「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています 【完結】

日下奈緒

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第十章 二人で結婚へ ②

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「私……嬉しいです。皇子は、あなたのことを深く想っていたのですね。旅の間、何度もセレナ様の話をなさっていました。」

「……そうだったの?」

「ええ。……少し、羨ましくなるほどに。」

一瞬、風の音にまぎれて、彼女の言葉が少しだけ寂しそうに聞こえた。

でもすぐに、ティアナは柔らかく笑った。

「でも、私が信じたいのは、貴女と皇子の“本物の絆”です。それを見られるのなら、私は聖女として、心から祝福できます。」

私は思わず、彼女の手をぎゅっと握り返していた。

「ありがとう、ティアナ様……貴女にそう言ってもらえて、本当に嬉しい。」

ティアナは頷いたあと、小さく息を吐いて、こう付け加えた。

「でも……もし、皇子が泣かせるようなことがあったら、私が叱りますから。」

「ふふ、それは心強いわね。」

その夜、私たちは静かに笑い合った。

この国の未来に寄り添う者として、そして――女同士として。

結婚式前夜。

夜の宮殿は静かで、どこか神聖な空気が漂っていた。

私は新たに与えられた部屋の扉を開けると、そこにはカイルがいた。

その姿を見た瞬間、張り詰めていた緊張が、ふわりとほどけていくのを感じた。

「セレナ、来てくれたんだね。」

「うん。今日から、ここが私の部屋になるのね。」

カイルは微笑みながら、部屋の奥へと手を差し伸べてくれる。

彼の手を取ると、その先には美しく仕立てられたウェディングドレスがあった。

「これが……」

純白のドレスには、丁寧に刺繍があしらわれていた。

母と父が、私の幸せを願って仕立ててくれた、たった一つのもの。

「本当に、綺麗だね。君によく似合う」

カイルがそっと、私の肩に手を添える。

その隣には、彼が明日着る予定の、皇太子としての正装が並んでいた。濃紺に金糸が縫い込まれた、格式高い礼服。

「……本当はね。」

カイルはドレスと礼服を交互に見つめながら、少しだけ遠くを見つめるような目で言った。

「これを着て結婚式を挙げるのは、兄上だと思っていたんだ。子供の頃から、ずっとそう思ってた。兄上が皇太子で、王になるんだって。だから俺は、剣に生きるって……」

そう言って、ふっと笑う。

「まさか、自分がこの礼服に袖を通す日が来るとは、思わなかったよ。」

「カイル……」

私はそっと、彼の手を取った。

「でも、今のカイルは、きっと誰よりもその服が似合うわ。兄上が認めてくれたように。私も、心からそう思う。」

彼の目が、私の言葉を真っ直ぐに受け止める。

「ありがとう。……セレナが、そう言ってくれるなら。」

静かに、私の額にキスを落としたカイル。

その優しさに、心の奥がぽっと温かくなった。

「明日はきっと、いい日になる。君と迎えられるなら、それだけで最高の日だ。」

私は頷いた。

「私も……明日、あなたの隣に立てるのが嬉しい。」

こうして、私たちは明日を想いながら、そっと手を重ね合った。

――それは、約束の夜。
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