家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第7部 妹の終焉と、家族の始まり

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しかも、式の最中、決定的な出来事が起きた。

誓いの言葉の場面だった。

「ルシア・エルバリー、あなたはレオン・カザリスを夫として、愛し、尊敬し、支え合うことを誓いますか?」

牧師の問いに、ルシアは沈黙したまま、視線を彷徨わせた。

「……どうしました?」

ざわつく会場の空気。レオンが不安そうにルシアを見つめる。

「……はい。」と言えばいいだけなのに、ルシアの口から出たのは――

「……努力します。」

その瞬間、教会内の空気が凍りついた。

「えっ……」とレオンが顔をこわばらせた。

「誓ってくれるだろ、ルシア……」彼は必死だった。

だが、ルシアはため息混じりに言った。

「だって、こんな質素な結婚しかできないあなたを、愛せって言われたって……」

会場がざわつく。

私は静かに席を立ち、誓約の場に立つ妹のもとへと歩み寄った。ざわつく会場の中、私の声だけがはっきりと響いた。

「観念しなさい、ルシア。」

その言葉にルシアは肩を震わせ、口を開きかけては閉じ――そしてようやく、小さな声で呟いた。

「……誓います。」

どうにか式は成立した。だが、参列者たちの表情はどこか冷ややかだった。

ああ、これからこの二人の結婚生活はどうなるのかしら。

少なくとも、愛や思いやりから始まるような穏やかな日々ではないだろう。

それでも、今日からルシアは正式にカザリス伯爵夫人だ。

彼女にとって、それが希望の始まりとなるのか、さらなる試練の始まりとなるのかは……彼女次第だった。

無事にルシアの結婚も終わり、ようやく私とセドリックに穏やかな時間が戻ってきた。

応接間の窓からは、庭で侍女たちが楽しそうにお茶会をしている姿が見える。

笑い声が風に乗って届いてくる。

「今日も侍女たちは、お茶会を楽しんでいるわ。」

私がそう呟くと、向かいのソファで本を読んでいたセドリックが、ふと顔を上げて微笑んだ。

「いい光景だな。」

その声はいつもより柔らかく、まるで家の空気さえも温かくするようだった。

彼がこうしてゆったりと過ごしている姿を見ると、私の心も自然とほどけていく。

午後の日差しが、窓越しに柔らかく差し込む。

セドリックはお気に入りの肘掛け椅子に腰を下ろし、厚めの革装丁の本を膝に広げていた。

眼鏡の奥の瞳がページをゆっくり追い、時折、口元にわずかな笑みが浮かぶ。
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