車椅子の僕、失声症の君

未来 馨

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第二十一章

「ダンス練習」

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 外気温三十四度。真夏日の午後と言えば地獄のような暑さだ。思わず扇風機かエアコンを取り付けることを学校に要求してしまいたくなる。
 そんな中でも、今日も今日とて五、六時限目の学校祭準備の時間はどのクラスも学校祭一色だ。自分だけ怠けてはいられない。
 良はそんな思いで片っ端から生徒や担任である浅間に役に立てることがないか聞いて回った。
しかし、現状では良の役割は特になかった。そもそも、良の役割分担は元々はステージ発表だ。しかし、車椅子であるため撮影も厳しく、唯一任されたことと言えば編集作業。それ以外することがなく、ダンス練習を見にホールへと向かった。

 「はい! じゃあ次進むよ! 」
ホールではダンス練習を仕切る女子生徒と男子生徒の代表が一人ずつ、大声で生徒を引っ張っていた。
 張り切ってるなぁ……。と呑気にその様子を見ていると、突然音楽が止められる。
「……? 」
 良が首を傾げていると、代表の女子生徒が名指して言う。
「園田さん! 飛鳥くん! 二人だけ動きがズレてるわ! 少し練習してきて! 」
「……」
 思わず思考停止した良は、練習の輪から外されてしまった園田という少し大人しい女子生徒と柊真がこちらに歩いてくるのに気が付き、車椅子を走らせ近寄っていく。
「柊真、大丈夫か? 」
 あれほどの大声で怒鳴られれば誰だって恐怖するだろう。しかし柊真は、苦笑して頷いた。それに良はあまり納得のいかない表情で柊真の隣に並んで廊下を進んだ。

 階段近くの廊下で練習している柊真の様子を見ることになった良は、首を傾げて考える。
 どのタイミングで動けばいいのかが、柊真にはあまり理解できていないようだった。
「柊真、少し動画観る? あまりタイミングわからないんじゃない? 」
 良の提案に、柊真は少し落ち込んだような表情をしてから頷いた。

「……」
 よさこいの動画を何度か観て、良が隣にいる柊真の顔を見ると、柊真は首を傾げていた。
「柊真……もしかして、タイミング掴むのとか苦手な感じ? 」
 遠慮がちに問えば、柊真は良の予想通りに頷く。
「そっか……う~ん……俺もダンスは苦手だしなぁ~」
 二人でしばらく悩んでいると、クラスのマドンナ的存在である水無瀬 泉みなせ いずみが通りかかる。
「あら? 二人ともどうしたの? 」
 泉の声に二人が顔を上げる。
「い、いや……実は柊真が練習から外されちゃって……もう一人、園田さんもそうなんだけど、二人だけズレてるみたいで……」
 良の説明に、泉は顔をぱあっと輝かせ、何故か胸を張って自信満々に言う。
「あら、そうゆうことなら任せて。私ダンスには自信があるの。今はクラス旗の仕事で忙しいけど、放課後のバスまでの時間教えてあげるわ」
 そんな泉の様子に二人で思わず拍手をしてしまう。きっと傍から見たらどういう状況なのかと首を傾げるだろう。
 かくして、柊真の過酷なよさこい練習は始まったのであった。

第二十一章 終
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