるのは、なんとか高位貴族と縁を繋ごうとしている下位貴族と、あまり評判の良くない令息達だった。
一番タチが悪いのが、評判の悪い令息達だ。
甘い言葉で悪い遊びに巧みに誘われる。
正直乗ってしまいたいと何度も思った。
刹那的だといわれようと、今この辛い状況から一瞬でも目がそらせる事ができるのならいっそ悪い遊びに手を染めるのもいいと思ったのだ。
そこで思い止まれたのはリーネのおかげだ。
もう二度と近付く事は許されていない。
だからといって彼女に胸を張れない自分にはなりたくなかった。
ただただ目の前にある課題をこなし努力と結果を積み上げていく。
次第にタチの悪い連中は話しかけてこなくなった。
代わりに声がかかったのは、かつて集まりで舌戦を繰り広げていた令息達だった。
また勉強会に参加する事になり、チームで取り組んだ課題は新聞に取り上げられるほどとなった。
「父上。ハーフナー伯爵家に謝罪に行くことは許されませんか。」
そう言えば執務机から顔を上げ俺を見ると、父上は苦い顔をした。
「わかっています。調子のいい話だと。しかしながら俺はハーフナー領と共同で行う川の治水や橋の建設にも関わりたいと思っています。その上できちんとした謝罪をしておきたいのです。」
「謝罪など。ハーフナー伯爵令嬢にいたっては二度と近付く事はならぬのをもう忘れたのか?」
「いいえ、忘れていません。今更なのもわかっています。ですがけじめがつかないのも確かです。筋は通したいのです。もちろん罵倒される覚悟はしています。」
父上は何か言いたい様な顔をしたが、開きかけた口からは大きなため息が漏れた。
「よかろう。そこまで言うならまずエイレン次期侯爵に伺いをたてよう。しかし、だ。断られたら諦めることだ。」
「ええ、もちろんです!」
トウプチ先生が激昂した姿は記憶に新しい。
しかし学園での俺の姿は彼女はよく知っているだろう。
孤立している姿は先生の溜飲を下げたのではないか。
折れず成果を上げる姿を見てくれていたらもしかしたら……
少しの期待を持って父上からの返事を待つ。
そうしてエイレン次期侯爵夫妻に会ってもらえる事になったと言われ、喜んだ。
「覚悟して行くがいい。」
父上から念を押される。
もちろんわかっている。
許してもらえるなんて思っていない。
リーネに対する贖罪の気持ちを表したいだけだ。
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