5 / 44
4 僕は気づいてしまった 穂高side
しおりを挟む
ある日、僕は気づいてしまった。
その日は生徒総会があり、高等部の全生徒五百名ほどが講堂に集まっていた。一クラス三十人前後の五クラスが三学年という感じである。
生徒総会の議題は、五月末に行われる生徒会選挙のことや、今年の部活動費の話らしい。僕は、あぁ、選挙は藤代が誘ってきたやつか…なんて、ぼんやり思っていたのだ。
それはともかく。その生徒総会がはじまる前のことだった。
講堂は椅子が備えつけられているので、前列が三年A組、次がB組というように順番に生徒たちが座っていく。そうしてみんなが腰かけていく間、ワチャワチャと雑談するような、席に着く順番待ちのような時間があって、講堂の中は騒がしいような感じだった。
立つ生徒、座る生徒、友達と話している生徒と、生徒たちがひしめき騒がしい中で、僕はなんとなく須藤先輩の姿を目で探したのだ。
藤代は、須藤先輩のことを彼女じゃないと言っていた。それって、須藤先輩は振られちゃったということだろうか? 振られたのなら、園芸部に戻ってくればいいのに。とか、考えている。
藤代を、つい目で追ってしまうのだ…みたいなことを話していた須藤先輩の笑顔を思い出す。
今も藤代のことをみつめているのかな?
間もなく、僕は須藤先輩のことをみつけた。彼女は友達とおしゃべりをしながらも、ある一点をみつめている。そこにおそらく、藤代はいるのだろう。
彼女の目線を追うと、そこにはやはり藤代がいた。
でも。藤代は僕のことを見ていて、思わず目が合ってしまった。
ヤバいと思って、目をそらす。
そしてもう一度、須藤先輩を見た。
すると、須藤先輩と話していた隣の女子も同じ方向を向いている。それに気づいたんだ。
つまり、藤代を。
そのとき、おおよその生徒が、同じ方向を向いていることにも気づいちゃった。
なんか、ものすごく不気味。
えぇぇ、なに、これ? ちょっと、あり得なくない?
だけど、僕がざっと見回すと、女子生徒はもちろん、男子生徒も、教師までもが、藤代に視線を向けていたのだ。
多くの生徒たちの視線の行方を追って、もう一度、僕は藤代を見た。
目があった彼は、今度は僕ににっこりと笑いかける。
いやいや、この現象はいったいなんだ?
アイドルのコンサートなら、わかる。ライブで、観客の視線が舞台に集中する、それは当たり前のことだ。
でもここは、高校の講堂。今日の主役は生徒会で、藤代ではない。そして藤代は舞台に上がっているわけでもないのだ。
僕は、奇妙な吸引力のある藤代から目を引き剥がし、うつむく。
そして、気づいてしまったこの現象を、気持ち悪いと思った。
ひとりひとり、違う意志や考えを持つ者たちであるはずなのに、ひとりひとりの想い、そのベクトルが藤代に集約されている。
そして、多くの者たちの視線や想いを一身に受けているのに、それをまったく気に留めていない、藤代。
生徒たちの視線を一身に受け、彼らの想いを集めて固めたかのような、強く押しつけがましい視線を、藤代は僕に向けている。
やめてくれ。僕は誰からも注目されないような、普通の人間なんだ。
みんなが僕を見ているわけではないことは、わかっている。
しかし藤代の背後にある、ひとつひとつの視線を、藤代は集めて束にして、それを僕に放っているような。そんな強烈で重い視線の束、みたいに感じたのだ。
藤代の視線は、そんな熱視線。
目をそらしていても、顔に視線を当てられているのがわかるような。
見るな。見るな。
僕がそう思っていると、生徒総会がはじまる合図があり。僕に当てられていた彼の視線も外された。外されたことが、見なくてもわかった。
心底ほっとして。僕は席に着き。舞台上で話す生徒会役員に目を向ける。
議題をぼんやりと耳にしながら、僕は考えた。
あれは、異常だ。異様だ。
藤代は、普通の人たちとはどこか違う者のようだ。宇宙人、という非科学的なことは思わないけど。もし藤代が『俺は宇宙人だ』と言ったら、素で信じてしまいそう。
とにかく、彼は。中身が、本質が、僕のような一般人とは根本的に異なっているんじゃないのかな?
どこがどう、というのは。よくわからないけど。まだわからないけど。
もしかして、自分が他者に見られているというのに、気づいていないのかな?
そんなわけない。藤代が誰かに視線を向けたら、おそらく必ず目が合うんだ。それが続けば、いくら鈍感でもいつかおかしいと思うはずだよ。
藤代は変だ。でも、なにが変なのかは、わからない。
この日は、僕が藤代に異質ななにかを感じた、最初の日であった。
その日は生徒総会があり、高等部の全生徒五百名ほどが講堂に集まっていた。一クラス三十人前後の五クラスが三学年という感じである。
生徒総会の議題は、五月末に行われる生徒会選挙のことや、今年の部活動費の話らしい。僕は、あぁ、選挙は藤代が誘ってきたやつか…なんて、ぼんやり思っていたのだ。
それはともかく。その生徒総会がはじまる前のことだった。
講堂は椅子が備えつけられているので、前列が三年A組、次がB組というように順番に生徒たちが座っていく。そうしてみんなが腰かけていく間、ワチャワチャと雑談するような、席に着く順番待ちのような時間があって、講堂の中は騒がしいような感じだった。
立つ生徒、座る生徒、友達と話している生徒と、生徒たちがひしめき騒がしい中で、僕はなんとなく須藤先輩の姿を目で探したのだ。
藤代は、須藤先輩のことを彼女じゃないと言っていた。それって、須藤先輩は振られちゃったということだろうか? 振られたのなら、園芸部に戻ってくればいいのに。とか、考えている。
藤代を、つい目で追ってしまうのだ…みたいなことを話していた須藤先輩の笑顔を思い出す。
今も藤代のことをみつめているのかな?
間もなく、僕は須藤先輩のことをみつけた。彼女は友達とおしゃべりをしながらも、ある一点をみつめている。そこにおそらく、藤代はいるのだろう。
彼女の目線を追うと、そこにはやはり藤代がいた。
でも。藤代は僕のことを見ていて、思わず目が合ってしまった。
ヤバいと思って、目をそらす。
そしてもう一度、須藤先輩を見た。
すると、須藤先輩と話していた隣の女子も同じ方向を向いている。それに気づいたんだ。
つまり、藤代を。
そのとき、おおよその生徒が、同じ方向を向いていることにも気づいちゃった。
なんか、ものすごく不気味。
えぇぇ、なに、これ? ちょっと、あり得なくない?
だけど、僕がざっと見回すと、女子生徒はもちろん、男子生徒も、教師までもが、藤代に視線を向けていたのだ。
多くの生徒たちの視線の行方を追って、もう一度、僕は藤代を見た。
目があった彼は、今度は僕ににっこりと笑いかける。
いやいや、この現象はいったいなんだ?
アイドルのコンサートなら、わかる。ライブで、観客の視線が舞台に集中する、それは当たり前のことだ。
でもここは、高校の講堂。今日の主役は生徒会で、藤代ではない。そして藤代は舞台に上がっているわけでもないのだ。
僕は、奇妙な吸引力のある藤代から目を引き剥がし、うつむく。
そして、気づいてしまったこの現象を、気持ち悪いと思った。
ひとりひとり、違う意志や考えを持つ者たちであるはずなのに、ひとりひとりの想い、そのベクトルが藤代に集約されている。
そして、多くの者たちの視線や想いを一身に受けているのに、それをまったく気に留めていない、藤代。
生徒たちの視線を一身に受け、彼らの想いを集めて固めたかのような、強く押しつけがましい視線を、藤代は僕に向けている。
やめてくれ。僕は誰からも注目されないような、普通の人間なんだ。
みんなが僕を見ているわけではないことは、わかっている。
しかし藤代の背後にある、ひとつひとつの視線を、藤代は集めて束にして、それを僕に放っているような。そんな強烈で重い視線の束、みたいに感じたのだ。
藤代の視線は、そんな熱視線。
目をそらしていても、顔に視線を当てられているのがわかるような。
見るな。見るな。
僕がそう思っていると、生徒総会がはじまる合図があり。僕に当てられていた彼の視線も外された。外されたことが、見なくてもわかった。
心底ほっとして。僕は席に着き。舞台上で話す生徒会役員に目を向ける。
議題をぼんやりと耳にしながら、僕は考えた。
あれは、異常だ。異様だ。
藤代は、普通の人たちとはどこか違う者のようだ。宇宙人、という非科学的なことは思わないけど。もし藤代が『俺は宇宙人だ』と言ったら、素で信じてしまいそう。
とにかく、彼は。中身が、本質が、僕のような一般人とは根本的に異なっているんじゃないのかな?
どこがどう、というのは。よくわからないけど。まだわからないけど。
もしかして、自分が他者に見られているというのに、気づいていないのかな?
そんなわけない。藤代が誰かに視線を向けたら、おそらく必ず目が合うんだ。それが続けば、いくら鈍感でもいつかおかしいと思うはずだよ。
藤代は変だ。でも、なにが変なのかは、わからない。
この日は、僕が藤代に異質ななにかを感じた、最初の日であった。
217
あなたにおすすめの小説
金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について
kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって……
※ムーンライトノベルズでも投稿しています
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで
るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。
「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」
記憶を失ったベータの少年・ユリス。
彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。
封じられた記憶。
拭いきれない心の傷。
噛み合わない言葉と、すれ違う想い。
謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、
ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。
触れたいのに、触れられない。
心を開けば、過去が崩れてしまう。
それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。
――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。
過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。
許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。
孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。
これは、ふたりの愛の物語であると同時に、
誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。
運命に抗うのは、誰か。
未来を選ぶのは、誰なのか。
優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。
【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
ホマレ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる