【R18】僕とあいつのいちゃラブな日々@U.S.A.

紫紺

文字の大きさ
57 / 102

第51話 しばしのお別れ

しおりを挟む


 週明けから、佐山はエンジニアたちとの仕上げに入った。音の録音は終わっても、それで終わりじゃない。さらにその後は、映像班とも合流だ。
 今日は一人でスタジオに行くのでややご機嫌斜め。

「じゃあ、俺、今日仕事で見送りできないけど、気を付けて帰ってね」

 澪たちは帰国の途に就く。あっという間の十日だったな。仕事が忙しくてあまり構ってやらなかったけど、本人たちは楽しめたようで良かった。ま、子供じゃないから干渉しない方がいいか。

「お兄ちゃんがセレブの暮らしをしてるって良くわかったよ。夏にまた来たいなあ。今度はプールサイドでパーティーしよう」

 空港までの道すがら、車の中で話は尽きない。妹は名残惜しそうだ。

「うちのプールサイドはそこまで大きくないよ。まあ、来たければ来れば。夏休みにはまだいると思うよ」
「ホントッ! でもお金ないかあ。ハワイで結婚式挙げたいから貯めなきゃ。ね、モッチー」

 セレブの暮らしは間違いないが、期間限定のものだ。仕事が終われば日本の可愛いアパートに戻る。

「へえ、じゃあ、ご祝儀弾まないとな」

 でも妹の結婚祝いは奮発してやろう。ハワイか。まだ行ったことないから、それも楽しみだ。

「うん。期待してるよー。佐山さんと来てね」
「もちろん。あ、おい、母さんたちに余計なこと言うなよ」

 変にセレブ暮らしを強調されても誤解を生む。

「どうしようかな。写真見ただけで『自分たちも行きたいっ』って騒ぎそう」

 それが目に見えてるから言ってるんだよ。
 最後まで上機嫌で妹たちは帰っていった。いつもながらの傍若無人ぶりだったが、空港で望月さんから意外な話を聞いた。

「色々お世話になってすみませんでした」
「いやいや、望月さんが謝ることはないよ。わがままな妹だけどよろしく頼むね」
「澪ちゃんは、わざとなんだと思います」
「え?」
「私が家事とか全然ダメで不器用なものだから、わざと我が儘放題して私のダメさ加減を隠したんじゃないかと。いつもは美味しい料理を作ってくれるんです」

 へえ。それは初耳だな。それにそんな気遣いするか? あいつが。

「相対的に、私の評価を上げたかったんだと思います。彼女は何も言いませんが」

 確かに、妹の我がままを優しく受け止めてる望月さんの常識人的なところは好感が持てた。
 でも澪って、僕の前では普通にあんなだしなあ。この話が本当なら、澪も可愛いとこあるじゃないかって思うけど。

「兄弟の仲もいいし、皆さんとても優しくて、つい甘えてしまいました」

 にこやかに笑う望月さん。あの査定が厳しい澪が選んだ相手だから心配してなかったけど、いい人だな。あいつも本気で好きなんだろう。

「いや僕の方は、望月さんたちが楽しめたのなら何よりだよ」
「佐山さんとお兄さんは本当にいい関係ですね。お互いを信頼しあってて。私たちも見習っていきます」

 なんだか照れくさい。手本にはなれないかもだけど、これほど人を好きになったことはないんだ。だからそう感じてくれたなら、素直に嬉しいな。

 パンパンになったスーツケースと土産物でいっぱいの紙袋を持って出発ロビーへと二人は向かう。僕は澪が振り返るんじゃないかと思い、姿が見えなくなるまで見送った。




しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

処理中です...