105 / 169
6章 ドラマ撮影編
『生徒会長は告らせたい』の撮影 6
しおりを挟む
~立花香帆視点~
「ほんとバカな話よね。凛の努力を否定し、『天才』という言葉で片付けたのだから」
ポツリと呟きながら私は肩を落とす。
「そうだったんだ。なら今の話でお兄ちゃんの見方が変わったかな?」
「そうね。少なくとも天才ではなく努力の賜物によって優秀主演男優賞を受賞したことは理解したわ。小5という異例の若さで受賞できたのも努力のおかげなのね」
「うん。あ、それと血筋と師匠のおかげだね」
「血筋と師匠?」
私は寧々の言葉に首を傾げる。
「そうだよ。もちろん、お兄ちゃんの努力もすごかったけど、努力だけで受賞できるほど甘い世界じゃないよ。ましてや小学5年生での受賞なんて。あれは優秀な遺伝子と優秀な師匠がいたから受賞できたんだ」
「た、確かにそうね。でもそんな話、一度も聞いたことないわよ」
かつて夏目レンという芸名で活躍していた凛に師匠がいたなんて聞いたことがない。
同様に夏目レンの親族に有名な役者がいることも聞いたことがない。
「だってこの話は真奈美ちゃんしか知らないからね!」
「え!?そんな話、出会ったばかりの私にしていいの!?」
「うんっ!」
満面の笑みで寧々が頷く。
凛の血筋や師匠に関してはとても気になるため、私は黙って続きの言葉を待つ。
「お兄ちゃんは優秀な遺伝子を引き継いでいたから演技の才能があった。そして、優秀な師匠によって才能が開花したんだ。香帆ちゃんなら山﨑律子という女優は知ってるよね?」
「当然よ。私が憧れる女優の1人だもの」
山﨑律子といえば数々のドラマに出演しており、代表作の『渡る世間は龍ばかり』では約30年もの間、主人公の娘役として活躍した女優で、私が憧れている女優の1人だ。
「え、もしかして……」
「うん。私たちのお婆ちゃんって女優の山﨑律子なんだ」
「えぇーっ!」
私は声をあげて驚く。
「そしてお兄ちゃんの師匠だよ」
「な、なるほど」
あの演技力は律子さん直伝だったようだ。
「お兄ちゃんはお婆ちゃんの血筋を受け継ぎ、お婆ちゃんから死ぬほど鍛えられたから才能が開花して、小学5年生にして優秀主演男優賞を受賞したんだ」
どうやら凛は小学4年生の頃、子役業を休業して律子さんの家でスパルタ演技指導を受けていたらしい。
そのおかげで演技の才能が開花した。
そして開花した才能に満足せず日々努力したことで、優秀主演男優賞を受賞したとのこと。
「そ、そうだったんだ……」
本当に私は凛という男を勘違いしていたようだ。
凛は『天才』ではなく『才人』だった。
それも並々ならぬ努力の賜物で開花した才能だったようだ。
「だったら何で子役を辞めたのよ?律子さんの血を受け継ぎ、律子さん直伝の技術を身につけた凛なら一生俳優で食べていけるわ。それに努力していたってことは演じることが苦じゃなかったってこと。引退する理由が見当たらないわ」
寧々の話から子役業に対して軽い気持ちで取り組んでないことは理解できた。
だから尚更、凛が引退した理由が分からない。
(私は凛に向けて「私が優秀主演男優賞を受賞したら、どんな理由があっても絶対に引退しない。受賞できたことを誇りに思い、より一層女優として頑張るわ」とまで言ってしまった。でも凛には引退せざるを得ない理由があったんだわ)
今の話を聞くまでは『俳優業に飽きたから辞めた』等、軽い気持ちで引退を決断したと思っていた。
だが、そんな感じの理由で辞めたわけではなさそうなので、私は寧々の返答を固唾を飲んで待った。
「ほんとバカな話よね。凛の努力を否定し、『天才』という言葉で片付けたのだから」
ポツリと呟きながら私は肩を落とす。
「そうだったんだ。なら今の話でお兄ちゃんの見方が変わったかな?」
「そうね。少なくとも天才ではなく努力の賜物によって優秀主演男優賞を受賞したことは理解したわ。小5という異例の若さで受賞できたのも努力のおかげなのね」
「うん。あ、それと血筋と師匠のおかげだね」
「血筋と師匠?」
私は寧々の言葉に首を傾げる。
「そうだよ。もちろん、お兄ちゃんの努力もすごかったけど、努力だけで受賞できるほど甘い世界じゃないよ。ましてや小学5年生での受賞なんて。あれは優秀な遺伝子と優秀な師匠がいたから受賞できたんだ」
「た、確かにそうね。でもそんな話、一度も聞いたことないわよ」
かつて夏目レンという芸名で活躍していた凛に師匠がいたなんて聞いたことがない。
同様に夏目レンの親族に有名な役者がいることも聞いたことがない。
「だってこの話は真奈美ちゃんしか知らないからね!」
「え!?そんな話、出会ったばかりの私にしていいの!?」
「うんっ!」
満面の笑みで寧々が頷く。
凛の血筋や師匠に関してはとても気になるため、私は黙って続きの言葉を待つ。
「お兄ちゃんは優秀な遺伝子を引き継いでいたから演技の才能があった。そして、優秀な師匠によって才能が開花したんだ。香帆ちゃんなら山﨑律子という女優は知ってるよね?」
「当然よ。私が憧れる女優の1人だもの」
山﨑律子といえば数々のドラマに出演しており、代表作の『渡る世間は龍ばかり』では約30年もの間、主人公の娘役として活躍した女優で、私が憧れている女優の1人だ。
「え、もしかして……」
「うん。私たちのお婆ちゃんって女優の山﨑律子なんだ」
「えぇーっ!」
私は声をあげて驚く。
「そしてお兄ちゃんの師匠だよ」
「な、なるほど」
あの演技力は律子さん直伝だったようだ。
「お兄ちゃんはお婆ちゃんの血筋を受け継ぎ、お婆ちゃんから死ぬほど鍛えられたから才能が開花して、小学5年生にして優秀主演男優賞を受賞したんだ」
どうやら凛は小学4年生の頃、子役業を休業して律子さんの家でスパルタ演技指導を受けていたらしい。
そのおかげで演技の才能が開花した。
そして開花した才能に満足せず日々努力したことで、優秀主演男優賞を受賞したとのこと。
「そ、そうだったんだ……」
本当に私は凛という男を勘違いしていたようだ。
凛は『天才』ではなく『才人』だった。
それも並々ならぬ努力の賜物で開花した才能だったようだ。
「だったら何で子役を辞めたのよ?律子さんの血を受け継ぎ、律子さん直伝の技術を身につけた凛なら一生俳優で食べていけるわ。それに努力していたってことは演じることが苦じゃなかったってこと。引退する理由が見当たらないわ」
寧々の話から子役業に対して軽い気持ちで取り組んでないことは理解できた。
だから尚更、凛が引退した理由が分からない。
(私は凛に向けて「私が優秀主演男優賞を受賞したら、どんな理由があっても絶対に引退しない。受賞できたことを誇りに思い、より一層女優として頑張るわ」とまで言ってしまった。でも凛には引退せざるを得ない理由があったんだわ)
今の話を聞くまでは『俳優業に飽きたから辞めた』等、軽い気持ちで引退を決断したと思っていた。
だが、そんな感じの理由で辞めたわけではなさそうなので、私は寧々の返答を固唾を飲んで待った。
21
あなたにおすすめの小説
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる