家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第7部 妹の終焉と、家族の始まり

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言葉を選ぶように、お母様はそっと息を吐く。

「結局、あの子はお産で命を落とした。まだ若かったのに……」

部屋の空気が、しんと静まり返った。

跡取りの名の下に、ひとつの命が散っていった。

その哀しみが、今もお母様の中で消えていないのだと知った。

「私は怖いわ。クラリスが無事に出産できるかどうか……」

お母様の声は、かすかに震えていた。

強く気丈に見えるその人が、今はただ、ひとりの母として、私のことを案じてくれている。

「大丈夫ですよ。私は丈夫ですから。」

そう言って、私はそっとお母様を抱きしめた。

彼女の身体は細く、あたたかく、そして優しかった。

まるで本当の母親のように、私を包んでくれる存在――。

「クラリス……」

お母様の瞳に、涙がにじんでいた。

こんなにも心から、私のことを気にかけてくれている。

それだけで、胸がいっぱいになる。

私は思った。

この人のためにも、セドリックのためにも、そして自分のためにも――新しい命をこの世に迎えたい。

「ありがとう、クラリス。あなたのような娘ができて、本当に幸せだわ。」

その言葉に、私は静かに微笑んだ。

きっと大丈夫。私は、この家で、愛されて生きているから。


その夜。私は、自分からセドリックに近づいた。

彼はベッドで本を読んでいたが、私がそっと寄り添うと、すぐに本を閉じた。

「どうした?君から誘ってくれるなんて……興奮するね。」

唇を重ねると、セドリックは少しニヤついた。

だけど、私が真剣な目で見つめると、その表情はすぐに変わった。

「子供が欲しいの。」

そう言った私に、セドリックはわずかに不安そうな顔を見せた。

「子供……?」

「ええ。あなたの子供よ。」

彼はしばらく私の瞳をじっと見つめ、そして深く息を吐いた。

「そうか……本当に、そう思ってくれてるんだね。」

「ええ。あなたとだから、家族を作りたいと思えるの。」

次の瞬間、彼は優しく、けれど確かに私を抱き寄せた。そして、ベッドに身を沈めながら耳元で囁く。

「クラリス……君となら、きっと楽しい人生になる。」

私はうなずいた。あたたかい手のひら、胸の鼓動、熱を分け合う夜。

セドリックの吐息が、私の吐息と混ざり合った。

「クラリス……僕は、君以上に魅力的な女性を知らない。」

低く、熱を帯びた声。心に直接触れてくるようなその言葉に、私は胸がいっぱいになった。
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