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第二十三章
「良の気持ち」
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柊真に八つ当たりをしてしまった翌日。良は重たい足取りで登校し、保健室に来た。
「おはよう……って、あれ? 」
いつもとは違う良の様子に気が付き、緒方は良の元まで歩いてくる。
「今日はなんだか元気がないね。どうかしたの? 今日は柊真君休みだし……」
緒方の言葉に思わず良が顔を上げる。
「え……柊真休みなんですか? 」
「うん。今日は病院行かなきゃ行けない日だから。学校祭近いのに大変だね」
緒方は良を机に誘い、良の向かい側に座る。
「それで? 良君はどうしたの? 」
良がなにも言えずに黙っていると、緒方は優しく笑って問う。
「もしかして……柊真君となにかあった? 」
緒方の予想に良が驚く。
「どうして……」
良の言葉に緒方は優しい表情のまま言った。
「さっき、柊真君が休みだって教えたとき、良君なんだかショックを受けたような顔してたから。休みだって聞いたら友達だもん、心配するよね。でも、さっきの良君の顔は、心配よりももう少し複雑な気持ちに見えたから」
緒方の観察眼に面食らい、良は俯いて昨日のことをぽつりぽつりと話し始めた。
「そっか……そんなことが……」
良が一通り話し終えると、緒方は表情を歪めて呟く。
「俺……知らない間にみんなと踊れる柊真に嫉妬してたんだと思います。でも、誰にも言えなくて……自分でも感情の整理ができなくて……」
いつも側にいてくれた、ただ一人の親友。その親友に八つ当たりをしてしまった。もう親友ではいられないかもしれない。
良の不安は大きくなるばかりだった。
「……良君は、柊真君がどうして声を失ったのか、聞いたことはある? 」
緒方の突然の質問に、良は首を横に振る。思えば、柊真の家族も過去も、良は知らない。
「そっか……良君は、 "親友" って聞いたら、どんな関係を想像するかな? 」
緒方の質問に、良は少しだけ考えてから言う。
「なんでも話し合えて……いつも側にいて……家族よりも頼れる……そんな感じですかね……」
自分でもよくわからないが、一般的な "親友" と言えばそんなイメージがある。
「そっか。良君は柊真君を親友だと思う? 」
「……」
緒方の問いに、良はすぐに答えることができなかった。柊真以上に距離の近い関係の者はこの学校にはいないと思っている。良自身、柊真に依存しているところもあるだろう。柊真の存在が支えになったことも幾度となくあった。
「……柊真のことは、親友だと思っています。柊真以上に親しい人はきっとこの学校にはいません。でも……」
良はずっと疑問に感じていたことを口にする。
「どうして柊真が俺と親友でいてくれるのかが、俺にはわかりません」
確かに自分と柊真には「障害を負っている」という共通点がある。しかしそれが「親友」に繋がるとは到底思えないのだ。
「う~ん……それは、柊真君に聞かなきゃわからないね」
緒方の言葉に良は俯く。しかし、そんな良に緒方は優しく笑って言った。
「君たち二人とも、きっと自分のことで一杯いっぱいだったんだね」
良はその言葉に目を見開く。張り詰めていたものがプツンと切れたように涙が溢れ、俯く。
「君たちはお互いにすれ違っちゃったんだね。大丈夫。明日になれば、またいつも通りに戻れるよ」
緒方の一つ一つの言葉が優しく、良は声を上げて泣いた。良が泣き止むまで、緒方は静かに傍にいてくれた。
第二十三章 終
「おはよう……って、あれ? 」
いつもとは違う良の様子に気が付き、緒方は良の元まで歩いてくる。
「今日はなんだか元気がないね。どうかしたの? 今日は柊真君休みだし……」
緒方の言葉に思わず良が顔を上げる。
「え……柊真休みなんですか? 」
「うん。今日は病院行かなきゃ行けない日だから。学校祭近いのに大変だね」
緒方は良を机に誘い、良の向かい側に座る。
「それで? 良君はどうしたの? 」
良がなにも言えずに黙っていると、緒方は優しく笑って問う。
「もしかして……柊真君となにかあった? 」
緒方の予想に良が驚く。
「どうして……」
良の言葉に緒方は優しい表情のまま言った。
「さっき、柊真君が休みだって教えたとき、良君なんだかショックを受けたような顔してたから。休みだって聞いたら友達だもん、心配するよね。でも、さっきの良君の顔は、心配よりももう少し複雑な気持ちに見えたから」
緒方の観察眼に面食らい、良は俯いて昨日のことをぽつりぽつりと話し始めた。
「そっか……そんなことが……」
良が一通り話し終えると、緒方は表情を歪めて呟く。
「俺……知らない間にみんなと踊れる柊真に嫉妬してたんだと思います。でも、誰にも言えなくて……自分でも感情の整理ができなくて……」
いつも側にいてくれた、ただ一人の親友。その親友に八つ当たりをしてしまった。もう親友ではいられないかもしれない。
良の不安は大きくなるばかりだった。
「……良君は、柊真君がどうして声を失ったのか、聞いたことはある? 」
緒方の突然の質問に、良は首を横に振る。思えば、柊真の家族も過去も、良は知らない。
「そっか……良君は、 "親友" って聞いたら、どんな関係を想像するかな? 」
緒方の質問に、良は少しだけ考えてから言う。
「なんでも話し合えて……いつも側にいて……家族よりも頼れる……そんな感じですかね……」
自分でもよくわからないが、一般的な "親友" と言えばそんなイメージがある。
「そっか。良君は柊真君を親友だと思う? 」
「……」
緒方の問いに、良はすぐに答えることができなかった。柊真以上に距離の近い関係の者はこの学校にはいないと思っている。良自身、柊真に依存しているところもあるだろう。柊真の存在が支えになったことも幾度となくあった。
「……柊真のことは、親友だと思っています。柊真以上に親しい人はきっとこの学校にはいません。でも……」
良はずっと疑問に感じていたことを口にする。
「どうして柊真が俺と親友でいてくれるのかが、俺にはわかりません」
確かに自分と柊真には「障害を負っている」という共通点がある。しかしそれが「親友」に繋がるとは到底思えないのだ。
「う~ん……それは、柊真君に聞かなきゃわからないね」
緒方の言葉に良は俯く。しかし、そんな良に緒方は優しく笑って言った。
「君たち二人とも、きっと自分のことで一杯いっぱいだったんだね」
良はその言葉に目を見開く。張り詰めていたものがプツンと切れたように涙が溢れ、俯く。
「君たちはお互いにすれ違っちゃったんだね。大丈夫。明日になれば、またいつも通りに戻れるよ」
緒方の一つ一つの言葉が優しく、良は声を上げて泣いた。良が泣き止むまで、緒方は静かに傍にいてくれた。
第二十三章 終
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