御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました【完結】

日下奈緒

文字の大きさ
72 / 86
第8章 遅れた新婚旅行

しおりを挟む
翌日は、ホテルに備え付けのナイトプールで楽しんだ。

「律さん!」

私は日本から持って来たビキニを着て、プールサイドにいる律さんに手を振った。

「えっ⁉」

律さんの視線が、私の胸元に固定される。

「……千尋の胸、こんな大きかった?」

「もうっ!」

私は律さんの腕を叩いた。

実はビキニの中にパットを入れて寄せている。

密かにこれは、効果があったかもしれない。

嬉しくて、私は律さんの腕に絡みついた。

その時だった。

「千尋、俺の背中に隠れて。」

「えっ?」

何かったと思い、彼の背中に隠れた。

「何?何事?」

すると律さんはゴホンと咳ばらいした。

律さんがゴホンと咳払いした先には──視線を向けてきたのは、明らかに地元の若い男の子たち。

「千尋のこと、ジロジロ見てた。」

低く落ち着いた声だけど、内心は嫉妬で燃えているのがわかる。

その証拠に、背中越しに感じる彼の体温がやけに熱い。

「……ま、まあ、水着なんてそんなもんでしょ?」

私が苦笑いを浮かべると、律さんはピクリと口角を上げた。

「……だめ。千尋があんな格好して他の男に見られるの、全然よくない。」

「え、でもここプールだし……」

「だめ。今日は、俺の目だけで満足させて?」

そう言って、律さんは私の腕を取り、スッとナイトプールの端のカバナへと導いた。

まるで「人目を避けるように」──。

「ちょ、律さん⁉ ここ暗いけど……」

私が慌てて律さんを引き留めようとする。

「そう。暗いから、ちょっとくらい……触っても、バレないでしょ?」

「ええっ⁉」

彼の手が、私のウエストに回る。ビキニの上から、そっと胸に触れる指先──

「千尋……本当に、こんな姿で俺を挑発して、どうなるかわかってる?」

「ち、ちがっ……そういうつもりじゃ……」

離そうとしても、律さんが離れてくれない。

「じゃあ、なんでパット入れてるの?」

「えっ⁉」

──ばれた⁉

「可愛すぎて、抱きしめるの我慢してたのに。」

そのまま、カバナの中でそっと抱き寄せられる。遠くで水音が聞こえる中、ふたりの熱だけが静かに高まっていく──

「俺以外に見せるの禁止。今夜は、この罪を……ちゃんと償ってもらうからね。」

囁く声に、心臓がドクンと跳ねた。

ナイトプールは、まだ始まったばかりなのに。

そしてプールの中、私と律さんは手を繋いで水の中に潜ったりして遊んだ。

「プㇵッ!」

水の中から顔を出すと、律さんも顔を出した。

髪が水に濡れて顔にかかる。

それがセクシーでドキッとした。その時だった。

隣で泳いでいた金髪の女性が、律さんに話しかけてきた。

「Where are you from?」「Japan。」

律さんが答えたのが気に入ったのか、彼女はにこっと笑った。

「Is that girl friend next to you?」

そして私をチラッとみる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

龍の腕に咲く華

沙夜
恋愛
どうして私ばかり、いつも変な人に絡まれるんだろう。 そんな毎日から抜け出したくて貼った、たった一枚のタトゥーシール。それが、本物の獣を呼び寄せてしまった。 彼の名前は、檜山湊。極道の若頭。 恐怖から始まったのは、200万円の借金のカタとして課せられた「添い寝」という奇妙な契約。 支配的なのに、時折見せる不器用な優しさ。恐怖と安らぎの間で揺れ動く心。これはただの気まぐれか、それとも――。 一度は逃げ出したはずの豪華な鳥籠へ、なぜ私は再び戻ろうとするのか。 偽りの強さを捨てた少女が、自らの意志で愛に生きる覚悟を決めるまでの、危険で甘いラブストーリー。

Catch hold of your Love

天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。 決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。 当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。 なぜだ!? あの美しいオジョーサマは、どーするの!? ※2016年01月08日 完結済。

私の赤い糸はもう見えない

沙夜
恋愛
私には、人の「好き」という感情が“糸”として見える。 けれど、その力は祝福ではなかった。気まぐれに生まれたり消えたりする糸は、人の心の不確かさを見せつける呪いにも似ていた。 人を信じることを諦めた大学生活。そんな私の前に現れた、数えきれないほどの糸を纏う人気者の彼。彼と私を繋いだ一本の糸は、確かに「本物」に見えたのに……私はその糸を、自ら手放してしまう。 もう一度巡り会った時、私にはもう、赤い糸は見えなかった。 “確証”がない世界で、私は初めて、自分の心で恋をする。

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"

桜井 響華
恋愛
派遣受付嬢をしている胡桃沢 和奏は、副社長専属秘書である相良 大貴に一目惚れをして勢い余って告白してしまうが、冷たくあしらわれる。諦めモードで日々過ごしていたが、チャンス到来───!?

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーンにも投稿しています》

貴方の✕✕、やめます

戒月冷音
恋愛
私は貴方の傍に居る為、沢山努力した。 貴方が家に帰ってこなくても、私は帰ってきた時の為、色々準備した。 ・・・・・・・・ しかし、ある事をきっかけに全てが必要なくなった。 それなら私は…

処理中です...