エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒

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幸せとは

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切迫流産。

私の赤ちゃんは、どうやら女の子だったみたい。

お義母さんの言葉を聞いて、悲しくなって、産まれてくることを辞退したのだろう。


あんなに嬉しかったのに。

今は、こんなにも悲しい。


「紗良。今回は残念だったけど、直ぐにまたできるよ。」

圭也さんは、私の手を握ってくれたけれど、私は納得できない。

「圭也さん、お腹の中にいた赤ちゃんと、これからやってくる赤ちゃんは、違うのよ。」

「あっ……」

「あまりにもお義母さんが、男の子男の子って言うから。」

怒りをどこにぶつけたらいいのか、分からなかった。


もちろん、お義母さんのせいで、流産した訳じゃない。

でも、そう思うしか、私の悲しみは癒えなかった。


「しばらく、お義母さんに会えないって言って。」

「もちろんだよ。」

今はただ、圭也さんの温もりが、じーんと胸を覆っている。


しばらくして、私達は退院して家に帰る事になった。

家の中に溢れていた、ベビーグッズが片付けられていた。

「ベビーグッズ、どこへやったの?」

「ああ……」

圭也さんは、微笑みながら私の頭を、ポンと叩いた。

「リサイクルショップに売った。」

「そう。」

「あったら、いつまでも気にするだろ。」

圭也さん、優し過ぎて、胸が痛くなる。


私は、圭也さんを後ろをから、抱きしめた。

「赤ちゃん、また来てくれるかな。」

私の手を握ったくれた圭也さんの手が、温かい。

「うん。きっと来てくれると思うよ。」


私はそこで、大泣きした。

赤ちゃんが逝ってしまってから、泣いた事がなかった。

圭也さんはただ黙って、私が泣き終わるのを、待っていてくれた。


圭也さん。

私、圭也さんと結婚して、本当によかった。

そう、改めて思った。

その翌日だった。

昼間に、玄関のチャイムが鳴った。

「誰だろう。」

カメラを見ると、相手はお義母さんだった。

「えっ?」


しばらく家に来ないように、圭也さんから伝えてあったと思うのに。

「紗良さん!開けてちょうだい!」

玄関の前で騒ぐから、仕方なく開けた。

「お姑さんが来たって言うのに、どういうつもり?」

「すみません。」

お義母さんは、さっさと家の中に入ると、廊下を進んでいった。


「今、お茶を淹れますね。」

「お茶はいいわ。」

お義母さんは、私に手招きをした。

「はい。」

私は、お義母さんの前に座った。

「ねえ、紗良さんにお願いがあるんだけど。」

「何でしょう。」

するとお義母さんは、真面目にこんな事を言い出した。

「圭也と離婚してほしいの。」

「えっ……」

頭を何かで殴られた気がした。


「……どういう意味ですか?」

「あなた、一度流産すると、次に妊娠する確率が減るって、知ってる?」

「えっ……そんな事、聞いた事がありません。」

「万が一、妊娠したとしても、また流産する可能性もあるし。」

怒りが込み上げると言うか、呆れてきた。


私は、お義母さんのせいで、流産したのに。

「それが事実だとしても、まだ子供ができないと決めつけないでください。」

「そうね。じゃあ、2年経ってもダメだったら、離婚してくれる?」

お義母さんは、もう私と圭也さんを離婚させる気、満々だ。


「ウチの家庭はね、男の子がいないと困るのよ。子供が産めないお嫁さんは、正直いらないから。」

「そして、離婚した後は、また圭也さんにお見合いさせるんですか。」

「そうね。それがいいわね。」


全く私達の気持ちを無視して。

何て、人なんだろう。

「帰って下さい。」

「紗良さん?」

「帰って!もう2度と、この家に来ないでください!」

お義母さんが帰った後、物凄い脱力感がした。

どれくらい経っただろう。

玄関から、圭也さんの”ただいま”という声がした。

もう、圭也さんが帰ってくる時間になったんだ。


「おかえりなさい。」

「どうした?紗良。」

私は泣きながら、お義母さんに言われた事を、圭也さんに伝えた。

「子供ができなかったら、離婚?そう言ったのか?」

「うん。」

すると圭也さんは、直ぐにお母さんに電話してくれた。


「母さん、紗良になんて事を言ったんだ!」

圭也さんは物凄く怒っている。

「紗良は、子供を産む道具じゃない!はっ?子供?生まれなくても、紗良とは別れない!跡継ぎなんて、今時古いんだよ!」

そして圭也さんは、電話を切ると、私の側に来た。

「紗良、許してくれ。」

そう言って、私に土下座した。

「圭也さん!」

「母親が君を傷つけた事、謝るよ。」

圭也さんが悪い訳じゃないのに。

私は圭也さんの上半身を起こすと、ぎゅっと抱きしめた。
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