9 / 102
第7話 ピクニック
しおりを挟むガレージのシャッターをリモートで開ける。2月に入ってLAらしくない天気が続いたけど、今日は晴天だ。気持ちのいい青空が樹々の間から見えてきた。
「よおし、行くか」
何度かマイケルに同乗してもらい自信がついた。本当はもう少しいろんな場所に行けるようにしたかったが佐山がうるさいので仕方ない。先日から既にスタジオには僕が運転をしている。今日は近隣の公園までドライブだ。
「おおっ。俺はいつでも発車オーライだぞ」
……その言い方、おまえが言うと、ものすごく卑猥だな。
僕は思わずあいつの顔を見る。奴は知ってか知らずが、無垢な笑顔で返してきた。
フリーウェイに乗って小1時間。恐竜や科学の博物館があるパークに行く。見学も楽しみだけど、緑広がる開放的な場所でピクニック気分を楽しむ。お弁当も作ったし、椅子やシートも準備した。久しぶりにウキウキしてるよ。
「仕事とパーティーばっかだったからなあ。こんなに自然がいっぱいあるのに、楽しまない選択はないよな」
助手席に座る佐山が言う。それには僕も同感だな。最初は慣れるので精いっぱいで楽しむまではいかなかった。仕事も忙しかったしね。
佐山はハリウッドシアターみたいな観光名所より、有名なスタジオに興味津々で、そっちには何度か出掛けた。
誰もが名前くらい知ってるミュージシャンが使ってたスタジオ。ギターも何本か置かれてて、佐山は夢中になって弾いてた。これからは僕が連れてってやれるからいつでも行けると喜んでる。
だだっ広い芝生の上にシートを引いて、お手製のサンドイッチを食べる。広場には野球に興じる人や犬の散歩、子供たちと遊んでる人もいるけど、一番多いのはカップルだ。
「美味いなあ。倫の腕前はどんどん上がってるな。最近インスタにも上げてるんだろ?」
僕の膝枕で寝転びながら、佐山がツナサンドを頬張ってる。
「少しだけどな。こっちに来てからネタが変わり映えしなくて」
はじめのうちは、庭の樹々や花から仕事場写真、パーティーの様子なんかを上げてたけど、そればっかりじゃねえ。
日本を離れているからこそ、今までのファンにはきちんと対応しなきゃと、色々工夫してるんだ。
「ああー。いいなあ。こういうとこはいいと思うんだよな」
カップルたちがキスをしてる。佐山が言う通り、米国では人前でも平気でスキンシップしてる。濃厚なキスだって抵抗ないみたい。もちろん男女のカップルだけじゃない。
「俺らもしよう。郷に入っては郷に従え」
「え、もう、また……」
デザートのリンゴを食べてる僕の首に逞しい腕を絡めてくる。全く行儀が悪い奴め。
「はい」
僕はあいつの誘う唇にリンゴを押し込んでやった。
「う、な、なんだっ、あ、でもうまいな」
押し込まれたリンゴをシャリシャリ言わせながら食べてる。なんか可愛いな。
「でも、あんたが最高」
こんなことでは諦めない佐山は、リベンジとばかりに起き上がりキスを迫る。
「んんっ……」
さすがにこれは防げない。あいつの魅惑の唇をご馳走になった。
――――リンゴの味がする。
涼やかな風吹く公園、太陽の下でキスを交わすなんて、やっぱりここでしか出来ないね。このためだけでも、来てよかったとか思っちゃったりして。
あんまり長すぎるキスに呆れたのか、冷やかしの口笛が聞こえてきた。
1
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
宵にまぎれて兎は回る
宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…
俺だけ愛してよ!!!!!
ひな
BL
長内 春馬(24)
村上 大輔(23)
俺と春馬は付き合っている。
春馬は社内の人気者であり、俺の憧れだ。
幼馴染という関係だったが、ひょんなことから俺と春馬は付き合いだした。
春馬のことが好きすぎて、いつもヘラって春馬に迷惑をかけてしまう。
嫉妬でおかしくなりそう。
春馬のことが大好き。
離れないで欲しい。
そんな想いが膨らんで、俺は春馬を嫉妬させてみようとした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる