家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第9部 公開処刑の晩餐会

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「だけど、こうなった以上、彼女の支えになれるのは、姉の私しかいない。」

そう思って、私は静かに彼女の背に近づいた。

「ルシア……」

そっと肩に手を添えようとしたその瞬間――。

「止めて!」

ピシャリと、ルシアの手が私の手を振り払った。

「お姉様が悪いのよ!」

「えっ⁉ 私⁉」

思わず問い返すと、ルシアの目には怒りと悔しさが滲んでいた。

「伯爵夫人なのに、公爵夫人たちと仲良くなって……だから、私も同じだと思ってしまったじゃない!」

「だって、エミリアとリリアンは、同級生よ?友人よ?」

「でも今は違う。あの人たちは“公爵夫人”で、私は“伯爵夫人”。違うのよ……身分が。」

ルシアの声が震えていた。

その言葉の奥にあるのは、嫉妬でも見栄でもない。

認めたくない現実への怒りと、自分だけが置いていかれるという孤独だった。

「あなたの言う通り、身分は違うわね。」

その声に振り返ると、エミリアとリリアンが私の傍に立っていた。

「でもクラリスは、きちんと礼節をわきまえているわ。あなたと違って。」

エミリアの言葉に、ルシアの顔が見る見るうちに真っ青になっていく。

「それに、身分を超えた友人を――あなた、ルシアは持っていないのかしら。」

リリアンが淡々と続けたその一言に、ルシアは唇を噛みしめてうつむいた。

私は、いたたまれなさに胸が痛んだ。

「さあ、クラリス。行きましょう。」

リリアンは私の手を取った。

私は頷きながらも、振り返らずにはいられなかった。

ルシアは一人でそこに立ち尽くしていた。

誰よりも誇り高く、誰よりも孤独な妹――

手を差し伸べたいのに、またすり抜けてしまう。

そんな寂しさが、私の心を締めつけた。

そして、会場にどよめきが走った。

王族の方々が、ゆったりとした足取りで入場してきたのだ。

その威厳に満ちた雰囲気に、会場の空気が一瞬にして引き締まる。

その中には、ルシアとかつて婚約していたアルバート王子の姿も。そしてさきほど一悶着あった、セレンシア王女の姿も見える。

王族たちは丁寧に、貴族たち一人一人へと声をかけながら、にこやかに歩みを進めていた。

「僕たちのところに来るまでに、王族の方々は疲れてしまうね。」

セドリックが笑いながら、私の元へ戻ってきた。

「大丈夫よ。伯爵相手に、そんなに長く話すなんてことはないでしょう。」

私は小さく微笑んだ。

でも本当は、アルバート王子とルシアがどんな顔で顔を合わせるのか、そればかりが気になっていた。

どうか、これ以上の恥が重なりませんように――

私はそう祈るような気持ちで、ルシアの方を見つめていた。
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