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第1部 売れ残り令嬢と、成り上がり伯爵の縁談
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そして私は年頃を迎え、舞踏会や社交の場に出るようになった。
周囲の令嬢たちは次々と婚約者を決め、華やかな笑顔で指輪を披露していた。
私も何度か父に連れられ、貴族のご子息たちと引き合わせられた。
けれど――そこには、いつも同じ壁があった。
いくつ婚約話が持ち上がっても、最終的に相手側が断ってくるのだ。
理由は明白だった。
そばかす。
「惜しいお嬢様だとは思いますが……」
「品も教養も申し分ないのですが」
言葉を濁しながらも、彼らの視線はいつも、私の頬を見ていた。
まるでそこに、汚れでもあるかのように。
私は何度も鏡を見た。
それでも、昔から変わらないそばかすが映るだけだった。
努力ではどうにもならないもので、人はこんなにも冷たくなるのだと――
私はその時、はじめて知った。
そして──私には、密かに想いを寄せていた人がいた。
アドリアン・セレスト・ヴァレンティウス。
名門ヴァレンティウス公爵家の御曹司。
私たちは幼いころから顔を合わせてきた。家同士も古くから親交があり、年齢も近い。
だから、いつか自然と彼の隣に立てる日が来ると信じていた。
私は、アドリアンと結婚するものだと思っていた。
それはきっと、私にとっての初恋だった。
彼の柔らかい金の髪と、涼しげな灰色の瞳。
立ち居振る舞いは完璧で、いつでも人に優しく、でもどこか近寄りがたい。
そんな彼が、私にだけふと笑ってくれたことがあった。
些細な仕草や声が、今も胸に残っている。
だけど――私の”そばかす”が、彼と私の距離を、いつの間にか決定的に引き離していたのだと、あとになって知った。
彼が私に近づかなくなったのは、私の中身のせいじゃなかった。
私の「顔」のせいだったのだ。
それからというもの、私は貴族の子息たちと顔を合わせるのが怖くなった。
目を見れば分かってしまうから――
「この人も私のそばかすを見て、心の中で笑っているのだ」と。
だから私は、目を伏せた。
うつむき加減に話し、言葉も控えめにした。
そうすれば、私の顔をじっと見られずに済むから。
けれど、その態度は彼らに「自信のない、陰気な令嬢」と映ったらしい。
言葉少なで、笑わず、声も小さな私は、次第に「つまらない」「愛想がない」と噂されるようになった。
そうなると、婚約の話が出ても、断られるのは時間の問題だった。
貴族の男たちは皆、表向きは礼儀正しく微笑みながらも、私に興味を示さなかった。
「他にふさわしい令嬢がいる」と、静かに去っていく。
それでも私は、また次の紹介に臨まなければならなかった。
「おまえのためを思って」と言う両親の言葉に、逆らう術を持たなかったから。
本当は、愛されたいと思っていた。
たったひとりでいい、そばかすの私を、美しいと言ってくれる人に――出会いたかった。
周囲の令嬢たちは次々と婚約者を決め、華やかな笑顔で指輪を披露していた。
私も何度か父に連れられ、貴族のご子息たちと引き合わせられた。
けれど――そこには、いつも同じ壁があった。
いくつ婚約話が持ち上がっても、最終的に相手側が断ってくるのだ。
理由は明白だった。
そばかす。
「惜しいお嬢様だとは思いますが……」
「品も教養も申し分ないのですが」
言葉を濁しながらも、彼らの視線はいつも、私の頬を見ていた。
まるでそこに、汚れでもあるかのように。
私は何度も鏡を見た。
それでも、昔から変わらないそばかすが映るだけだった。
努力ではどうにもならないもので、人はこんなにも冷たくなるのだと――
私はその時、はじめて知った。
そして──私には、密かに想いを寄せていた人がいた。
アドリアン・セレスト・ヴァレンティウス。
名門ヴァレンティウス公爵家の御曹司。
私たちは幼いころから顔を合わせてきた。家同士も古くから親交があり、年齢も近い。
だから、いつか自然と彼の隣に立てる日が来ると信じていた。
私は、アドリアンと結婚するものだと思っていた。
それはきっと、私にとっての初恋だった。
彼の柔らかい金の髪と、涼しげな灰色の瞳。
立ち居振る舞いは完璧で、いつでも人に優しく、でもどこか近寄りがたい。
そんな彼が、私にだけふと笑ってくれたことがあった。
些細な仕草や声が、今も胸に残っている。
だけど――私の”そばかす”が、彼と私の距離を、いつの間にか決定的に引き離していたのだと、あとになって知った。
彼が私に近づかなくなったのは、私の中身のせいじゃなかった。
私の「顔」のせいだったのだ。
それからというもの、私は貴族の子息たちと顔を合わせるのが怖くなった。
目を見れば分かってしまうから――
「この人も私のそばかすを見て、心の中で笑っているのだ」と。
だから私は、目を伏せた。
うつむき加減に話し、言葉も控えめにした。
そうすれば、私の顔をじっと見られずに済むから。
けれど、その態度は彼らに「自信のない、陰気な令嬢」と映ったらしい。
言葉少なで、笑わず、声も小さな私は、次第に「つまらない」「愛想がない」と噂されるようになった。
そうなると、婚約の話が出ても、断られるのは時間の問題だった。
貴族の男たちは皆、表向きは礼儀正しく微笑みながらも、私に興味を示さなかった。
「他にふさわしい令嬢がいる」と、静かに去っていく。
それでも私は、また次の紹介に臨まなければならなかった。
「おまえのためを思って」と言う両親の言葉に、逆らう術を持たなかったから。
本当は、愛されたいと思っていた。
たったひとりでいい、そばかすの私を、美しいと言ってくれる人に――出会いたかった。
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