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第50話 お仕置きの後は
しおりを挟む他人の恋愛なんかに興味はない。僕は自分の恋愛だけで精一杯。あいつを好きになることで忙しいんだ。
なんだけど、目の前でショーンが見せる純愛がこそぐったいほど面白くて愛しかった。
「あのさ、ショーン。前にも言ったけど、僕は佐山と出会った時、普通に彼女がいたんだよね。だから、あいつを好きだって思った時、凄く焦った」
「ああ、うん。覚えてるよ」
あの時、ショーンは感慨深そうだったな。全く気付かなかったけど。
「でも、そういう気持ちって、否定しても疑っても溢れ出てくるもんなんだ」
「それは……わかるけど……けど、ジェフはボクのこと、好きって感情ないみたいだし」
ふうむ。これはもう、僕がお節介を焼く必要なさそうだ。
「ジェフもそう思ってるのかも。ショーンはジェフに興味ないって。僕もそう思ってた」
「そうなの? ああ、でもそうかも……。ボクは自信がなかったから……自分の気持ちにも」
しんみりとして、ショーンは俯いた。ステージの生演奏が途切れ、佐山のファーストアルバムが流れてる。
ダイニングの向こうに人の気配を感じた僕は両手の指にグラスを挟んだ。
「だってさ、ジェフ。後はよろしく」
「わっ! なに、気付いてたの?」
「当たり前だろ。っておまえもいたの?」
扉の影にいたジェフの後ろには佐山もいた。待っててって言ったのに。
「だって、あんたの後をジェフが追ってたから、そしたら、あんたじゃなくてショーンを追ってたと」
ジェフはそれには応えず、というか無視してキッチンに入っていった。
「あ、俺達も続きを……」
「待てが出来ない奴はお仕置きだな」
「そ、そんな」
「ふふ、冗談だよ。でもお願い。あの、『RING』を1回だけステージでやってくれ」
『RING』は、佐山が僕のために作ってくれたラブ・バラードだ。甘すぎる恋の歌。今の彼らにピッタリだろ? これで上手くいかなかったら永遠にチャンスはない。佐山は素直にステージに向かってくれた。
そろそろお開きにはいい時間だ。佐山の甘い声がマイクを通して流れていく。日本語だからわからないはずなのに、恋人たちは自然に寄り添う。心震えるバラードに夜の時間が溶けていった。
終演直後、お開きの挨拶もそこそこに佐山は僕を抱えてベッドに直行した。全く相変わらず『待て』が出来ない奴だよ。
「朝からお預けされっぱなしで……酷いよ、あんたは」
はあはあと走った後みたいに荒い息を吐きながら、あいつは僕を抱く。その興奮が僕にも否応なしに伝わってきて……。
「んん……ごめん……あっ……」
ちょっとした愛撫でも敏感に反応してしまう。あいつの唇が僕の首筋を這い、軽く歯を立てる。それだけでピクンと体が跳ねた。
「幸せ過ぎるから……お裾分けしたくなったんだ……ガラじゃないけど」
「え……俺はまだまだ、あんたを、幸せにするぞ……全然足りないくらい……だ」
無防備な僕の体を這いまわる指が、既に幸せの極致なんだけど。
「俺が幸せなのは当然だからな……あんたには、毎朝、毎夜、毎日幸せを感じてもらう……。それが、俺の生きる理由だ」
「佐山……うっ……あっ」
あいつの指が僕の敏感なところを撫ぜる。僕はあいつにしがみついた。
「もっと、もっと幸せにさせてやる……から……んっ、はあ……」
揺れる逞しい肉体。熱い吐息が耳にかかり、僕は文字通り幸せになる。おまえといれば、毎朝、毎夜、毎日、十分過ぎるほど幸せだよ。
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