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第二部
アンドレの苦悩
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父上の黒髪とクリスティーナの緑色の瞳、尋ねなくても分かったであろうあの夜の子。
「私は動揺した。そして……全てを打ち明けた。今まで黙っていた身分、あの後何があったのか……その時の状況。もちろんジルベール、おまえのことも。クリスティーナも私に話してくれた。両親と祖父母、レオンのこと……」
酸味がする液体が腹の中から込み上げるのを辛うじて止め、その代わりに「はい」と、短く返事をした。どれだけ吐き気を催そうと、人前での粗相を回避するのは、曲がりなりにも四大公爵家嫡男として育っている証拠だ。
「私は全てを解決し、陳腐だが――今度こそ必ず迎えにくると約束した。当時まだ存命で領地にいた両親にも全てを告白した。彼らは何も言わず、私の意見を尊重してくれた」
だが結局その願いは実現できていない。
「エロイーズに離縁したいことを伝えたのだが……」
「拒否されたのですね」
普通に考えて平民から四大公爵家夫人への大出世だ。伯爵家も取り潰されているから平民に戻ることになるが、一度上がった生活レベルは下げられない。派手好きと言われている母上なら尚更だと、容易に想像できる。
「そうだ」
「ですが――養父の伯爵も(そもそもギファルド家には敵わないが)力を失っていますし、母上が嫌だと言っても父上は強行できたのではないですか?」
父上は何かを言う代わりに、残っていた茶を飲んだ。静寂が包む室内で、最高位貴族としては不適切なゴクリという喉を通る音が響いた。
俺にはそれが心地良く、対峙している相手がギファルド公爵ではなく、一人の人間なのだと錯覚させてくれる。
言うのを憚るということは母上が父上を脅したのかと訊くと、躊躇いながらも「脅されたのではなく条件を提案された」と、濁すように答えた。
「条件とは?」
「ジルベール。すまない、私の保身になるが……おまえにはあまり聞かせたくない内容だ」
「父上、どのようなことでも受け入れる覚悟はできております。俺が知りたいのは真実です」
いや、実際には覚悟なんて全くないけど。でも聞いても大丈夫だ。どうせどんな内容でもこれ以上は傷つきようがないって意味で。それに――俺の気持ちの下降が激しければ激しいほど、割を食うのは八つ当たりされるレオンだし。父上に先回りされて、回避するためにレオンを俺から遠ざけられなければだが。
父上が大きく息を吐いた。
俺の今の考えを見破ったための行為ではないはず……
「彼女はおまえの出生の秘密を皆に話さない代わりに、ギファルド家夫人――嫡男の母親としての地位の保障を求めてきた」
え、結局今もその通りになっているということは……
「私は了解し、こちらも条件として異能を使うことを禁止させ…………すまない、ジルベール」
声を震わせて言う父上の目尻が光っているように見えるのは、気のせいではない。それほどにその時の決断を後悔しているのか、それとも……
「おまえから……母親を取り上げた」
有能で、常に明瞭かつ丁寧に話すはずのアンドレだが、先ほどから言っていることは要領を得ず、言葉の繋がりが理解できない。
「すみません、父上。なぜ、父上が俺から母上を取り上げたとおっしゃるのですか?」
「それは……彼女の要望を受け入れる代わりに、二つの選択肢を与えたのだ」
「選択肢ですか」
「一つ目は、二人で私達の子を大事に育て、公爵夫人としての役目を務めること。もう一つは……公爵夫人の仕事を放棄し遊びたいのなら、母親としての役割も放棄し、私の子に関わらないこと、その二つだ」
「母上は――後者を選んだ、ということですね」
「そうだ。すまない……私が、おまえから母親を奪った」
いや、それよりも大事なのは――
「父上、あなたは俺のことを『私の子』と……」
「そうだ。そう言ったが……ああ、おまえは私の子と言われることが複雑だろう。重ね重ね傷つけているな。配慮が足らず申し訳ない」
「いえ、そうではなくて……俺は、あなたの子どもなのでしょうか」
知らない外国の言葉を聞いたかのように、父上が怪訝な顔をしている。
「どういう意味で言っている? ジルベール、私と血の繋がりがないことは理解していると思っていたが」
「それはもちろん分かっています。ただ、父上はそれでも俺を――俺のことを我が子だと、思っていただけるのですか?」
「当然だろう、なぜ疑う? いや、おまえにそう思わせてしまう私が親として失格だな」
父上のあの時の、レオンがいるから安心と言ったのは俺を盾にするわけではなく……
「父上、お伺いしたいのですが……」
「なんだ?」
心を整えるように少しの間を置いてから訊くと、父上はしっかりとした口調で答えた。
「それは言葉通り、レオンがおまえのそういう思い込みが少々激しいところを正してくれる、また辛い幼少期を過ごさせてしまい、自分の気持ちを素直に出すことを控えていたおまえが、レオンから与えられる愛で人を信じることを学び、公爵としてしっかりやってほしいという意味だ」
今までずっと引っかかっていたものが、自然に取れたのを感じた。
「ジルベール、話を戻してもかまわないか……?」
俺が頷くと、父上は少し憚る素振りを見せながら話し始めた。
「そういった経緯から私達は離婚しなかった。そしてエロイーズは、その後……屋敷に戻らなくなった」
「はい」
「弁解に聞こえるだろうが私は任務で多忙で……使用人とは別に、おまえに親身になってくれる者が必要だと考えた。一人しか思い至らず、恥を承知でクリスティーナに会いに行った」
父上の表情が揺れる。
「彼女は二回も約束を破った私に何も言わず、温かく向かい入れてくれた。そしてクリスティーナの優しさに甘え、おまえも知っている通り、屋敷に来てほしいと頼んだ」
「はい。彼女は受け入れたということですよね」
「ああ。だが当然、私が願ったのは現在のような使用人としてではない」
そうだ、よくよく考えなくても違和感がある。父上の性格上、自らクリスティーナを使用人にはしない。
「ではなぜ彼女は使用人なのですか」
「クリスティーナにもギファルド家に来たい理由があった」
「理由とは……」
「彼女は当時、外で働いていたが、あの美しさのために何人もの男達から付きまとわれていたらしい」
クリスティーナの美貌は貴族街ですら群を抜いて輝いている。平民街ならばどうなのか、想像に容易い。
「そして……酷い時は彼女が仕事で家を空けている間に侵入し、息子から懐柔しようとレオンに接触した者もいたようだ。ジルベール、覚えているか? うちに来たばかりのレオンが怯えていたのを」
「そういえば……はい、覚えています」
正直あの頃は、引っ込み思案でボソボソとゆっくり話すからめんどくさいと思った気がする。そんな理由があったなんて想像もしなかった。
「四大公爵のギファルド家ならば部外者は近付けない。働いている者達も使用人教育を受けているので、好意を示す者はいても一定の距離は保つ、そう彼女は考えたのだろう。レオンを護るために提案を受け入れた。自分も使用人として働くという条件で……当然私は反対したが、説得しきれなかった」
俺は被害妄想が酷かったせいか自分が一番悲劇的だと勘違いしていたが……それはクリスティーナではないのか?
絶世の美女と称えられ血統が良いにも関わらず、逆にそれが足枷になっている。クリスティーナは果たして幸せなのだろうか。息子だって、初めから四大公爵家子息として育つ道があった。レオンが英雄にならなければ、おそらく出自が明るみにはならなかったし、今だってそれを遠慮しているように見える。
レオンもだが、なぜそこまで自己犠牲で生きる?
父上は自身落ち着かせるかのように水を口にした。
「ジルベール、これは私の言い訳だが……」
「父上、大丈夫です。話してください」
頷くと、父上も同じように頷き返してから言った。
「レオンが来て少し経った頃の――おまえ達の冒険は覚えているか?」
「はい父上。あの時の隊員がフェリー大隊長だったとは、先ほど思い出しましたが」
「ああ。彼は大変優秀で忠実な隊員だ、何度も助けてもらっている」
ローズ王女との関係を聞きたいが、さすがに今は微妙だろう。
父上は少し上を向いて、昔を思い出す仕草をしながら続けた。
「あの後、実はクリスティーナに怒られてな」
「クリスティーナにですか?」
怒りなど、クリスティーナからは一番想像できない感情だと思っていたが。だが普通に考えれば自分の子どもを危ない目に合わされたんだ。誰だって怒るよな、父上は俺の監督責任者って意味か。
「そうだ。私がジルベール、おまえと少し距離を取っていると感じると。おまえが寂しさから私の気を引こうとして屋敷を出たのではないかと、そう教えられた」
やはりクリスティーナは優しかった。
「確かに私はおまえを拒否してしまった後、罪悪感からか以前のようにおまえと接することができずにいた。私は猛省し、おまえに歩み寄ろうとした」
「え?」
「そうだ。だがそう感じられなかっただろう?」
「……はい」
父上との関係はあの後、近くなるどころかより遠くなったはずだ。
「ジルベール、私は未熟だった――いや、今もだな。全く成長できていない」
自分自身への嫌悪感を出すように、大きく息を吐いた。茶色の瞳には後悔が感じられる。
「おまえがレオンとの距離を縮め始めた様子を見て、おまえに家族ができたと喜び、自分がいなくても大丈夫なのだと安心してしまった」
使用人のレオンがいれば十分だと、そう決めた時以降か。確かに父上は間違っていなかった気もするが。
「ジルベール、私は本当に愚かだった。いまさら赦してもらえるとは思っていない。だが、これだけは言わせてほしい……」
張り詰めた空気の中で、父上の震えた声がゆっくりと俺を包んでいく。
「ジルベール。おまえは血が繋がっていなくとも大事な……私の息子だ。おまえが生まれた時から、そしてこれからもずっと愛している」
「私は動揺した。そして……全てを打ち明けた。今まで黙っていた身分、あの後何があったのか……その時の状況。もちろんジルベール、おまえのことも。クリスティーナも私に話してくれた。両親と祖父母、レオンのこと……」
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「私は全てを解決し、陳腐だが――今度こそ必ず迎えにくると約束した。当時まだ存命で領地にいた両親にも全てを告白した。彼らは何も言わず、私の意見を尊重してくれた」
だが結局その願いは実現できていない。
「エロイーズに離縁したいことを伝えたのだが……」
「拒否されたのですね」
普通に考えて平民から四大公爵家夫人への大出世だ。伯爵家も取り潰されているから平民に戻ることになるが、一度上がった生活レベルは下げられない。派手好きと言われている母上なら尚更だと、容易に想像できる。
「そうだ」
「ですが――養父の伯爵も(そもそもギファルド家には敵わないが)力を失っていますし、母上が嫌だと言っても父上は強行できたのではないですか?」
父上は何かを言う代わりに、残っていた茶を飲んだ。静寂が包む室内で、最高位貴族としては不適切なゴクリという喉を通る音が響いた。
俺にはそれが心地良く、対峙している相手がギファルド公爵ではなく、一人の人間なのだと錯覚させてくれる。
言うのを憚るということは母上が父上を脅したのかと訊くと、躊躇いながらも「脅されたのではなく条件を提案された」と、濁すように答えた。
「条件とは?」
「ジルベール。すまない、私の保身になるが……おまえにはあまり聞かせたくない内容だ」
「父上、どのようなことでも受け入れる覚悟はできております。俺が知りたいのは真実です」
いや、実際には覚悟なんて全くないけど。でも聞いても大丈夫だ。どうせどんな内容でもこれ以上は傷つきようがないって意味で。それに――俺の気持ちの下降が激しければ激しいほど、割を食うのは八つ当たりされるレオンだし。父上に先回りされて、回避するためにレオンを俺から遠ざけられなければだが。
父上が大きく息を吐いた。
俺の今の考えを見破ったための行為ではないはず……
「彼女はおまえの出生の秘密を皆に話さない代わりに、ギファルド家夫人――嫡男の母親としての地位の保障を求めてきた」
え、結局今もその通りになっているということは……
「私は了解し、こちらも条件として異能を使うことを禁止させ…………すまない、ジルベール」
声を震わせて言う父上の目尻が光っているように見えるのは、気のせいではない。それほどにその時の決断を後悔しているのか、それとも……
「おまえから……母親を取り上げた」
有能で、常に明瞭かつ丁寧に話すはずのアンドレだが、先ほどから言っていることは要領を得ず、言葉の繋がりが理解できない。
「すみません、父上。なぜ、父上が俺から母上を取り上げたとおっしゃるのですか?」
「それは……彼女の要望を受け入れる代わりに、二つの選択肢を与えたのだ」
「選択肢ですか」
「一つ目は、二人で私達の子を大事に育て、公爵夫人としての役目を務めること。もう一つは……公爵夫人の仕事を放棄し遊びたいのなら、母親としての役割も放棄し、私の子に関わらないこと、その二つだ」
「母上は――後者を選んだ、ということですね」
「そうだ。すまない……私が、おまえから母親を奪った」
いや、それよりも大事なのは――
「父上、あなたは俺のことを『私の子』と……」
「そうだ。そう言ったが……ああ、おまえは私の子と言われることが複雑だろう。重ね重ね傷つけているな。配慮が足らず申し訳ない」
「いえ、そうではなくて……俺は、あなたの子どもなのでしょうか」
知らない外国の言葉を聞いたかのように、父上が怪訝な顔をしている。
「どういう意味で言っている? ジルベール、私と血の繋がりがないことは理解していると思っていたが」
「それはもちろん分かっています。ただ、父上はそれでも俺を――俺のことを我が子だと、思っていただけるのですか?」
「当然だろう、なぜ疑う? いや、おまえにそう思わせてしまう私が親として失格だな」
父上のあの時の、レオンがいるから安心と言ったのは俺を盾にするわけではなく……
「父上、お伺いしたいのですが……」
「なんだ?」
心を整えるように少しの間を置いてから訊くと、父上はしっかりとした口調で答えた。
「それは言葉通り、レオンがおまえのそういう思い込みが少々激しいところを正してくれる、また辛い幼少期を過ごさせてしまい、自分の気持ちを素直に出すことを控えていたおまえが、レオンから与えられる愛で人を信じることを学び、公爵としてしっかりやってほしいという意味だ」
今までずっと引っかかっていたものが、自然に取れたのを感じた。
「ジルベール、話を戻してもかまわないか……?」
俺が頷くと、父上は少し憚る素振りを見せながら話し始めた。
「そういった経緯から私達は離婚しなかった。そしてエロイーズは、その後……屋敷に戻らなくなった」
「はい」
「弁解に聞こえるだろうが私は任務で多忙で……使用人とは別に、おまえに親身になってくれる者が必要だと考えた。一人しか思い至らず、恥を承知でクリスティーナに会いに行った」
父上の表情が揺れる。
「彼女は二回も約束を破った私に何も言わず、温かく向かい入れてくれた。そしてクリスティーナの優しさに甘え、おまえも知っている通り、屋敷に来てほしいと頼んだ」
「はい。彼女は受け入れたということですよね」
「ああ。だが当然、私が願ったのは現在のような使用人としてではない」
そうだ、よくよく考えなくても違和感がある。父上の性格上、自らクリスティーナを使用人にはしない。
「ではなぜ彼女は使用人なのですか」
「クリスティーナにもギファルド家に来たい理由があった」
「理由とは……」
「彼女は当時、外で働いていたが、あの美しさのために何人もの男達から付きまとわれていたらしい」
クリスティーナの美貌は貴族街ですら群を抜いて輝いている。平民街ならばどうなのか、想像に容易い。
「そして……酷い時は彼女が仕事で家を空けている間に侵入し、息子から懐柔しようとレオンに接触した者もいたようだ。ジルベール、覚えているか? うちに来たばかりのレオンが怯えていたのを」
「そういえば……はい、覚えています」
正直あの頃は、引っ込み思案でボソボソとゆっくり話すからめんどくさいと思った気がする。そんな理由があったなんて想像もしなかった。
「四大公爵のギファルド家ならば部外者は近付けない。働いている者達も使用人教育を受けているので、好意を示す者はいても一定の距離は保つ、そう彼女は考えたのだろう。レオンを護るために提案を受け入れた。自分も使用人として働くという条件で……当然私は反対したが、説得しきれなかった」
俺は被害妄想が酷かったせいか自分が一番悲劇的だと勘違いしていたが……それはクリスティーナではないのか?
絶世の美女と称えられ血統が良いにも関わらず、逆にそれが足枷になっている。クリスティーナは果たして幸せなのだろうか。息子だって、初めから四大公爵家子息として育つ道があった。レオンが英雄にならなければ、おそらく出自が明るみにはならなかったし、今だってそれを遠慮しているように見える。
レオンもだが、なぜそこまで自己犠牲で生きる?
父上は自身落ち着かせるかのように水を口にした。
「ジルベール、これは私の言い訳だが……」
「父上、大丈夫です。話してください」
頷くと、父上も同じように頷き返してから言った。
「レオンが来て少し経った頃の――おまえ達の冒険は覚えているか?」
「はい父上。あの時の隊員がフェリー大隊長だったとは、先ほど思い出しましたが」
「ああ。彼は大変優秀で忠実な隊員だ、何度も助けてもらっている」
ローズ王女との関係を聞きたいが、さすがに今は微妙だろう。
父上は少し上を向いて、昔を思い出す仕草をしながら続けた。
「あの後、実はクリスティーナに怒られてな」
「クリスティーナにですか?」
怒りなど、クリスティーナからは一番想像できない感情だと思っていたが。だが普通に考えれば自分の子どもを危ない目に合わされたんだ。誰だって怒るよな、父上は俺の監督責任者って意味か。
「そうだ。私がジルベール、おまえと少し距離を取っていると感じると。おまえが寂しさから私の気を引こうとして屋敷を出たのではないかと、そう教えられた」
やはりクリスティーナは優しかった。
「確かに私はおまえを拒否してしまった後、罪悪感からか以前のようにおまえと接することができずにいた。私は猛省し、おまえに歩み寄ろうとした」
「え?」
「そうだ。だがそう感じられなかっただろう?」
「……はい」
父上との関係はあの後、近くなるどころかより遠くなったはずだ。
「ジルベール、私は未熟だった――いや、今もだな。全く成長できていない」
自分自身への嫌悪感を出すように、大きく息を吐いた。茶色の瞳には後悔が感じられる。
「おまえがレオンとの距離を縮め始めた様子を見て、おまえに家族ができたと喜び、自分がいなくても大丈夫なのだと安心してしまった」
使用人のレオンがいれば十分だと、そう決めた時以降か。確かに父上は間違っていなかった気もするが。
「ジルベール、私は本当に愚かだった。いまさら赦してもらえるとは思っていない。だが、これだけは言わせてほしい……」
張り詰めた空気の中で、父上の震えた声がゆっくりと俺を包んでいく。
「ジルベール。おまえは血が繋がっていなくとも大事な……私の息子だ。おまえが生まれた時から、そしてこれからもずっと愛している」
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