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3.荒廃都市へ
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王都が遠ざかるにつれ、馬車の窓から見える景色は次第にその彩りを失っていった。豊かに波打っていた麦畑は姿を消し、手入れのされていない荒れ地と痩せた森がどこまでも続く。時折通りかかる村は活気がなく、家々の屋根には穴が空き、道行く人々の服装もみすぼらしくなっていくのが見て取れた。領主すらいないトライオン領、これがヴェリタス王国から見捨てられた土地の現実だった。
「お嬢様、そろそろアトランシアの市壁が見えてまいります」
うたた寝から目覚めたようなゆったりとした声でオドネルが告げた。地平線の先に巨大な石造りの壁が見えてきた。かつての栄華を偲ばせる壮麗な門構え。それとは裏腹に門をくぐった先の世界は想像を遥かに超えて荒廃していた。
石畳は砕け、雑草がいたるところから顔を覗かせている。かつては華やかな商店が軒を連ねていたであろう大通りは閑散とし、窓ガラスが割れ、壁が崩れ落ちた建物がまるで骸骨のように立ち並んでいた。道端に座り込む人々の肩は力なく垂れ、その瞳には何の光も宿っていなかった。
これがアトランシア。
王太子が私を追いやった流刑地。
誰もが憐れんだ望みのない街。
「……ひどいものですな」
オドネルが思わずといった様子で呟いた。彼の声にはこの惨状を目の当たりにした純粋な驚きと、これから私が置かれるであろう状況への憂いが滲んでいた。
馬車が市庁舎と思われる建物の前で止まる。ゆっくりと扉を開け、外に降り立った。人々が遠巻きに警戒と無関心がない交ぜになった視線を向けてくる。絶望という名の空気が、重く、粘りつくように街全体を覆っていた。
一瞬、息が詰まるような感覚に襲われる。それはほんの刹那のこと。私の目に映る光景が徐々に違う意味を持ち始めた。
崩れた建物は再建すべきインフラ。活気のない市場は新たな物流ルートを開拓するチャンス。人々の瞳に宿る無気力は働く喜びと生きる目的を思い出せば、きっと輝きに変わるはず。問題が山積み、課題だらけ。つまり――改善の余地しかない。
ぞくりと背筋が震えた。それは恐怖からではない。武者震いだ。前世の経営コンサルタントとして関わった、どんな困難な企業再建プロジェクトよりもはるかに大きく、やりがいのある仕事。
絶望の淵?とんでもない。
――――――――ここは可能性という名の宝庫。
くるりとオドネルの方を振り返る。私の表情に戸惑いを覚えたのか、彼は心配そうに眉を寄せた。そんな彼に向かって満面の笑みを浮かべてみせた。
「オドネル、見てください。なんて素晴らしい場所なのでしょう!」
「……?お嬢様、ご冗談を」
呆気にとられる彼に私は両手を広げ、高らかに宣言した。
「ここが新しい事業の舞台よ!このアトランシアをかつて以上の大都市へと再生させてみせるわ!」
私の声は濁った街の空気を切り裂くように高らかに響き渡った。この瞬間、新たな人生のプロジェクトが幕を開けた―――。
「お嬢様、そろそろアトランシアの市壁が見えてまいります」
うたた寝から目覚めたようなゆったりとした声でオドネルが告げた。地平線の先に巨大な石造りの壁が見えてきた。かつての栄華を偲ばせる壮麗な門構え。それとは裏腹に門をくぐった先の世界は想像を遥かに超えて荒廃していた。
石畳は砕け、雑草がいたるところから顔を覗かせている。かつては華やかな商店が軒を連ねていたであろう大通りは閑散とし、窓ガラスが割れ、壁が崩れ落ちた建物がまるで骸骨のように立ち並んでいた。道端に座り込む人々の肩は力なく垂れ、その瞳には何の光も宿っていなかった。
これがアトランシア。
王太子が私を追いやった流刑地。
誰もが憐れんだ望みのない街。
「……ひどいものですな」
オドネルが思わずといった様子で呟いた。彼の声にはこの惨状を目の当たりにした純粋な驚きと、これから私が置かれるであろう状況への憂いが滲んでいた。
馬車が市庁舎と思われる建物の前で止まる。ゆっくりと扉を開け、外に降り立った。人々が遠巻きに警戒と無関心がない交ぜになった視線を向けてくる。絶望という名の空気が、重く、粘りつくように街全体を覆っていた。
一瞬、息が詰まるような感覚に襲われる。それはほんの刹那のこと。私の目に映る光景が徐々に違う意味を持ち始めた。
崩れた建物は再建すべきインフラ。活気のない市場は新たな物流ルートを開拓するチャンス。人々の瞳に宿る無気力は働く喜びと生きる目的を思い出せば、きっと輝きに変わるはず。問題が山積み、課題だらけ。つまり――改善の余地しかない。
ぞくりと背筋が震えた。それは恐怖からではない。武者震いだ。前世の経営コンサルタントとして関わった、どんな困難な企業再建プロジェクトよりもはるかに大きく、やりがいのある仕事。
絶望の淵?とんでもない。
――――――――ここは可能性という名の宝庫。
くるりとオドネルの方を振り返る。私の表情に戸惑いを覚えたのか、彼は心配そうに眉を寄せた。そんな彼に向かって満面の笑みを浮かべてみせた。
「オドネル、見てください。なんて素晴らしい場所なのでしょう!」
「……?お嬢様、ご冗談を」
呆気にとられる彼に私は両手を広げ、高らかに宣言した。
「ここが新しい事業の舞台よ!このアトランシアをかつて以上の大都市へと再生させてみせるわ!」
私の声は濁った街の空気を切り裂くように高らかに響き渡った。この瞬間、新たな人生のプロジェクトが幕を開けた―――。
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