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そしていなくなった ーアベルー
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3日はあっという間に過ぎ、怪我の経過も良好なブリジットは母上と王都のタウンハウスへと行く事になった。
この3日間私はブリジットを見舞うことができなかった。
母上に止められていたのもあるが、どう言う顔で見舞えばいいのかわからなかったのだ。
謝らねばならないと思うのだが一体なんて言えばいいのか。
そもそもどう考えても到底許してもらえるとも思えなかった。
私が王宮に仕事へ行っている間に母上は着々と全ての事を片付けていた。
カトリとマリーは、旦那であり父親であるホプス男爵が引き取りに来た。
事件化しない代わりに、横領したお金の返金と二度とこちらに関わらない事を約束した。
こちらに関わらないとは物理的に遠く離れて二度とスラビーズ周辺に立ち入らないと言うことだ。
しかしそんな約束はなくとももう王都には住めないだろう。
突然羽振りの良くなったカトリ母娘を訝しんでいる者も居たようだった。
そのタイミングでスラビーズ子爵家に解雇されたと聞けば、推して知るべしだろう。
噂はあっという間に広がるに違いない。
男爵は屋敷を売りこちらへの返済に充てるようだ。
ホプス男爵家は投資家で領地を持たない。
王都から遠く離れた地方の出身でそちらに戻ることにした様だった。
カトリは夫の実家は雪に年中囲まれている土地で結婚してから一度しか行っておらず、二度と行きたくないとよく話していた。
夫の実家に帰るだけで罰になるとは皮肉な話だ。
マリーの方は修道院に入ることになったらしい。
私は悪くない。騙された。と未だ支離滅裂な発言を繰り返しており手に負えないそうだ。
セドリックとアリス嬢のことは、母上がドリンコート侯爵家と色々話している様だが、詳しくは教えてもらえていない。
軽く息を吐いて立ち上がる。
そろそろ仕事に行く用意をせねばならない。
母上は私が仕事に行く前にこの屋敷を出ると言っていた。
もうすぐだろうか。
コンコン
そう思った時私の執務室のドアがノックされた。
「もう奥様とブリジット様が出られる様です。お見送りいたしますか。」
セバスだった。
三日間の空白が後ろめたい。
しかしけじめだ。
「今行く。」
返事をして上着を着ると玄関に向かった。
玄関に行くと母上とブリジットがいた。
「あら、お見送りありがとう。ではまた報告すべき事は報告するわね。じゃあ、とりあえず私達は帰るわ。お仕事頑張って。」
私の姿を見るなりあっさりと母上が言った。
ブリジットはそんな母上の横で少し驚いた顔をして私を見ていた。
(見送りなんてすると思わなかった、と言う顔だな。)
そういう男だと思われていても仕方がない。
しかしチクリと胸が痛んだ。
見送りに来たと言うのに目を逸らしてしまった。
そんな私を呆れた様に見た母上は「行きましょう、ビジイ。」とブリジットをうながした。
しばらく沈黙があった後だった。
「言いたい事があるなら言ってもいいのよ、ビジイ。」
優しく語りかける様な母上の声に私は視線を戻す。
ブリジットがこちらを見ていた。
視線が交わる。
と思った瞬間ブリジットがこちらに走り寄った。
(ぶたれる?)
いや、それもやぶさかではない。
すべて受け入れよう。
ドっと衝撃があった。
思わず目を瞑る。
「ごめんなさい。」
囁くような、風が吹いたら消えてしまいそうな、小さな声が耳元で聞こえた。
「え……」
目を開けるともう玄関に向かって小走りのブリジットの後ろ姿が見えた。
呆然と立ち尽くす私を母上はチラと見て嘆息すると、そのままブリジットの後を追う様に出ていった。
残ったのはブリジットの甘い香りと
後悔。
この3日間私はブリジットを見舞うことができなかった。
母上に止められていたのもあるが、どう言う顔で見舞えばいいのかわからなかったのだ。
謝らねばならないと思うのだが一体なんて言えばいいのか。
そもそもどう考えても到底許してもらえるとも思えなかった。
私が王宮に仕事へ行っている間に母上は着々と全ての事を片付けていた。
カトリとマリーは、旦那であり父親であるホプス男爵が引き取りに来た。
事件化しない代わりに、横領したお金の返金と二度とこちらに関わらない事を約束した。
こちらに関わらないとは物理的に遠く離れて二度とスラビーズ周辺に立ち入らないと言うことだ。
しかしそんな約束はなくとももう王都には住めないだろう。
突然羽振りの良くなったカトリ母娘を訝しんでいる者も居たようだった。
そのタイミングでスラビーズ子爵家に解雇されたと聞けば、推して知るべしだろう。
噂はあっという間に広がるに違いない。
男爵は屋敷を売りこちらへの返済に充てるようだ。
ホプス男爵家は投資家で領地を持たない。
王都から遠く離れた地方の出身でそちらに戻ることにした様だった。
カトリは夫の実家は雪に年中囲まれている土地で結婚してから一度しか行っておらず、二度と行きたくないとよく話していた。
夫の実家に帰るだけで罰になるとは皮肉な話だ。
マリーの方は修道院に入ることになったらしい。
私は悪くない。騙された。と未だ支離滅裂な発言を繰り返しており手に負えないそうだ。
セドリックとアリス嬢のことは、母上がドリンコート侯爵家と色々話している様だが、詳しくは教えてもらえていない。
軽く息を吐いて立ち上がる。
そろそろ仕事に行く用意をせねばならない。
母上は私が仕事に行く前にこの屋敷を出ると言っていた。
もうすぐだろうか。
コンコン
そう思った時私の執務室のドアがノックされた。
「もう奥様とブリジット様が出られる様です。お見送りいたしますか。」
セバスだった。
三日間の空白が後ろめたい。
しかしけじめだ。
「今行く。」
返事をして上着を着ると玄関に向かった。
玄関に行くと母上とブリジットがいた。
「あら、お見送りありがとう。ではまた報告すべき事は報告するわね。じゃあ、とりあえず私達は帰るわ。お仕事頑張って。」
私の姿を見るなりあっさりと母上が言った。
ブリジットはそんな母上の横で少し驚いた顔をして私を見ていた。
(見送りなんてすると思わなかった、と言う顔だな。)
そういう男だと思われていても仕方がない。
しかしチクリと胸が痛んだ。
見送りに来たと言うのに目を逸らしてしまった。
そんな私を呆れた様に見た母上は「行きましょう、ビジイ。」とブリジットをうながした。
しばらく沈黙があった後だった。
「言いたい事があるなら言ってもいいのよ、ビジイ。」
優しく語りかける様な母上の声に私は視線を戻す。
ブリジットがこちらを見ていた。
視線が交わる。
と思った瞬間ブリジットがこちらに走り寄った。
(ぶたれる?)
いや、それもやぶさかではない。
すべて受け入れよう。
ドっと衝撃があった。
思わず目を瞑る。
「ごめんなさい。」
囁くような、風が吹いたら消えてしまいそうな、小さな声が耳元で聞こえた。
「え……」
目を開けるともう玄関に向かって小走りのブリジットの後ろ姿が見えた。
呆然と立ち尽くす私を母上はチラと見て嘆息すると、そのままブリジットの後を追う様に出ていった。
残ったのはブリジットの甘い香りと
後悔。
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