御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました【完結】

日下奈緒

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第4章 仮面夫婦説

「俺たちは、ちゃんと恋愛してるし、夫婦としても上手くいってると思ってたけど……外から見たら、そうは見えないんだな。」

「うん。でも、それってなんか悔しいよね。」

「だったら、ちゃんと見せつけてやるか。」

「見せつける?」

「そう。明日から、職場でも分かりやすく“イチャついてる夫婦”って感じでいこう。堂々と。……手、繋いで出勤するとか?」

「ええ⁉会社に行く途中で?!」

「いいじゃん。俺、むしろやってみたいんだけど。」

私は笑ってしまった。

「じゃあ……お弁当作ってあげる。」

「それ、最高。俺、絶対職場で“うちの嫁がさ~”って言うから。」

「もう、律さんったら……」

私は笑いながらも、ほんのり顔が熱くなっていくのを感じた。

“疑似結婚”なんて言わせない。

私たちはちゃんと、恋してる夫婦なんだから。

翌朝、私は張り切ってお弁当作り。

「よし、三色そぼろできた。」

そぼろに炒り卵、ほうれん草のナムル。バランスも見た目もばっちり。

「おっ、愛妻弁当だね。」

スーツ姿の律さんがキッチンに現れた。

「はい、楽しみにしててください。」

お弁当箱を差し出すと、律さんは嬉しそうに受け取って笑った。

その笑顔に見送られて、私も気分よく出勤。

オフィスに入ると、さっそく滝君が声をかけてきた。

「朝倉さん、今日機嫌いいですね。」

「うん、まあね。」

すると滝君がすっと近づいてきて、耳打ちするように呟いた。

「……最近も、すごいんですか?」

「は?」

「いや、この前も玄関でなされたって噂がありましたし。最近はどこで“致して”いるのかな~と。」

私は咳払いを一つして、冷静に言った。

「してないけど。」

滝君は目を丸くした。

「新婚なのに?」

滝君のその一言に、私は肩をすくめて答えた。

「いや、元々そんなにするものじゃないでしょ?」

すると、滝君が目を見開いて驚いた。

「新婚の時にしなくて、いつするんですか。」

「え?」

私は思わず滝君の顔を見つめてしまった。

「俺、新婚の時は“夜のルーティン”にしてましたよ。」

「……ルーティン⁉」

まさかそんなにお盛んだったなんて。胸に小さな衝撃が走る。

「だって、好きな女が毎日横で寝てるんですよ? しないなんて、あり得ないでしょ。」

さらっと言うその言葉が、なんだか妙に刺さる。

「そ、そんな堂々と……よく言えるわね。」

「いやいや、新婚の醍醐味ってそこじゃないですか? 結婚して何が変わるって、夜ですよ、夜。」

あきれて笑いながらも、私はちょっとだけ考えてしまった。

うち、最近──ちゃんとしてないかも。

……帰ったら、ちょっと誘ってみようかな。
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