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第二十二章
「衝突」
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学校祭まであと一週間。
ここまであっという間だったような気がする。
「小野寺」
パソコン室でステージ発表に使う動画を編集していた良は、同じくステージ発表の係である男子生徒に声をかけられる。
「動画、どんな感じ? 」
突然問われ、良はあたふたしながら編集ページを閉じて一度動画を観せる。
「えっと、一応はこんな感じ。字幕付けて全員分のを一つにしたよ」
良は編集技術がある訳では無いが、他に出来ることもないからとこの仕事を引き受けた。しかし、慣れてくると楽しいものだ。
「へぇ~。小野寺って飲み込み早いな……俺だったら絶対間に合わなかったわ。サンキュ」
ぽんぽん、と軽く肩を叩かれて褒めてもらったことに、良は嬉しくなって思わず口許が緩んだ。
編集作業を一時中断させ、良は教室のある四階へとエレベーターで移動した。
「いい? 学校祭まで残り一週間。この一週間はなるべく全体練習を基本にしていきたいから、みんなしっかりね」
クラスメイトを引っ張っていく女子生徒の声にホールにいた全員が頷き、すぐに曲がかけられた。
「……」
最近、ホールでの練習を見ていると、良はなんとも言えない虚しさに襲われることがある。理由はわかっている。学校の行事にも参加出来ず、一人取り残されたような気持ちになるのが原因だ。
しかし、それを誰かに相談する勇気もなかった。きっと「歩けないのだから仕方ない」と一蹴されるに決まっていると決めつけてしまっているから。
それは柊真に対しても同じだった。
柊真は自分とは違う。声が出せないというだけでクラスメイトたちと共にダンスは踊れている。
良は卑屈になっていた。
柊真に自分の気持ちなどわかるはずがないと――。
放課後。親の迎えを図書室で待っていた良は、泉との練習を終えた柊真が入ってくると思わずスマートフォンに視線を落とす。
「……」
何気に、今の状態で柊真と会話をしたくなかった。
自分に話しかけてくれるな、と願うもそれは叶わず、柊真は心配そうに良の顔を覗き込んで「大丈夫? 」と書いたメモ帳を見せてくる。
「う、うん……大丈夫だよ」
一向に表情が曇ったままの良を心配してか、柊真はメモ帳に新たに書き連ねていく。
"具合でも悪い? "
"保健室行く? "
しかし、そんな柊真の問いかけは良の心にさらに暗い影を落とした。
「っ……大丈夫だからっ……ほっといてくれよっ……柊真には関係ないっ……!」
口をついて出た言葉に、良自身驚いて柊真を恐る恐る見上げる。
「……」
柊真は傷ついた表情をしていた。涙が零れそうになるのを必死に堪え、俯く。
「あ……柊真……ごめん……俺……」
言いかけて、口を閉じる。
二人の間に長い沈黙が降りる。
しばらくすると、柊真が顔を上げる。その表情は笑っていたが、やはりどこか苦しそうな笑顔だった。柊真はカバンを持って図書室を出て行ってしまった。きっと、良の側にいてはいけないのだと思ったのだろう。
「……っ」
良は今になって後悔した。なぜあんな言葉をぶつけてしまったのだろう。柊真は自分のことを心配して気を遣ってくれたというのに。
その日、良は家に帰っても心が休まらなかった。
第二十二章 終
ここまであっという間だったような気がする。
「小野寺」
パソコン室でステージ発表に使う動画を編集していた良は、同じくステージ発表の係である男子生徒に声をかけられる。
「動画、どんな感じ? 」
突然問われ、良はあたふたしながら編集ページを閉じて一度動画を観せる。
「えっと、一応はこんな感じ。字幕付けて全員分のを一つにしたよ」
良は編集技術がある訳では無いが、他に出来ることもないからとこの仕事を引き受けた。しかし、慣れてくると楽しいものだ。
「へぇ~。小野寺って飲み込み早いな……俺だったら絶対間に合わなかったわ。サンキュ」
ぽんぽん、と軽く肩を叩かれて褒めてもらったことに、良は嬉しくなって思わず口許が緩んだ。
編集作業を一時中断させ、良は教室のある四階へとエレベーターで移動した。
「いい? 学校祭まで残り一週間。この一週間はなるべく全体練習を基本にしていきたいから、みんなしっかりね」
クラスメイトを引っ張っていく女子生徒の声にホールにいた全員が頷き、すぐに曲がかけられた。
「……」
最近、ホールでの練習を見ていると、良はなんとも言えない虚しさに襲われることがある。理由はわかっている。学校の行事にも参加出来ず、一人取り残されたような気持ちになるのが原因だ。
しかし、それを誰かに相談する勇気もなかった。きっと「歩けないのだから仕方ない」と一蹴されるに決まっていると決めつけてしまっているから。
それは柊真に対しても同じだった。
柊真は自分とは違う。声が出せないというだけでクラスメイトたちと共にダンスは踊れている。
良は卑屈になっていた。
柊真に自分の気持ちなどわかるはずがないと――。
放課後。親の迎えを図書室で待っていた良は、泉との練習を終えた柊真が入ってくると思わずスマートフォンに視線を落とす。
「……」
何気に、今の状態で柊真と会話をしたくなかった。
自分に話しかけてくれるな、と願うもそれは叶わず、柊真は心配そうに良の顔を覗き込んで「大丈夫? 」と書いたメモ帳を見せてくる。
「う、うん……大丈夫だよ」
一向に表情が曇ったままの良を心配してか、柊真はメモ帳に新たに書き連ねていく。
"具合でも悪い? "
"保健室行く? "
しかし、そんな柊真の問いかけは良の心にさらに暗い影を落とした。
「っ……大丈夫だからっ……ほっといてくれよっ……柊真には関係ないっ……!」
口をついて出た言葉に、良自身驚いて柊真を恐る恐る見上げる。
「……」
柊真は傷ついた表情をしていた。涙が零れそうになるのを必死に堪え、俯く。
「あ……柊真……ごめん……俺……」
言いかけて、口を閉じる。
二人の間に長い沈黙が降りる。
しばらくすると、柊真が顔を上げる。その表情は笑っていたが、やはりどこか苦しそうな笑顔だった。柊真はカバンを持って図書室を出て行ってしまった。きっと、良の側にいてはいけないのだと思ったのだろう。
「……っ」
良は今になって後悔した。なぜあんな言葉をぶつけてしまったのだろう。柊真は自分のことを心配して気を遣ってくれたというのに。
その日、良は家に帰っても心が休まらなかった。
第二十二章 終
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