家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第9部 公開処刑の晩餐会

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そして、王族方が私たちの席に近づいてくる。

品のある微笑みと、堂々たる姿勢。

そのすべてが、まるで物語の中の存在のようで、私は思わず憧れの眼差しを向けてしまった。

「そういえばさっき、セレンシア王女……誰かと話していなかった?」

セドリックがふと私に問いかける。

「実はね、ルシアとお話されていたの。」

「えっ?」セドリックが驚いた様子で眉を上げる。

「また何かしでかしたのか?ルシア……」

「そうなのよ。セレンシア王女を、レオンの愛人だって決めつけて……」

「なんだって?」

セドリックが眉をひそめた。

「王女は丁寧に否定してくださったけれど、周囲は驚いていたわ。王族を愛人呼ばわりなんて……」

「……ルシア、本当に貴族社会で生きる覚悟があるのか、心配になってきたな。」

彼の言葉に、私もただ黙って頷くしかなかった。

王族の一団は、ついに私たちの目の前までやって来ていた。

そしてついに、国王と王妃が私たちの前に立たれた。

威厳に満ちたその佇まいに、私は思わず背筋を伸ばした。

「グレイバーン伯爵。近頃の君の働き、目を見張るものがある。」

セドリックはすかさず一礼し、「ありがとうございます。身に余る光栄です」と答えた。

その声には緊張と誇りが混ざっていた。

まさか、国王自らが労いの言葉をくださるとは。私は胸がいっぱいになった。

すると王妃が、優しい笑みを浮かべて私に目を向けた。

「伯爵夫人の評判も素晴らしいわ。慎ましく、それでいて気品に溢れていると、宮廷でも噂になっているのよ。」

「もったいないお言葉を……」

私は思わず深く頭を下げた。


夢のような時間。私は、セドリックと共にこの場所に立てていることを、心から誇らしく思った。

するとその時、傍に控えていた皇太子殿下が一歩前に出て、堂々と進言した。

「父上、いかがでしょう。近頃のグレイバーン伯爵の功績を考えれば、しかるべき地位へ昇進させるべきでは。」

場が静まり返り、私は思わず息をのんだ。

セドリックも驚いた様子で、皇太子殿下を見つめている。

「そうだな……考えておこう。」

国王は場の空気を乱さぬよう、あくまで慎重な様子で答えた。

だがその表情はどこか含みを持ち、やがて近くまで来て、そっとセドリックに耳打ちした。

「昇進の件は、あとでゆっくり話そう。」

その瞬間、私は胸が熱くなり、隣のセドリックの腕を思わず掴んだ。

彼は少し驚いたように私を見てから、静かに微笑んだ。

――努力が報われた瞬間。

私は誰よりもこの人を誇りに思っていた。
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