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第7部 妹の終焉と、家族の始まり
⑧
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「何を読んでいるの?」私は紅茶を手に問いかけた。
「この前届いた歴史書の続きだよ。ロマニア戦争の記録だ。」
声に張りはあるのに、どこか穏やかで静かな調べのよう。
読書中の彼は、まるで別の世界に旅しているみたいだ。
ページをめくる指先の所作すら美しく、私はしばしその横顔に見入っていた。
「こうして静かに本を読めるのは、君のおかげだ。」
ふと視線をこちらに向け、セドリックが微笑む。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
静かな午後。文字と共に過ごすセドリックの姿は、私の何よりの安らぎだった。
ふとドアに目をやると、優雅な所作でお母様が入ってきた。
「お母様。」
私は立ち上がり、微笑んだ。
セドリックの母――グレイバーン伯爵夫人は、ルシアの騒動の最中も一言も文句を言わず、静かに私たちを見守ってくださっていた。
「クラリス、いい本が入ったのよ。」
手には装丁の美しい物語本。
表紙には、異国の姫と騎士の恋物語とあった。
「まあ……ありがとうございます、お母様。」
私が受け取ると、伯爵夫人はふっと微笑む。
「ところで、二人は――子供は作らないの?」
思わぬ問いに、私は手を止めた。
セドリックも、読んでいた本から目を上げた。
「まあ、焦る必要はないけれど……あなた達のように仲睦まじい夫婦に、可愛い子がいたら素敵でしょう?」
その言葉は穏やかで、押しつけがましさはなかった。
私は顔を赤くしながら、そっとセドリックに視線を向けると、彼は静かに微笑んで、私の手を取った。
「そうですね……いつかきっと。」
私はそう答えた。
「貴族の家というのは、因果なものね……」
お母様はそう呟くと、静かに窓辺へと歩み寄った。
午後の柔らかな陽射しが、薄絹のカーテン越しに降り注ぎ、その横顔を浮かび上がらせる。
「伯爵家を継がせる跡取りが必要になる。そうでなければ、家が続かないから。」
その声には、重く沈んだ響きがあった。
私は思わず、セドリックに目をやった。彼もまた、真剣な面持ちで母の背中を見つめている。
「……あの子も、そうだった。」
お母様の瞳に、一瞬だけ過去の情景が映ったような気がした。
「セドリックのお姉さま……」
私が小さく尋ねると、お母様は静かにうなずいた。
「結婚してからというもの、あの子は“跡継ぎを”と向こうの母親にせがまれて……」
「この前届いた歴史書の続きだよ。ロマニア戦争の記録だ。」
声に張りはあるのに、どこか穏やかで静かな調べのよう。
読書中の彼は、まるで別の世界に旅しているみたいだ。
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「こうして静かに本を読めるのは、君のおかげだ。」
ふと視線をこちらに向け、セドリックが微笑む。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
静かな午後。文字と共に過ごすセドリックの姿は、私の何よりの安らぎだった。
ふとドアに目をやると、優雅な所作でお母様が入ってきた。
「お母様。」
私は立ち上がり、微笑んだ。
セドリックの母――グレイバーン伯爵夫人は、ルシアの騒動の最中も一言も文句を言わず、静かに私たちを見守ってくださっていた。
「クラリス、いい本が入ったのよ。」
手には装丁の美しい物語本。
表紙には、異国の姫と騎士の恋物語とあった。
「まあ……ありがとうございます、お母様。」
私が受け取ると、伯爵夫人はふっと微笑む。
「ところで、二人は――子供は作らないの?」
思わぬ問いに、私は手を止めた。
セドリックも、読んでいた本から目を上げた。
「まあ、焦る必要はないけれど……あなた達のように仲睦まじい夫婦に、可愛い子がいたら素敵でしょう?」
その言葉は穏やかで、押しつけがましさはなかった。
私は顔を赤くしながら、そっとセドリックに視線を向けると、彼は静かに微笑んで、私の手を取った。
「そうですね……いつかきっと。」
私はそう答えた。
「貴族の家というのは、因果なものね……」
お母様はそう呟くと、静かに窓辺へと歩み寄った。
午後の柔らかな陽射しが、薄絹のカーテン越しに降り注ぎ、その横顔を浮かび上がらせる。
「伯爵家を継がせる跡取りが必要になる。そうでなければ、家が続かないから。」
その声には、重く沈んだ響きがあった。
私は思わず、セドリックに目をやった。彼もまた、真剣な面持ちで母の背中を見つめている。
「……あの子も、そうだった。」
お母様の瞳に、一瞬だけ過去の情景が映ったような気がした。
「セドリックのお姉さま……」
私が小さく尋ねると、お母様は静かにうなずいた。
「結婚してからというもの、あの子は“跡継ぎを”と向こうの母親にせがまれて……」
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