社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第4話 二人の間の壁

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すると芹香が、話題を変えた。

「ところで最近。礼奈、綺麗になったんじゃない?」

「えっ?」

思わず頬に手を当ててしまった。

「久しぶりに会ったけれど、びっくりしたよ。」

「そ、そうかな。」


女は恋をすると、綺麗になるって言うけれど、本当なのかな。

「何?好きな人でもできた?」

私は返事をせずに、ジュースを飲んだ。

「教えてよ。礼奈。」

「芹香だって、好きな人いるけど、教えてくれないじゃん。」

「教えるよ、礼奈だったら。」


「じゃあ、どんな人?」

芹香は頬杖をついて、楽しそうに考えている。

「これ、言っていいのかな。宅配便してる人なんだ。」

「えっ?一般の人?」

「何それ。私が好きになるのに、そういう身分とか、関係ないでしょ。」

芹香はちょっと不機嫌になった。

「ごめん。でも、もっとお金持ちの人を選ぶと思っていたから。」

確かにそれは、勝手な私の思い込みなのかもしれない。

「きっかけは?」

「宅配便届けに来て、たまたま私が出て、意気投合してって感じ?」

「付き合うの?」

「ふふふ。たぶん。」

芹香は嬉しそうだ。

人の幸せそうな笑顔を見ると、自分も幸せに感じるのは、どうしてなんだろう。


「早く告白しちゃいなよ。」

私は芹香を突っついた。

「ええ?私から言うの?そう言うのは、男の人から言うんじゃないの?」

「今は、そう言うの男とか女とか、関係ないよ。」

芹香が告白するだなんて、想像つかないけれど、本人が好きなんだから仕方ない。


「ちょっと、私の話ばかりじゃなくて、礼奈の話も聞かせてよ。」

「私?私はね。」

釣られて言おうとして、ハッとした。

「どうしたの?」

「……ううん。普通の人だよ。」

「普通じゃ、分かんないじゃん。何の仕事している人なの?」

私の頭の中に、信一郎さんの顔が浮かんだ。

「……社長さん。」

「えっ?」

「ははは。小さい会社なんだけどね。」

私は芹香の前じゃ、誤魔化してばかりだ。


「いいじゃない、素敵じゃない。」

「うん。」

「それでそれで?」

芹香があまりにものせるから、私も口を開いてしまった。

「……優しくて、私の事お淑やかなだって、言ってくれて。」

「いいじゃない。」

「そうかな。」

「お淑やかって、誉め言葉でしょ。礼奈の事、気に入っているんじゃない。」

芹香の言葉に、嬉しくなる。

やっぱり信一郎さん、私の事いいと思ってくれているのかな。


「告白しなよ。」

「えっ……」

「好きだって言っちゃいなよ。」

どうしよう。もう付き合っているって言った方がいいのかな。

「そう言う、芹香は好きだって言わないじゃん。」

「私の方は、そろそろ言ってくれそうだからね。」
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