エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒

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幸せとは

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お義母さんが帰った後、圭也さんが私の疲れた顔を見て、慰めてくれた。

「ごめんな。母親があんな事を言って。」

「ううん。お義母さんも、産まれたら分かってくれるよ。」

けれど、お義母さんの気持ちは、これで終わらなかった。


数日後、郵便で届いた安産のお守り。

それも、色はブルーだった。

私は、頭を掻いた。

嬉しいんだか、嬉しくないんだか、分からない。

普通もっと、お姑さんから安産のお守りを貰ったら、嬉しいのでは?


そして、また数日後。

今度は、お義母さんの手書きのノートが送られてきた。

「何だろう、これ。」

ペラペラと捲ってみると、ぎっしりと何かが書いてあった。

読んでみると、寝る時にこういう体位で寝ると男の子になる、と書いてあったり。

早々に男の子らしい名前を付けて、お腹に向かって呼び続けるとか。

そこには、まだ胎児のわが子を、何とか男の子にさせようとする方法が書かれていた。


「ウチの母親、また何か送ってきたの?」

私は、お義母さんの手書きのノートを、無言で渡した。

それを読んで、同じように引いていた圭也さん。

「気にするなって。捨てようか、こんなノート。」

「いいよ。せっかく書いてくれたノートだもん。」

それに捨てたら、また面倒くさい事になりそうだ。


「紗良。」

圭也さんは、私をぎゅっと抱きしめてくれた。

「ごめんな。こんな気を遣わせてしまって。」

「ううん。」

それしか言えない。


もし、産まれてみて女の子だったら?

きっと、圭也さんのご両親には、歓迎されないだろう。

でも女の子だって、私達の子供に変わりはないんだし。

私達で大切に育てていくしかない。


「うん。腹が座った。」

「ん?」

私の顔を覗き込んだ圭也さんに、笑顔を見せた。

そして、その日はやってきた。

「紗良さん。今から神社にお参りに行かない?」

お義母さんから連絡があり、私はせっかくだからと準備した。

圭也さんには、メールで連絡しておいた。


待ち合わせは、近くの喫茶店だった。

「お義母さん。」

「ああ、紗良さん。」

お義母さんが、私に手を振っている。

相変わらず、いいところの奥さんって感じだ。


「すみません、お待たせしちゃって。」

「いいのよ。私こそ、突然呼び出してごめんなさいね。」

こうしていると、いいお姑さんなのだが。

「それで、どんな神社ですか?」

「ふふふ。楽しみにしていて。」

私達はお店を出ると、一緒に神社に向かった。

途中でバスに乗ったり、歩いたり、どうやら大変な場所にあるらしい。


「私ね、娘もいるんだけど。お嫁さんって言うのは、また格別なものね。」

「そう言って頂けると、嬉しいです。」

私は、お義母さんと仲良くやっていけるような、そんな気がした。


「さあ、着いたわ。」

見上げて見ると、大きな鳥居があった。

でも、派手でもないし。

人が大勢いる訳でもない。

そこいら辺にある神社と同じだ。


「ここは、何の神様なんですか?」

鳥居を抜けながら、キョロキョロと周りを見る。

「安産の神様よ。」

「へえ。」

「そして、圭也を授かった神社。」

私は、言葉が出なかった。


まさか。

「ここで紗良さんも、男の子を祈願しましょう。」

にっこりと笑ったお義母さんの顔が、鬼に見えた。

その瞬間だった。

急に、お腹が痛くなった。

「大丈夫?紗良さん?」

「お義母さん、タクシーで、産婦人科にお願いします。」

お義母さんが早めにタクシーを呼んでくれたお陰で、直ぐに産婦人科に着く事ができた。

「流産しかかってますね。しばらく病院で、安静にしてください。」

「そんな……」

私よりもお義母さんの方が、ショックを受けていた。


そして連絡を聞いて、圭也さんが病院に駆けつけてくれた。

「お腹の子は?」

「ああ、圭也。無事だけど、安静にしてくださいって。」

全部お義母さんが、圭也さんに伝える。

私の出る幕なし?


「私が神社に連れて行ったのが、悪かったのかしら。」

「だから何で急に、神社なんて。」

するとお義母さんは、喚き始めた。

「男の子が欲しいのよ!」

「まだそんな事言ってるのか!どっちだって、構わないだろ!」

圭也さんは、お義母さんにはっきり言ってくれた。

「何言ってるのよ!もし、女の子だったら!孫だと認めませんからね!」


その瞬間、お腹からサーっと、何かが降りていった気がした。

「一条さん?一条さん?先生、一条さんから出血です!」

看護師さんが早めに気づいてくれたけれど、私の赤ちゃんは、お腹から旅立って行ってしまった。
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