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68.星屑のウェディングドレス
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あの熱烈な祝福の日から数週間が過ぎた。市民たちからの申し出をありがたく受け取った私たちは、正式な手順を踏むため、互いの実家へと挨拶に赴いた。私の父であるヴェルフェン伯爵はシオンの誠実な人柄と私への深い愛情を知ると、「娘を頼んだ」と力強く彼の手を握ってくれた。一方、シオンの故郷であるクレイヴァーン領でも領民たちが総出で温かく迎え入れてくれた。両家からの祝福を受け、私たちの婚約は国中の誰もが認める確かなものとなった。
そして、アトランシアでは市民たちによる結婚式の準備が着々と進められていた。その熱意は私たちの想像を遥かに超えるもの。
「ルティア様、こちらへどうぞ。さあ、皆様お待ちかねですよ」
繊維ギルドの女性に導かれ、私は市庁舎の一室に設けられた特別な試着室へと足を踏み入れた。部屋の中央には大きな姿見が置かれ、その前には何人もの仕立て職人たちが待っている。彼女たちの手によって生み出された純白のウェディングドレスは柔らかな光を浴びて神々しいまでに輝いていた。
「持てる技術のすべてを注ぎ込んだ一着です!」
アトランシア近郊でしか採れないという希少な光絹をふんだんに使い、何層にも重ねられたスカートは歩くたびに波のように揺れる。胸元には夜空をモチーフにした銀糸の刺繍が施され、無数の小粒の魔光石が星々のようにきらめいていた。それはまるで、シオンが私にプロポーズしてくれたあの美しい星月夜そのもの。
「まあ……なんて綺麗……」
少し照れくさい気持ちを抑えながらドレスに袖を通し、職人たちに手伝われて着付けを終える。姿見に映った自分は別人のように見えた。その時、ノックと共に扉が開き、シオンが顔を覗かせた。
「準備は……」
彼はそこまで言って言葉を失い、ただ静かに私を見つめる。ゆっくりと部屋に入ってきた彼は私の前に立つと、
「……素敵だ、ルティア。世界中のどんな言葉を集めても、今の君の美しさを表現しきれない」
「ありがとう、シオン。でも、あなた見つめられると、なんだか……少し恥ずかしい気が……」
「そんなことはない。このドレスは君にふさわしいよ」
彼の優しい眼差しに、私はこれから始まる結婚式への期待で胸がいっぱいになるのを感じた。
ドレスの試着を終えた午後、私たちは式場の建設が進む市庁舎前の広場を訪れた。そこは市民から祝福を受けた思い出の場所。今、その広場は巨大な祝祭の舞台へと姿を変えつつあった。
「おお、市長! 旦那様! どうだい、この祭壇の出来栄えは!」
頑固そうな顔をこれでもかとほころばせながら声をかけてきたのはバルトマー。真っ白な大理石を巧みに組み上げ、荘厳な祭壇を作り上げていた。その中央には自由交易連合の理念である「天秤」と、アトランシアの象徴である「再生の翼」が精緻な彫刻で刻まれている。
「すごいわ、バルトマーさん。こんなに立派なものを……」
「二人の門出だ、一片の妥協も許さんよ。生涯最高傑作にするから、楽しみに待っててくれ!」
周囲に目を向ければ、あちこちで活気あふれる準備が進んでいた。ミランダ率いる料理人組合は各国から取り寄せた最高の食材を前にメニューの最終調整に熱を上げている。技術専門学校の楽団と街の交響楽団は壮大な祝典の曲を練習中で、その音色は街全体に幸福な予感を響かせている。
誰もが笑顔で、結婚式を成功させようと力を尽くしてくれている。通りかかる人々が私たちに気づくと手を振り、口々に「おめでとう」と声をかけてくれる。
「俺たちは本当に幸せ者だな」
市民たちの温かい想いに包まれながら、私たちは来るべきその日に向けて心を一つに――――。
そして、アトランシアでは市民たちによる結婚式の準備が着々と進められていた。その熱意は私たちの想像を遥かに超えるもの。
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「まあ……なんて綺麗……」
少し照れくさい気持ちを抑えながらドレスに袖を通し、職人たちに手伝われて着付けを終える。姿見に映った自分は別人のように見えた。その時、ノックと共に扉が開き、シオンが顔を覗かせた。
「準備は……」
彼はそこまで言って言葉を失い、ただ静かに私を見つめる。ゆっくりと部屋に入ってきた彼は私の前に立つと、
「……素敵だ、ルティア。世界中のどんな言葉を集めても、今の君の美しさを表現しきれない」
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「そんなことはない。このドレスは君にふさわしいよ」
彼の優しい眼差しに、私はこれから始まる結婚式への期待で胸がいっぱいになるのを感じた。
ドレスの試着を終えた午後、私たちは式場の建設が進む市庁舎前の広場を訪れた。そこは市民から祝福を受けた思い出の場所。今、その広場は巨大な祝祭の舞台へと姿を変えつつあった。
「おお、市長! 旦那様! どうだい、この祭壇の出来栄えは!」
頑固そうな顔をこれでもかとほころばせながら声をかけてきたのはバルトマー。真っ白な大理石を巧みに組み上げ、荘厳な祭壇を作り上げていた。その中央には自由交易連合の理念である「天秤」と、アトランシアの象徴である「再生の翼」が精緻な彫刻で刻まれている。
「すごいわ、バルトマーさん。こんなに立派なものを……」
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周囲に目を向ければ、あちこちで活気あふれる準備が進んでいた。ミランダ率いる料理人組合は各国から取り寄せた最高の食材を前にメニューの最終調整に熱を上げている。技術専門学校の楽団と街の交響楽団は壮大な祝典の曲を練習中で、その音色は街全体に幸福な予感を響かせている。
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