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第4章 仮面夫婦説
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「朝倉さん、なんといいますか……」
滝君が言いにくそうに言葉を探していると、部長がズバッと口を挟んだ。
「新婚さんって雰囲気、ないんだよな。」
「へ?」
「仕事ばっかりしてるし。朝も夜も遅いし。ほんとに一緒に暮らしてるのか?って。」
「いや、ちゃんと暮らしてます!玄関でキスしてます!っていうか、今朝なんて――」
はっ、と口を押さえる。
……しまった。またやらかした。
部長がニヤついた顔で言った。
「何、朝からイチャついてきたのか?」
私は黙って下を向く。だって……図星だし。
すると部長がふっと遠くを見るような目になった。
「俺にもあったな……そういう時期。」
「部長……」
滝君がそっと部長の背中を摩った。
「うちも……遠い昔に。」
なんかしみじみしてるけど、その“昔”って、どれくらい前なんだろう。
私はぼんやり思う。いつか律さんも、こんな風に懐かしむ日が来るのかな。
その時、素朴な疑問が浮かんだ。
「ねえ、男の人って、そんなにイチャつくのが大事なんですか?」
その瞬間、部長の目がギラッと光った。
「大事だ!!」
何その即答と、無駄な熱量!
「男にとって、妻とイチャつけるというのはな――」
部長は、スーツの袖をまくりながら力説する。
「俺はイケてるっていう、自信の証なんだ!」
「証って……なにそれ、バッジみたいに言わないでください。」
「いやマジだぞ!イチャつかせてもらえるってことは、まだ男として現役ってことだからな。」
部長が拳を握って語る姿に、なんだか胸がいっぱいになる。
そして、私はふっと微笑んで言った。
「でも、うちの旦那は、そんなことしなくてもイケてますけど。」
「おおっと?」
部長と滝君が声を揃えた。
……やば。思わずのろけた。
でも、いいの。
だって本当に、私の旦那は“そのままでもイケてる”んだから。
夜、家に帰って律さんにその話をした。
「今日、私達は疑似結婚なんじゃないかって言われた。」
ソファーでビールを飲んでいる律さんが吹き出しそうになった。
「疑似結婚⁉」
律さんがハイトーンボイスで驚く。
「なんか、新婚の雰囲気がないって。」
私も律さんの隣に座ってビールを飲んだ。
「雰囲気がないって、俺達そんな冷えてるかな。」
「うーん。なんかね、イチャつくのが大事だって言われた。」
律さんは、ビールをもう一口飲んでから、ぽつりと言った。
「イチャつくのが大事……か。なるほどね。」
「うん。部長が言ってた。“妻とイチャつけるってことは、俺はまだイケてるっていう自信の証なんだ”って。」
律さんが吹き出した。
「なんだそれ、部長さん熱いな。でも……間違ってないかも。」
「え?」
「俺もさ、千尋が甘えてくれると、やっぱり嬉しいし、男として見られてるんだって思える。」
そう言って、律さんは私の手をそっと握った。
滝君が言いにくそうに言葉を探していると、部長がズバッと口を挟んだ。
「新婚さんって雰囲気、ないんだよな。」
「へ?」
「仕事ばっかりしてるし。朝も夜も遅いし。ほんとに一緒に暮らしてるのか?って。」
「いや、ちゃんと暮らしてます!玄関でキスしてます!っていうか、今朝なんて――」
はっ、と口を押さえる。
……しまった。またやらかした。
部長がニヤついた顔で言った。
「何、朝からイチャついてきたのか?」
私は黙って下を向く。だって……図星だし。
すると部長がふっと遠くを見るような目になった。
「俺にもあったな……そういう時期。」
「部長……」
滝君がそっと部長の背中を摩った。
「うちも……遠い昔に。」
なんかしみじみしてるけど、その“昔”って、どれくらい前なんだろう。
私はぼんやり思う。いつか律さんも、こんな風に懐かしむ日が来るのかな。
その時、素朴な疑問が浮かんだ。
「ねえ、男の人って、そんなにイチャつくのが大事なんですか?」
その瞬間、部長の目がギラッと光った。
「大事だ!!」
何その即答と、無駄な熱量!
「男にとって、妻とイチャつけるというのはな――」
部長は、スーツの袖をまくりながら力説する。
「俺はイケてるっていう、自信の証なんだ!」
「証って……なにそれ、バッジみたいに言わないでください。」
「いやマジだぞ!イチャつかせてもらえるってことは、まだ男として現役ってことだからな。」
部長が拳を握って語る姿に、なんだか胸がいっぱいになる。
そして、私はふっと微笑んで言った。
「でも、うちの旦那は、そんなことしなくてもイケてますけど。」
「おおっと?」
部長と滝君が声を揃えた。
……やば。思わずのろけた。
でも、いいの。
だって本当に、私の旦那は“そのままでもイケてる”んだから。
夜、家に帰って律さんにその話をした。
「今日、私達は疑似結婚なんじゃないかって言われた。」
ソファーでビールを飲んでいる律さんが吹き出しそうになった。
「疑似結婚⁉」
律さんがハイトーンボイスで驚く。
「なんか、新婚の雰囲気がないって。」
私も律さんの隣に座ってビールを飲んだ。
「雰囲気がないって、俺達そんな冷えてるかな。」
「うーん。なんかね、イチャつくのが大事だって言われた。」
律さんは、ビールをもう一口飲んでから、ぽつりと言った。
「イチャつくのが大事……か。なるほどね。」
「うん。部長が言ってた。“妻とイチャつけるってことは、俺はまだイケてるっていう自信の証なんだ”って。」
律さんが吹き出した。
「なんだそれ、部長さん熱いな。でも……間違ってないかも。」
「え?」
「俺もさ、千尋が甘えてくれると、やっぱり嬉しいし、男として見られてるんだって思える。」
そう言って、律さんは私の手をそっと握った。
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**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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