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第8話 運転中はダメよ
しおりを挟む午後からは、恐竜博物館を見学。佐山はデカいものが好きだから、子供みたいにはしゃいでたよ。そういう僕もやっぱり憧れだよね。ティラノサウルスの姿を間近に見たら、普通に興奮した。
丸1日、二人で遊んでリフレッシュできた。広場ではギターを抱えて聞いたことのないフレーズを弾いてたから、新しい曲が生まれたのかも。
佐山は何も言わないけど、ずっと緊張してきたんじゃないかな。誰も自分のことを知らない場所に来て、それでも責任者として先頭に立ちみんなを引っ張っていかなければならない。
みんな最初はどんだけの者って感じで品定めしてたのは、言葉がわかんなくても気付いただろうな。
佐山の感性や実力が明らかになるにつれ、みんなの見る目も変わった。ロバート(監督)の耳は確かだって理解して、あいつについてきてくれるようになったんだ。そんなのつい最近のことだよ。
「久しぶりにおまえと二人で遊んだな」
「楽しかったなあ。ここ来てから休みも仕事してたこと多かったしな」
「頑張ってたよ、佐山。僕はサポートするしか出来なかったから……」
フリーウェイを滑るように走る。もう辺りは暗くなっている。さすがのLAも、この時期は陽が短い。
フリーウェイって16車線くらいあるんだよ。それを車が埋め尽くしてる。日本の高速道路とは全く別物だ。
「十分だよ。俺にとっては……あんたがそばにいてくれるだけで。それに今までにない刺激を受けてる。スタッフは誰も凄い才能の持ち主なんだ。奴らと音を出しながら議論するのって最高だよ。言葉も必要なかったしな」
佐山はハンドルを握る僕の頭をポンポンと叩く。そのうちに撫で始めた。
「運転中はお触り厳禁だ」
「ええっ……ちぇ、ケチ」
ケチじゃない。でも、こうして自由に外出できるようになって良かった。右側通行も随分慣れた。そのうち佐山も運転したいって言い出しそうだから、何度か練習させようかな。そしたらもっと遠くへ行ける。
「まあでも家が馬鹿みたいに広いから、仕事も伸び伸び出来るよな。ジェットバスもあるしな」
「あはは、ま、それもそうだな。気分転換に庭でバーベキューとかもしたし」
ジェットバスはほぼ毎晩、佐山が楽しんでた。バスと僕とをだけど。毎回ふやけそうになったよ。
バーベキューは少人数で、マイケル達を呼んでやったんだ。そう言えば、そろそろお返しのパーティーしないといけないなあ。また相談に乗ってもらわなきゃ。
ようやく家が見えてきた。すっかり夜だ。夕飯はテイクアウトしてきたからすぐ食べられる。今日は中華だ。
ガレージに車を入れて、シャッターを閉める。家にはここからそのまま入るんだ。玄関に回る必要はない。
「お疲れ。ん? どうした?」
シートベルトを外したところで、佐山が僕の腕を取った。驚いてあいつの方を見ると、いきなりシートを倒されてしまった。
「な、なんだよ」
「もう運転終わったろ?」
「ま、待てよ。もう家に着い……」
シートともに倒された僕の体にあいつが覆いかぶさってくる。狭いし重いから当然動けない。佐山は遠慮なく僕を襲った。
「お触り解禁だ」
「あ、ううん、ホントに……あほ……」
熱いキスが僕をまたとろけさせていく。舌を絡ませながら、器用にシャツのボタンを外していく。そのうち首筋やら耳の後ろに唇を這わせてきた。
「あ……んん……家がそこに……あるのに」
「いいんだよ……今すぐ抱きたいんだから」
「ええ……あ……」
なんでデカいベッドがすぐそこにあるのに、こんな狭い車内でおまえに抱かれてんのか。あ、でも……おまえとならどこでも、天国に行けるんだよな。
僕に沈んでいくあいつを感じる。僕は夢中になってあいつの髪をかき混ぜる。少し天パーな髪が指に絡んだ。
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