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アランとエイレン次期侯爵夫妻
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「まあまあ、とりあえず座ってくれたまえよ。」
部屋に通され座ることを促される前に謝罪を口にすれば軽くこう返された。
ロバート=エイレン次期侯爵。
リーネの叔父に当たる。
ニコニコと人当たりのいい笑顔を浮かべているが、心中は読めない。
彼はハーフナー伯爵家の一員でありながら研究にはあまり興味がない。
ただ、ハーフナー子爵家が伯爵に陞爵した立役者は間違いなく彼だ。
彼がいなければ、ハーフナー領の王家御用達はなかっただろう。
そのくらい彼は営業力に長けており、策略家だ。
人の良いハーフナー伯爵に代わりハーフナー領の権利を取りまとめている。
そんな彼が今回の訪問を許してくれたその真意はわからない。
しかし何か裏があっても構わない。
心からの謝罪をハーフナー家にしたいと思っている事を知ってもらえる機会が設けられた。それだけでもいい。
その隣にはトウプチ先生。
扇子で口元を隠しているので表情はわからないが決して穏やかではない表情なのは想像に容易い。
「君の学園での評判は妻から聞いているよ。順調に名誉を回復している様じゃないか。新聞も見たよ。若き彗星たちだっけ?だからかな?急に直接謝罪したいだなんて。」
親しみのある話し方で問いかけられる。
「こんな私に謝罪に行くことすら許されないと思っていました。ですが恥ずかしくない自分になったら、必ず謝罪に行こうと、心に決めておりました。」
「ところで、君の妹のモリス侯爵令嬢は戒律の厳しい修道院に入ったんだってね。元気でやっているの?」
「はい。妹も彼女なりに心から反省し、日々努めている様です。」
「ああ、自分からすすんで戒律の厳しいところに行ったんだってね。君のお父上から聞いたよ。」
そう言うと次期侯爵は紅茶を一口飲み、続ける。
「君のことも聞いているよ。学園に今まで通り通わせる事で自分のやったことと向き合わせるってね。確かに当時の君の評判はガタ落ちだったものねえ。」
カラカラと笑う。
(話しにくい)
罵倒されるのか。それともきつく説教をされるのか。
そんな事を思っていた俺は次期侯爵の態度は正直拍子抜けだった。
それどころか飄々とした話し方にペースを乱される。
「ここまで評判を回復するまでに色々あっただろうね。人が離れて行ったり、そうかと思えばここぞとばかり話しかけてくる連中がいたり。だろう?」
「確かにその通りです。仲の良かった人達の信用をすっかり失い周りから人がいなくなりました。悪い遊びを誘ってくる者もいました。ですがもう会うことが許されていないとはいえ、ハーフナー伯爵令嬢に顔向けできない事はしないと、常に誠実であろうと心がけていました。」
「自分とリーネの名誉の回復をお父上に言われてるのだったね。」
「それができなければ廃嫡と言われています。もちろんハーフナー伯爵令嬢の名誉回復にも努めています。」
パチパチパチパチ
突如湧き上がった拍手にハッとする。
見ると手を叩いているのはトウプチ先生だった。
目が合うと「素晴らしいわ!」と声をあげた。
その言葉をそのまま受け取るほど愚かではない。
意図が読めず黙っているとトウプチ先生が話し出す。
「パーティーの時といい、今といい……」
そこまで言うと言葉を切る。
そしてため息混じりにまた口を開いた。
「あなた本当に茶番が好きなのねえ。」
トウプチ先生は冷ややかに俺を見つめていた。
「ええ、ええ、学園での評判は聞いてますわ。上々のようで。順調に名誉回復されてこのまま行けば廃嫡は免れそうで何よりですわね。」
何と返していいのかわからず固まったままの俺を気にする様子もなく、トウプチ先生は続ける。
「美しいモリス侯爵令嬢は自らの罪を悔い、すすんで戒律の厳しい修道院に入り、兄のあなたは日々どんな中傷にも折れずに学園でたゆまぬ努力をし続け、勉学に励み結果を出し、自分の力で名誉を回復した。美談のように語られる2人の評判はもちろん私の耳にも届いてますわ。素晴らしいですこと。きっとモリス侯爵も鼻が高いでしょう!ピンチをチャンスに変えたとは本当このことね。」
「そのような……」
「リーネを踏み台にした見事なステップアップ、おめでとう。」
自分の息を呑む音が聞こえた。
部屋に通され座ることを促される前に謝罪を口にすれば軽くこう返された。
ロバート=エイレン次期侯爵。
リーネの叔父に当たる。
ニコニコと人当たりのいい笑顔を浮かべているが、心中は読めない。
彼はハーフナー伯爵家の一員でありながら研究にはあまり興味がない。
ただ、ハーフナー子爵家が伯爵に陞爵した立役者は間違いなく彼だ。
彼がいなければ、ハーフナー領の王家御用達はなかっただろう。
そのくらい彼は営業力に長けており、策略家だ。
人の良いハーフナー伯爵に代わりハーフナー領の権利を取りまとめている。
そんな彼が今回の訪問を許してくれたその真意はわからない。
しかし何か裏があっても構わない。
心からの謝罪をハーフナー家にしたいと思っている事を知ってもらえる機会が設けられた。それだけでもいい。
その隣にはトウプチ先生。
扇子で口元を隠しているので表情はわからないが決して穏やかではない表情なのは想像に容易い。
「君の学園での評判は妻から聞いているよ。順調に名誉を回復している様じゃないか。新聞も見たよ。若き彗星たちだっけ?だからかな?急に直接謝罪したいだなんて。」
親しみのある話し方で問いかけられる。
「こんな私に謝罪に行くことすら許されないと思っていました。ですが恥ずかしくない自分になったら、必ず謝罪に行こうと、心に決めておりました。」
「ところで、君の妹のモリス侯爵令嬢は戒律の厳しい修道院に入ったんだってね。元気でやっているの?」
「はい。妹も彼女なりに心から反省し、日々努めている様です。」
「ああ、自分からすすんで戒律の厳しいところに行ったんだってね。君のお父上から聞いたよ。」
そう言うと次期侯爵は紅茶を一口飲み、続ける。
「君のことも聞いているよ。学園に今まで通り通わせる事で自分のやったことと向き合わせるってね。確かに当時の君の評判はガタ落ちだったものねえ。」
カラカラと笑う。
(話しにくい)
罵倒されるのか。それともきつく説教をされるのか。
そんな事を思っていた俺は次期侯爵の態度は正直拍子抜けだった。
それどころか飄々とした話し方にペースを乱される。
「ここまで評判を回復するまでに色々あっただろうね。人が離れて行ったり、そうかと思えばここぞとばかり話しかけてくる連中がいたり。だろう?」
「確かにその通りです。仲の良かった人達の信用をすっかり失い周りから人がいなくなりました。悪い遊びを誘ってくる者もいました。ですがもう会うことが許されていないとはいえ、ハーフナー伯爵令嬢に顔向けできない事はしないと、常に誠実であろうと心がけていました。」
「自分とリーネの名誉の回復をお父上に言われてるのだったね。」
「それができなければ廃嫡と言われています。もちろんハーフナー伯爵令嬢の名誉回復にも努めています。」
パチパチパチパチ
突如湧き上がった拍手にハッとする。
見ると手を叩いているのはトウプチ先生だった。
目が合うと「素晴らしいわ!」と声をあげた。
その言葉をそのまま受け取るほど愚かではない。
意図が読めず黙っているとトウプチ先生が話し出す。
「パーティーの時といい、今といい……」
そこまで言うと言葉を切る。
そしてため息混じりにまた口を開いた。
「あなた本当に茶番が好きなのねえ。」
トウプチ先生は冷ややかに俺を見つめていた。
「ええ、ええ、学園での評判は聞いてますわ。上々のようで。順調に名誉回復されてこのまま行けば廃嫡は免れそうで何よりですわね。」
何と返していいのかわからず固まったままの俺を気にする様子もなく、トウプチ先生は続ける。
「美しいモリス侯爵令嬢は自らの罪を悔い、すすんで戒律の厳しい修道院に入り、兄のあなたは日々どんな中傷にも折れずに学園でたゆまぬ努力をし続け、勉学に励み結果を出し、自分の力で名誉を回復した。美談のように語られる2人の評判はもちろん私の耳にも届いてますわ。素晴らしいですこと。きっとモリス侯爵も鼻が高いでしょう!ピンチをチャンスに変えたとは本当このことね。」
「そのような……」
「リーネを踏み台にした見事なステップアップ、おめでとう。」
自分の息を呑む音が聞こえた。
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