一億円の花嫁

招かれざる客

７

　つっかえながら訊ねた。
　招かれざる客に対応した姉が、うなずいてくれるのを期待して。
　だってお姉ちゃんは、綾華たちにものすごく怒っていた。妹を苦しめた存在を、近づけるはずがない。

「うん……まあ、最初はそのつもりだった」
「？」

　どういうことだろう。
　ざわざわする胸を押さえて、必死な思いで姉を見返す。
　さっきまでの怖い顔つきが、少し和らいでいることに気づいた。

「車田夏樹……あんたの話を聞いて、西野ってやつの同類と思ってたけど、ちょっとイメージが違うのよね。確かに外見は変わらないけど、中身はどうなんだろ」

　思わぬ答えだった。

「お姉ちゃん、夏樹と話したの？」
「問答無用で追い払うつもりだったのよ。でも、いきなり土下座するんだもの」
「土下座！？」
「そう。しかも、溶けた雪でグチャグチャの道ばたでよ？　人目もあるし、こっちが恥ずかしくなって、仕方ないから用件ぐらいは聞いてやることにしたわけ」

　頭が混乱した。
　あの夏樹が？　嘘だ、そんな。土下座なんてするはずがない。
　彼女はクールな性格で、カッコ悪いことが大嫌い。綾華に負けないくらいプライドが高く、そしていつも冷静だった。

　困惑する私をじっと見つめてから、姉がポケットを探りスマホを取り出す。
　表示したのはボイスレコーダーのアプリ。夏樹との会話を録音したと言われ、びっくりする。

「これを聞いたほうが正確で早いわ」
「お姉ちゃん、でも」
「とにかく聞いて。どうするかは、その後決めなさい」

　再生が始まり、私は耳を傾けるほかなかった。