【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン

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4.新市長の挨拶

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市庁舎の中は陰鬱な空気で満ちていた。高い天井には蜘蛛の巣が張り、床には長年掃き清められていないであろう埃が積もっている。案内されたホールに集められた十数名の職員たちは誰もが覇気のない顔で、壁に寄りかかったり椅子に身を預けたりしていた。新しい市長の到着に興味すら示さない。

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」

私の声が静まり返ったホールに響く。職員たちが億劫そうにこちらを向いた。私はひるまず彼らの前に立つと、背後に控える不安げなオドネルに目配せして一歩前に出た。

「本日よりこのアトランシアの市長を務めることになった、ルティア・ヴェルフェンです。私は王都から追放されてこの地へ参りました」

あえて事実を率直に告げると、職員たちの間に微かな嘲笑が広がった。追放された令嬢が市長だと? お飾りもいいところだ――そんな声が聞こえてくるようだった。

「ですが、この命令を罰だとは思っておりません。むしろチャンスだと考えています」

私の言葉に彼らの嘲笑がぴたりと止まる。いぶかしむような視線が突き刺さった。私はその視線を一身に受け止めながら、熱を込めて続けた。

「このアトランシアはかつて大陸で最も栄えた偉大な商業都市でした。その歴史、その土台は今もこの街の地下に眠っています。人々が希望を失い、街が活気をなくしたのは誰もが『もう終わりだ』と諦めてしまったから。けれど本当にそうでしょうか? 私にはそうは思えません。この街は死んではいない。眠っているだけです。私は皆さん、この街に住む人々と共に、アトランシアを再び目覚めさせたい。かつての栄華を取り戻すのではありません。それを超える大陸一の都市へと再生させるのです!」

前世のコンサルタントとして何度も経営陣を前にプレゼンをした経験が活きる。言葉に力を、声に熱を乗せる。私の言葉は単なるお嬢様の戯言ではない。確固たる意志と計画に基づいた宣言。ホールを満たしていた冷ややかな空気にかすかな亀裂が入る。職員たちの顔から諦めの色が薄れ、困惑とほんのわずかな好奇心が浮かび上がっていた。

一呼吸おいて、にっこりと微笑んだ。

「さて、その壮大な計画の第一歩。本日、皆さんと共に始めたいことがあります」

ごくりと誰かが息をのむ。重税か、それとも無茶な公務の命令か。彼らの緊張が伝わってきた。

「それは――この市庁舎の『掃除』です」
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