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第二十章
「準備」
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学校祭の準備期間は今日から一ヶ月。平日は五、六時限目を使うことが可能であり、休日の活動も許される期間だ。
良のクラスでは、「ステージ発表」をクラス紹介の動画に、「ダンス発表」を定番のよさこいにすることが決定していた。残念ながら良は自分からダンス発表に出ることを辞退し、応援に徹することを決めた。出店についてはまだ未定だが、一年目にしては早く決まったと浅間が感心している。
「小野寺~美術室から絵の具取ってきてくんね?」
男子生徒に声をかけられた良は、頷いて教室を出ていった。そのあとを柊真がついてくる。
「柊真、俺一人で大丈夫だよ」
良が苦笑いして言うと、柊真は首を横に振ってメモ帳に書いて見せる。
"絵の具、確か抱えるほどのダンボールに入ってたはず。膝に乗せて走るのは危ないよ"
柊真の的確な説明に、良は思わず目を見開く。
「へぇ……よく知ってるね。柊真クラス旗の担当だったっけ?」
良の学校では、ステージ発表やダンス発表の他にもう一つ審査の対象となるものがある。それが「クラス旗」だ。クラスで決めたテーマを元に大きな旗を絵の具などで作り、当日に体育館に貼り出す。基本的に毎年どのクラスも四字熟語からデザインを考えるらしい。
今年の良のクラスのテーマは「百花斉放」。多くの花が一斉に開く事や様々なものがその本領を発揮する事を意味しており、この学校祭において自分の能力を発揮できるようにとの願いが込められている。
"クラス旗じゃないけど、美術室に運ばれるとこ見てたから"
柊真の記憶力に良はさらに驚く。どこかが欠けてしまっている人は凄い特技を持っているとよく聞くが、柊真の記憶力もそれに当てはまるのだろうか。
良は考え込むが、廊下の壁にぶつかりそうになったのでやめた。
ダンボールを柊真に抱えてもらい、良は絵筆の入った絵筆を洗うバケツを膝に抱えて教室に戻った。
「お、ありがとう小野寺。早速今日から始められるよ」
そう言って爽やかに笑ったのは、クラス旗のイラストを担当する男子生徒だ。良から見れば羨ましいほどに整った容姿をしているが、漫画が好きで将来の夢が漫画家だと言う彼は、クラス旗を完成させるのにかなり重要な人物だ。良は密かに才能のある彼に憧れている。
「おい、飛鳥」
やや乱暴な口調で柊真を呼んだのは、洋介だ。
「これからダンス練習始めるって言ってるからホール集合しろって」
良の学校には、各階に一箇所必ず多目的ホールが設置されている。そこで今からダンス練習があるようだ。
「だってさ、頑張って」
良は隣で嫌そうな顔をしている柊真を苦笑して励ます。柊真はどうやら運動が苦手のようだ。
家に帰ってきた良は部屋に入るとベッドに横になってスマートフォンで小説を書き始める。
ちょうど学校祭についての話を書こうとしていたため書きやすいのだが、自分の通う学校と似た内容にならないよう注意はしたいところだ。
やはりオリジナルの小説。自分の独自の世界観を読んで想像してもらいたいというのが本音。オリジナルならではの発想を入れたい。
「学校祭、か……」
歩けない自分は、きちんとクラスの役に立てるだろうか。迷惑をかけてしまうのではないだろうか。
考えて少し苦しくなるが、休憩がてら好きな音楽を聴き始めた。
そうしていると徐々に気持ちも安定してきて、少しは前向きに考えることができる。
自分にできることをしよう。
そう決意し、良は明日に備えて眠ることにした。
第二十章・終
良のクラスでは、「ステージ発表」をクラス紹介の動画に、「ダンス発表」を定番のよさこいにすることが決定していた。残念ながら良は自分からダンス発表に出ることを辞退し、応援に徹することを決めた。出店についてはまだ未定だが、一年目にしては早く決まったと浅間が感心している。
「小野寺~美術室から絵の具取ってきてくんね?」
男子生徒に声をかけられた良は、頷いて教室を出ていった。そのあとを柊真がついてくる。
「柊真、俺一人で大丈夫だよ」
良が苦笑いして言うと、柊真は首を横に振ってメモ帳に書いて見せる。
"絵の具、確か抱えるほどのダンボールに入ってたはず。膝に乗せて走るのは危ないよ"
柊真の的確な説明に、良は思わず目を見開く。
「へぇ……よく知ってるね。柊真クラス旗の担当だったっけ?」
良の学校では、ステージ発表やダンス発表の他にもう一つ審査の対象となるものがある。それが「クラス旗」だ。クラスで決めたテーマを元に大きな旗を絵の具などで作り、当日に体育館に貼り出す。基本的に毎年どのクラスも四字熟語からデザインを考えるらしい。
今年の良のクラスのテーマは「百花斉放」。多くの花が一斉に開く事や様々なものがその本領を発揮する事を意味しており、この学校祭において自分の能力を発揮できるようにとの願いが込められている。
"クラス旗じゃないけど、美術室に運ばれるとこ見てたから"
柊真の記憶力に良はさらに驚く。どこかが欠けてしまっている人は凄い特技を持っているとよく聞くが、柊真の記憶力もそれに当てはまるのだろうか。
良は考え込むが、廊下の壁にぶつかりそうになったのでやめた。
ダンボールを柊真に抱えてもらい、良は絵筆の入った絵筆を洗うバケツを膝に抱えて教室に戻った。
「お、ありがとう小野寺。早速今日から始められるよ」
そう言って爽やかに笑ったのは、クラス旗のイラストを担当する男子生徒だ。良から見れば羨ましいほどに整った容姿をしているが、漫画が好きで将来の夢が漫画家だと言う彼は、クラス旗を完成させるのにかなり重要な人物だ。良は密かに才能のある彼に憧れている。
「おい、飛鳥」
やや乱暴な口調で柊真を呼んだのは、洋介だ。
「これからダンス練習始めるって言ってるからホール集合しろって」
良の学校には、各階に一箇所必ず多目的ホールが設置されている。そこで今からダンス練習があるようだ。
「だってさ、頑張って」
良は隣で嫌そうな顔をしている柊真を苦笑して励ます。柊真はどうやら運動が苦手のようだ。
家に帰ってきた良は部屋に入るとベッドに横になってスマートフォンで小説を書き始める。
ちょうど学校祭についての話を書こうとしていたため書きやすいのだが、自分の通う学校と似た内容にならないよう注意はしたいところだ。
やはりオリジナルの小説。自分の独自の世界観を読んで想像してもらいたいというのが本音。オリジナルならではの発想を入れたい。
「学校祭、か……」
歩けない自分は、きちんとクラスの役に立てるだろうか。迷惑をかけてしまうのではないだろうか。
考えて少し苦しくなるが、休憩がてら好きな音楽を聴き始めた。
そうしていると徐々に気持ちも安定してきて、少しは前向きに考えることができる。
自分にできることをしよう。
そう決意し、良は明日に備えて眠ることにした。
第二十章・終
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