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第2部
フェーズ7.9-4
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出かける前にお互いの左手薬指に指輪をはめた。仕上がったばかりの結婚指輪は、婚約指輪とは違って装飾のないシンプルなデザインのプラチナリングで、内側には私と涼のイニシャルが刻印されている。世界にひとつしかない、私たちだけの指輪だ。
四月一日、役所に婚姻届を提出した。今日は日曜日のため、休日受付の窓口に出した。受付してくれた人が丁寧に確認をしてくれたので、明日の月曜日に問題なく受理されると思う。受付の人と、さらに警備員さんまで「おめでとうございます」と祝福してくれた。そういう言葉は通常窓口でしかかけてもらえないと思っていたから、驚いて感激してしまった。
これで私たちは晴れて夫婦だ。結婚、したんだなあ。まだ実感が湧かない。夫婦、ふうふ、ふさい、めおと。もう婚約者ではなく夫と妻なんだ。名字は伊吹から神河になった。慣れるまで時間がかかりそう。それも幸せな時間だと思う。
「またにやにやしてる」
役所から出たところで涼に指摘された。
「だってうれしいんだもん」
口元が緩んだまま答えた。涼はくすっと笑って手を繋いできた。
「入籍日ってみんなどう過ごすのかな」
駐車場の車に向かって歩きながら呟いた。
「ベッドで愛を確かめ合うんじゃないの」
結婚初夜といえばそれなんだろうけど、聞きたいのは昼間のことだ。いや、この人の場合、昼間からそれなのかもしれない。せっかくの記念日だ。もっと今日ならではの素敵な過ごし方はないものか。
「それ以外で」
「高級レストランでのディナーに、ホテルのスイートルーム?」
「ああ、そんなイメージかも」
でも涼は明日は仕事だからホテルに泊まるわけにはいかないし、レストランも予約していない。
「それもいいけど、家でゆっくりしたいな」
「何を」
「だから~」
もう、涼の頭の中はそればっかり? 私は夫婦になった喜びを落ち着いて噛みしめたいという意味で言っただけだ。
車に戻ってきた。さて、これからどうしよう。婚姻届を出したことの実家への報告は帰ってから電話でするとして、その前にスーパーで買い物かな。今夜はごちそうを作ろう。
「レストランじゃなく家でゆっくりしたいなら、夜は何か作ろうか、一緒に」
「一緒に!」
思いがけない提案に心が躍る。二人で作るのは楽しそう。結婚して初めての共同作業だね。
「さらにそのあとは……」
にやりとしながら、涼がそこで区切った。やっぱりそれか。
「ついでに子どもも作る?」
「ついで!?」
旅行のときにしばらくは二人で、と話したんだから冗談だとは思う。ちゃんと避妊すると言ってくれた。
「生理が終わったばかりだから無理か」
把握されている! 今回は仕方ないか。初日に痛みが強くて心配をかけてしまったから。
子どもではなくて、一緒に作るのは料理だ。二人で作れそうなもの、何がいいだろう。
相談した結果、ローストビーフを作ることになり、スーパーで食材を買い込んできた。帰宅して寝室で着替えようとしたところで、後ろから抱きしめられた。
「早くローストビーフを仕込まないと」
「ここにも仕込みたい」
私の下腹部に触れながら、耳元でささやかれた。本気でさっそく子作りする気なのか。
「まだしばらく二人で、って。涼のしばらくってどれくらい?」
念のため確認してみる。てっきり撤回してすぐにでも作りたいなんて言い出すかと思いきや、
「彩が二十歳になるくらいまでかな」
と、真面目な答えが返ってきた。なんだ、冗談だったんだ。ちょっと焦った。
「夜のお楽しみがなくなっちゃうよ?」
「じゃあ、あとにしよ」
あっさりあきらめてくれたけど、その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。「お楽しみ」なんて言ったせいかもしれない。今夜、激しそう。
涼にローストビーフの焼きを担当してもらって、私はその間にサラダを作る。ローストビーフを休ませている間には付け合わせのマッシュポテトを潰してもらい、私はリゾットに取りかかる。一緒に作るのは楽しい。
食べながら「料理の腕がどんどん上がってる」と褒めてくれた。一緒に作ったからだと思う。自分で作るとおいしいって言うものね。
夫婦となって初めての営みはやっぱり激しかった。最初は仰向けの涼に乗らされた。跨って気持ちよくなっていたら、涼が体を起こして向かい合って座る体勢になった。奥深く突き刺さる。その状態で涼が私のお尻を掴んで前後に揺さぶった。
「あっ……ああっ……!」
深いところを擦られ、数日ぶりの感覚に酔いしれる。なんといっても今日は結婚初夜だ。自然と気分も盛り上がる。
「もう夫婦なんだな」
そう、もう夫婦なの。私、この人の妻になれたんだ。感極まって泣きそうになる。
「彩……」
甘い囁きも今は媚薬のよう。どうにかなってしまいそうで、涼にしがみついた。
「涼……好き、大好き……っ」
めちゃくちゃにしてほしくて自ら腰を振る。もっともっと深いところでいっぱい繋がりたい。
「も……ダメ……っ」
意識と体がまるで別のものになったかのように、体が勝手にビクビクと震えた。
震えが治まってくると、繋がったまま涼が今度は私を仰向けに寝かせた。途中で体が離れそうになり、収まっている彼を締めつけてしまった。
「そんなに締めなくても、まだ離さないよ」
顔がかあっと熱くなる。私もまだ終わりたくない。
「記念すべき結婚初夜なのに、今日は泣かないのか? 初体験のときは号泣してたくせに」
「そんな、しょっちゅう泣くわけじゃ……」
さっき泣きそうになったけど。
「残念。彩の泣き顔もかわいくて好きなんだけどな」
そんなに泣いてるかな。だとすれば、涼がうれしいことを言ってくれるせいだ。
「泣いてるのも笑ってるのも怒ってるのも、全部かわいい。全部好きだ」
「あっ……!」
涼がゆっくりと動き始めた。
「ずっと一緒にいよう、彩……」
悶える私を見つめながら彼が言う。
「一生……?」
「ああ、一生一緒だ。俺はお前とずっと一緒にいる。絶対に離さないし、離れない」
絶対に泣かせようとしてるとしてるって、わかってはいるんだけど。
「やっぱり泣いた」
「もう……あんっ」
せっかく感動してるのに涼が激しくするから、浸っている暇がない。
「愛してる」
「私も、愛して、る……」
言葉でも愛を確かめ合い、ともに快楽の渦に呑み込まれていった。
四月一日、役所に婚姻届を提出した。今日は日曜日のため、休日受付の窓口に出した。受付してくれた人が丁寧に確認をしてくれたので、明日の月曜日に問題なく受理されると思う。受付の人と、さらに警備員さんまで「おめでとうございます」と祝福してくれた。そういう言葉は通常窓口でしかかけてもらえないと思っていたから、驚いて感激してしまった。
これで私たちは晴れて夫婦だ。結婚、したんだなあ。まだ実感が湧かない。夫婦、ふうふ、ふさい、めおと。もう婚約者ではなく夫と妻なんだ。名字は伊吹から神河になった。慣れるまで時間がかかりそう。それも幸せな時間だと思う。
「またにやにやしてる」
役所から出たところで涼に指摘された。
「だってうれしいんだもん」
口元が緩んだまま答えた。涼はくすっと笑って手を繋いできた。
「入籍日ってみんなどう過ごすのかな」
駐車場の車に向かって歩きながら呟いた。
「ベッドで愛を確かめ合うんじゃないの」
結婚初夜といえばそれなんだろうけど、聞きたいのは昼間のことだ。いや、この人の場合、昼間からそれなのかもしれない。せっかくの記念日だ。もっと今日ならではの素敵な過ごし方はないものか。
「それ以外で」
「高級レストランでのディナーに、ホテルのスイートルーム?」
「ああ、そんなイメージかも」
でも涼は明日は仕事だからホテルに泊まるわけにはいかないし、レストランも予約していない。
「それもいいけど、家でゆっくりしたいな」
「何を」
「だから~」
もう、涼の頭の中はそればっかり? 私は夫婦になった喜びを落ち着いて噛みしめたいという意味で言っただけだ。
車に戻ってきた。さて、これからどうしよう。婚姻届を出したことの実家への報告は帰ってから電話でするとして、その前にスーパーで買い物かな。今夜はごちそうを作ろう。
「レストランじゃなく家でゆっくりしたいなら、夜は何か作ろうか、一緒に」
「一緒に!」
思いがけない提案に心が躍る。二人で作るのは楽しそう。結婚して初めての共同作業だね。
「さらにそのあとは……」
にやりとしながら、涼がそこで区切った。やっぱりそれか。
「ついでに子どもも作る?」
「ついで!?」
旅行のときにしばらくは二人で、と話したんだから冗談だとは思う。ちゃんと避妊すると言ってくれた。
「生理が終わったばかりだから無理か」
把握されている! 今回は仕方ないか。初日に痛みが強くて心配をかけてしまったから。
子どもではなくて、一緒に作るのは料理だ。二人で作れそうなもの、何がいいだろう。
相談した結果、ローストビーフを作ることになり、スーパーで食材を買い込んできた。帰宅して寝室で着替えようとしたところで、後ろから抱きしめられた。
「早くローストビーフを仕込まないと」
「ここにも仕込みたい」
私の下腹部に触れながら、耳元でささやかれた。本気でさっそく子作りする気なのか。
「まだしばらく二人で、って。涼のしばらくってどれくらい?」
念のため確認してみる。てっきり撤回してすぐにでも作りたいなんて言い出すかと思いきや、
「彩が二十歳になるくらいまでかな」
と、真面目な答えが返ってきた。なんだ、冗談だったんだ。ちょっと焦った。
「夜のお楽しみがなくなっちゃうよ?」
「じゃあ、あとにしよ」
あっさりあきらめてくれたけど、その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。「お楽しみ」なんて言ったせいかもしれない。今夜、激しそう。
涼にローストビーフの焼きを担当してもらって、私はその間にサラダを作る。ローストビーフを休ませている間には付け合わせのマッシュポテトを潰してもらい、私はリゾットに取りかかる。一緒に作るのは楽しい。
食べながら「料理の腕がどんどん上がってる」と褒めてくれた。一緒に作ったからだと思う。自分で作るとおいしいって言うものね。
夫婦となって初めての営みはやっぱり激しかった。最初は仰向けの涼に乗らされた。跨って気持ちよくなっていたら、涼が体を起こして向かい合って座る体勢になった。奥深く突き刺さる。その状態で涼が私のお尻を掴んで前後に揺さぶった。
「あっ……ああっ……!」
深いところを擦られ、数日ぶりの感覚に酔いしれる。なんといっても今日は結婚初夜だ。自然と気分も盛り上がる。
「もう夫婦なんだな」
そう、もう夫婦なの。私、この人の妻になれたんだ。感極まって泣きそうになる。
「彩……」
甘い囁きも今は媚薬のよう。どうにかなってしまいそうで、涼にしがみついた。
「涼……好き、大好き……っ」
めちゃくちゃにしてほしくて自ら腰を振る。もっともっと深いところでいっぱい繋がりたい。
「も……ダメ……っ」
意識と体がまるで別のものになったかのように、体が勝手にビクビクと震えた。
震えが治まってくると、繋がったまま涼が今度は私を仰向けに寝かせた。途中で体が離れそうになり、収まっている彼を締めつけてしまった。
「そんなに締めなくても、まだ離さないよ」
顔がかあっと熱くなる。私もまだ終わりたくない。
「記念すべき結婚初夜なのに、今日は泣かないのか? 初体験のときは号泣してたくせに」
「そんな、しょっちゅう泣くわけじゃ……」
さっき泣きそうになったけど。
「残念。彩の泣き顔もかわいくて好きなんだけどな」
そんなに泣いてるかな。だとすれば、涼がうれしいことを言ってくれるせいだ。
「泣いてるのも笑ってるのも怒ってるのも、全部かわいい。全部好きだ」
「あっ……!」
涼がゆっくりと動き始めた。
「ずっと一緒にいよう、彩……」
悶える私を見つめながら彼が言う。
「一生……?」
「ああ、一生一緒だ。俺はお前とずっと一緒にいる。絶対に離さないし、離れない」
絶対に泣かせようとしてるとしてるって、わかってはいるんだけど。
「やっぱり泣いた」
「もう……あんっ」
せっかく感動してるのに涼が激しくするから、浸っている暇がない。
「愛してる」
「私も、愛して、る……」
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