家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

文字の大きさ
1 / 101
第1部 売れ残り令嬢と、成り上がり伯爵の縁談

しおりを挟む
私はエルバリー公爵家という、由緒正しき名門に第一公女として生を受けた。

病弱でもなく、躾や教育にも恵まれ、貴族令嬢としての教養も人並み以上に身につけてきた。

しかし、私にはひとつだけ、人には言えない大きな悩みがあった。

――そばかす。

幼い頃から私の頬には、小さな斑点がいくつも浮かんでいた。

目立たぬようにと化粧を重ねても、近くで見ればはっきりと分かってしまう。

それは家族にとっても、まるで「不名誉」のように扱われた。

「なぜクラリスだけ、あんな顔なのかしら」

「お義姉様にも、そんな特徴はなかったはずよ」

そんな声を、小さい頃から何度も耳にしてきた。

母は気の毒そうな顔をしながらも、私を慰めてくれることはなかったし、

父も「もう少し見映えが良ければ」と眉をひそめるだけだった。

だが、実を言えば私は、自分のそばかすをそこまで気に病んではいなかった。

幼い頃から頬にあったせいか、それが自分の一部だと思っていたし、家族の目が冷たくても、「まあ仕方ないわね」と受け流す癖がついていた。

それでも――私が“劣った娘”だと痛感させられた出来事がある。

あれは、貴族子女が通う教育機関――スクールに通っていた頃のことだった。

私は皇太子殿下と、よく一緒に遊んでいた。

特別仲が良かったわけではないけれど、共に授業を受け、庭園で話し、馬術の稽古も並んでいた。

当時の私は、それがごく自然なことだと思っていた。

だって、エルバリー家は王国でも指折りの名家であり、代々、王妃や王族に連なる婚姻も多かった。

私が皇太子と親しくすることに、誰も異を唱える者はいなかったのだ。

だが、成長するにつれて――私は徐々に皇太子殿下との距離を置かれるようになった。

最初は忙しくなったのだろうと思っていた。

けれど、顔を合わせても会釈だけで会話はなくなり、気づけば周囲の視線が私にだけ冷たいことにも気がついた。

なぜ?

なにか私、気に障ることでもしたのかしら?

悩みに悩んだ末、ある日の放課後、勇気を出して皇太子殿下に声をかけた。

――なぜ、私を避けるのかと。

「……クラリスが傷つくのが嫌だったから、言わなかった」

皇太子はそう前置きしてから、静かに真実を告げた。

「君のそばかすが……王妃には相応しくない、と言われたんだ。王族の伴侶には、完璧な容姿が必要だと。僕は、悔しかったよ」

その瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。

そばかす――私がずっと気にも留めず、共に生きてきたこの斑点が、私の未来を閉ざす理由になるなんて……思いもしなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される

黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」 無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!? 自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。 窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!

satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。  私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。  私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。  お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。  眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

婚約破棄されて辺境に追放された悪役令嬢の私、前世の農業知識を活かしてスローライフを満喫!してたら、村人たちに女神と崇められ国を作ることに!

黒崎隼人
ファンタジー
断罪イベントで婚約破棄され辺境追放! 「待ってました!」とばかりに、乙女ゲームの悪役令嬢に転生したエリアーナは、前世の農業知識を手に念願のスローライフを目指す。 石ころだらけの痩せた土地を堆肥や輪作で豊かな畑に変え、未知の作物で村を豊かにしていくエリアーナ。不愛想だけど実直な青年カイや素朴な村人たちと信頼を築く彼女の元に、やがて飢饉に苦しむ祖国から、かつての婚約者である王子が助けを求めにやってくる。 「国を救ってほしい」ですって? 申し訳ありませんが、お断りいたします。 私の居場所は、愛する人々と築いたこの緑豊かな大地。ざまぁも復讐も興味はないけれど、私たちの平和を脅かすなら話は別です! 知識チートで運命を切り開く、爽快逆転・建国ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...