年に一度の旦那様

五十嵐

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111 無事に終わったお茶会

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仕立て屋とクレアの一連の動きをじっと見ていたフリカは、これでアーミテージ子爵にはレイチェルに力がないと伝わると確信した。けれどそれは、今の事実として『力がない』と伝わるだけ。アーミテージ子爵にとって、レイチェルが力を持つ一族にあまり生まれない女性であることには変わりない。特に、仕立て屋を取り上げられたアーミテージ子爵には、今まで以上の価値を持つ存在になるだろう。それはディアーナも同じだが。

そしてフリカは、クレアがここにやって来て、プライドを捨ててまでレイチェルにすり寄ろうとした理由にも気づいた。『あの子たち』が意味するのはクレアの二人の娘。もしもレイチェルに力があったのならば、何らかの薬草を作らせたかったということだろう。アーミテージ子爵家で育ったクレアだ。加法と減法、それぞれの利用方法をよく知っているのだから。

それがもしも加法の力だったら、クレアは妊娠しづらくなった二人の娘が再び孕むようにしたかったのだろうか。しかしそれは、同じ女性、しかも母親としてどうなのだろう。目的のためには、クレアは娘の体すら道具扱いするということだ。クレアがレイチェルに何の力を期待し、どう使おうとしたのかは分からない。ただ今の表情から、フリカにはクレアが絶望に似た感情を抱いていることだけは分かったのだった。

「フリカ、部屋に戻りましょう」
「はい、奥様」

一連の出来事が終わっても、レイチェルは気を抜くことなく振る舞っている。その証拠に、レイチェルは耳が遠いことになっているフリカのために、大きな声で自室に戻ることを伝えた。

少しでも早くことを進めるために、邸の外にいるだろうカルセナにクレアが次にどう動くのか探ってもらわなくてはならない。だからレイチェルは大きな声を放ち、近くにいた使用人たちにお茶会が終わったことを告げた。あとは、それぞれの者がこの場を片付ける。たとえクレアが沈んだ表情でいようと、その場に留めることなくお引き取りいただくだけだ。

「あなた、後で状況を報告に来て」
「分かったわ」

フリカはそこにいたメイドに、全てが片付いたら報告に来るよういつもの大きな声で伝えたのだった。この邸内で起こった全ては、いずれ女主人となるレイチェルに報告されて当然だと植え付けるために。

レイチェルがそうされたくないと分かりながらも、計画のためフリカはそうするしかなかった。ロイがレイチェルを奥様と表す度にその表情が微かに揺れていたのだ。本当に愛する者から別の男の妻と言われるのは、どれだけ堪えていたのだろう。
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