車椅子の僕、失声症の君

未来 馨

文字の大きさ
21 / 25
第二十一章

「ダンス練習」

しおりを挟む
 外気温三十四度。真夏日の午後と言えば地獄のような暑さだ。思わず扇風機かエアコンを取り付けることを学校に要求してしまいたくなる。
 そんな中でも、今日も今日とて五、六時限目の学校祭準備の時間はどのクラスも学校祭一色だ。自分だけ怠けてはいられない。
 良はそんな思いで片っ端から生徒や担任である浅間に役に立てることがないか聞いて回った。
しかし、現状では良の役割は特になかった。そもそも、良の役割分担は元々はステージ発表だ。しかし、車椅子であるため撮影も厳しく、唯一任されたことと言えば編集作業。それ以外することがなく、ダンス練習を見にホールへと向かった。

 「はい! じゃあ次進むよ! 」
ホールではダンス練習を仕切る女子生徒と男子生徒の代表が一人ずつ、大声で生徒を引っ張っていた。
 張り切ってるなぁ……。と呑気にその様子を見ていると、突然音楽が止められる。
「……? 」
 良が首を傾げていると、代表の女子生徒が名指して言う。
「園田さん! 飛鳥くん! 二人だけ動きがズレてるわ! 少し練習してきて! 」
「……」
 思わず思考停止した良は、練習の輪から外されてしまった園田という少し大人しい女子生徒と柊真がこちらに歩いてくるのに気が付き、車椅子を走らせ近寄っていく。
「柊真、大丈夫か? 」
 あれほどの大声で怒鳴られれば誰だって恐怖するだろう。しかし柊真は、苦笑して頷いた。それに良はあまり納得のいかない表情で柊真の隣に並んで廊下を進んだ。

 階段近くの廊下で練習している柊真の様子を見ることになった良は、首を傾げて考える。
 どのタイミングで動けばいいのかが、柊真にはあまり理解できていないようだった。
「柊真、少し動画観る? あまりタイミングわからないんじゃない? 」
 良の提案に、柊真は少し落ち込んだような表情をしてから頷いた。

「……」
 よさこいの動画を何度か観て、良が隣にいる柊真の顔を見ると、柊真は首を傾げていた。
「柊真……もしかして、タイミング掴むのとか苦手な感じ? 」
 遠慮がちに問えば、柊真は良の予想通りに頷く。
「そっか……う~ん……俺もダンスは苦手だしなぁ~」
 二人でしばらく悩んでいると、クラスのマドンナ的存在である水無瀬 泉みなせ いずみが通りかかる。
「あら? 二人ともどうしたの? 」
 泉の声に二人が顔を上げる。
「い、いや……実は柊真が練習から外されちゃって……もう一人、園田さんもそうなんだけど、二人だけズレてるみたいで……」
 良の説明に、泉は顔をぱあっと輝かせ、何故か胸を張って自信満々に言う。
「あら、そうゆうことなら任せて。私ダンスには自信があるの。今はクラス旗の仕事で忙しいけど、放課後のバスまでの時間教えてあげるわ」
 そんな泉の様子に二人で思わず拍手をしてしまう。きっと傍から見たらどういう状況なのかと首を傾げるだろう。
 かくして、柊真の過酷なよさこい練習は始まったのであった。

第二十一章 終
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...