家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第9部 公開処刑の晩餐会

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「レオンに愛人がいると疑っているのなら、もっと違うところに気を張るべきですね。」

王女はそれだけ言うと、何事もなかったかのようにルシアから離れた。

すぐにレオンがその傍らに立ち、まるで最初からそうであったかのように、彼女を護衛するかのように歩き出した。

その後ろ姿を、ルシアは呆然と見送っていた。

確かセレンシア王女は、かつてルシアが婚約していたアルバート王子の妹だったはず。しかも、ルシアより年下。

「年下のくせに……」ルシアはぽつりとつぶやいた。

でもその年下の王女が、自分よりもずっと余裕を持って振る舞い、周囲の視線を味方にしていた。

周囲からクスクスと忍び笑いが聞こえた。

その音に、ルシアは居たたまれなくなり、思わず視線を泳がせた。――すると、一人の見知った女性が目に入る。

「……あっ、ベリンダ。」

懐かしい名前を口にしながら、ルシアは少し安堵した表情を浮かべた。

スクール時代の同級生。気心の知れた仲間だと思っていた。

「あなたも来ていたのね。ベリンダ!」

気を取り直し、明るく声をかけるルシア。

だが、ベリンダは一瞬ルシアを見ただけで、そっと背中を向けた。

「……ベリンダ?」

ルシアの声には、戸惑いが滲む。そんな彼女に、ベリンダは冷ややかに言い放った。

「私は“公爵夫人”よ。気安く声をかけないでいただけるかしら?カザリス伯爵夫人。」

まるで、その差を誇示するように、わざとらしく「公爵夫人」という言葉を強調して。

「えっ……」

その場に立ち尽くすルシア。笑い声は止むことなく、周囲の貴族たちはあからさまに彼女を見ていた。

胸の奥がきゅっと締めつけられる。

まるで、自分だけが過去に取り残されているかのようだった。

「これが……本当の、貴族階級なのね。」

ルシアは呟いた。

セドリックが伯爵として広く尊敬されているから、グレイバーン伯爵家の夫人として今の立場がある。

それは分かっていた。けれど――本来の自分は、ただの公爵家の娘。

いや、今ではその肩書きさえ“過去のもの”だった。

「クラリス、気にしているの?」声をかけてきたのはリリアンだった。

私はそっと彼女を見つめた。

「まあ、公爵令嬢に気安く話しかけたルシアは、そう言われて当然よね。」リリアンの言葉は、どこか冷ややかだった。

胸の奥に、小さな棘が刺さる。

「だけどそれは、ルシアの日頃の態度のせいよ。」

リリアンはあくまで冷静だった。

淡々と、そしてはっきりと。

庇うわけでもなく、ただ事実を言っているような口調で。

私は気づいた。貴族社会では、“過去の栄光”より、“現在の振る舞い”こそがものを言うのだと。
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