御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました【完結】

日下奈緒

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第8章 遅れた新婚旅行

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律さんはそのまま、私の肩をそっと抱き寄せた。

「She's my wife. Beautiful, right?」

その一言に、金髪の女性が目を見開き、ぱちぱちとまばたきをした。そして──ふっと微笑む。

「Yes、Your wife is very beautiful.」

うんうんと頷く彼女に、私は照れて両手を手を離してしまった。

「But you're also a nice guy.」

そしてあろうことか、金髪女性は律さんを後ろから抱きしめた。

「えっ?」

そして律さんを連れて後ろへ引っ張って行く。

「ちょっと、律さん。wait!」

私は急いで金髪女性を捕まえる。

「えっ?どういう事?」

すると金髪女性は律さんの頬にキスする。

「ええええ!」

私は思わず大声を上げてしまった。

金髪女性はにっこり笑いながら、「Good bye kiss. Don't worry.」と軽くウインク。

その瞬間──

「千尋、誤解しないで!」

律さんが慌てて私の手を取る。

「待って、今のは完全に向こうからで――」

「……ほっぺにキスって、何なのそれ!」

内心モヤモヤが爆発しそうになる。

だって、新婚旅行中だよ?
私の前で、他の女の子にキスされるって、どういうこと!?

「おい、ストップ!」

律さんが金髪女性の前に回り込み、真剣な顔で言った。

「My wife is jealous. So please, don’t do that again.」

すると彼女は、少し驚いたように目を見開いて──やがてくすっと笑った。

「I understand. She loves you so much.」

そして私の方を見て、小さく手を振る。

「Sorry. Have a sweet honeymoon.」

去っていく彼女を見送りながら、律さんが私の肩をそっと抱いた。

「……ごめん。油断した。」

「もう……律さん、モテすぎ。」

「俺が悪いのか?」

「悪くはないけど……でも許さない。」

そう言って拗ねてみせた私を、律さんはぎゅっと抱きしめた。

「……じゃあ、しっかり“俺の気持ち”を証明するよ。」

そう囁かれて、今度は顔が真っ赤になった。

やっぱりこの人には、勝てない。

私は肩まで水に浸かりながら、律さんにぴったりと抱きつかれていた。

まるで私の背中に張りつくようにして、ずっと離れようとしない。

「律さん……人が見てるってば……」

そう言いながら振り返ると、向こうからカップルがすれ違いざまにからかってくる。

「Hugh!」
「They’re so in love!」

クスクスと笑いながら通り過ぎていくカップルに、私は思わず顔を赤らめた。だけど──

「Naturally!」

律さんはなんの照れもなく、むしろ誇らしげに即答する。

その声がやけに自信に満ちていて、私は思わず吹き出しそうになる。
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