【完結】いいなりなのはキスのせい

北川晶

文字の大きさ
4 / 44

3  僕と藤代は相性が最悪  穂高side

しおりを挟む
 花壇に水やりを終えたあと、いきなり藤代に生徒会に立候補しようと言われた。
 戸惑いがはなはだしいが。まぁとりあえず、正直に答えた。

「興味、ない」

 そもそも、僕が園芸部にいるのは、部活にあまり時間を取られたくないからだ。
 将来の夢である医者になるために勉強をがんばっている。でも油断なく取り組まないとすぐに成績が落ちてしまうから、他のことに時間を割かれたくない。
 本当は帰宅部希望だけど、うちの学校は、一度はどこかしらの部活に所属しなければならないルールがある。
 で、僕は一度入部しちゃうと、なんとなく退部できなくなっちゃうんだよな。いかにも『仕方なく入りました』という感じに見られたくない、みたいな?
 実際は仕方なく入ったのだから、表面を取り繕った無駄なプライドなんだけど。少しでも良い人間だと思われたいと思うのは、人間だもの、仕方がないよね。

 あと、須藤先輩に頼まれたりもしたし。承諾したことをすぐに投げ出すのは、無責任。そう思う、ちょっと難儀な気質というか。自分でもそういうところ、融通効かないなって思うけど。
 まぁそれに、部活を最後まで全うすると内申書に良い影響があると聞くしな。メリットあるから無駄じゃない。うむ。

 というわけで、僕には生徒会をやる余裕も時間もないんだ。

 それに、藤代がどういうつもりで僕を生徒会に誘ったのか、よくわからない。マジで、なんで?
 あと、藤代と一緒に生徒会に入るの、普通に嫌。
 彼は僕の暗黒部分をえぐるのだ。そばにいたくない。
 藤代がそばにいなければ、普通の人でいられる。普通の人でいさせてぇ。

「え? いや、そんなに簡単に断らないでよ。もう少し、考えて。俺が声をかけたのは、穂高だけなんだよ」
 それは『俺が特別に選んだんだから、光栄だろう』みたいな意味?
 いや、それはうがち過ぎだろうか。妬みからの嫉み…。
 あぁ、しかし。藤代が相手だと、やっぱりそういう卑屈な考えがあふれ出てきちゃうんだ。だからそばにいたくないのにぃ。
「じゃあさ、穂高が生徒会副会長に立候補してくれたら、俺、園芸部にも入る。そうしたら園芸部も存続できるかもしれないよ?」
 良い案を思いついたという顔で、藤代は言うけど。
 僕は首を横に振った。
「藤代が園芸部に入ったら、たぶん部員の心配はなくなるだろう。でも、藤代目当ての人ばかりで、本当に土いじりしたい人は来ないでしょ。そんな人が何人いても、邪魔なだけじゃない?」
 いやいや、本来園芸部に、部員を選ぶような余裕などない。誰でもウェルカムである。
 そして僕も、別に好きで土いじりしたい人ではない。ないがぁ。
 だけど、藤代と対峙すると、どうしても反発してしまう。
 どうしても、嫌な言い方になってしまう。
 そういう自分に出会うたびに、自分の器の小ささや嫌な部分を思い知らされ失望してしまう。

 どうして、普通に話ができないんだ? どうして、イライラしちゃうんだ?

 これ以上、藤代の前に立っていたら、どんどん自分が嫌なやつになる。そう思って、僕は藤代の横をすり抜けて、ジョウロを用具入れに片付けに行こうと思った。
 自分の目線が、彼の胸の辺りだった。でかいな。いや、僕が小さいのだ。
 そんな身長差すら、腹立たしさが増幅する。
 やはり、僕と藤代は相性が最悪だな。

「待って、穂高」
 強く肩を掴まれ、乱暴に向かい合わせられた。
 自分の薄い肩口を、彼の大きな手が楽に覆いこむ。
 握る力は強くて、行く手を妨げられる。
 こういうのが男らしいと言うのだなと思い、やはり自分にはない要素に嫉妬してしまうのだった。

「俺は、穂高と一緒に生徒会やりたい。なぁ、承諾してくれるよな?」
 藤代はやけに真剣みを帯びている。眉を寄せ、眼光するどく僕を見た。
 友達と一緒のときによく見る、笑顔を張りつけた彼の顔よりも、今の方が人間味がある。それだけ、一生懸命勧誘しているのだろうけど。
 どれだけ彼が真剣でも、真摯にお願いしても、僕の答えはひとつだ。

「断る。手を離してくれ」

 そっと肩をゆすると、案外簡単に、藤代の手は離れた。
 目を丸くして、びっくり、というか呆然としている。
 なんとなく、ショックを受けているみたいな顔? 断られるとは思わなかった、みたいな?
 どんだけ、自信満々か。
 そんな藤代から、僕は視線を外して小走りでその場を去った。

 彼から離れて、用具室にジョウロを片付けていると、遅ればせながら心臓がどくどくと高鳴り、なんだか息苦しくなった。理由はよくわからないが、藤代に『承諾してくれるよな?』って断定されたとき、無意識にうなずきそうになって、焦ったからかもしれない。
 自分にはそんな気はまったくなかったのに、流れとか空気とかで? そうしなければいけないような気に、少しなったのだ。
 ちゃんと断れて良かったって、今は思う。
 変に空気を読まないで、良かった。
 マジで、生徒会なんかやっている暇はないんだからな。

 それに。藤代が美形なことは、僕も認めている。そんな彼に、あんな間近に近寄られ、迫られたら、きっと誰でもその迫力に呑まれちゃうよ。ドキドキしたのはそのせいだ。

 自分の気持ちを自分で分析して、解釈し。そのあと、納得した僕は普通に帰宅した。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。

ホマレ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。 その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。 胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。 それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。 運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで

るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。 「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」 記憶を失ったベータの少年・ユリス。 彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。 封じられた記憶。 拭いきれない心の傷。 噛み合わない言葉と、すれ違う想い。 謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、 ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。 触れたいのに、触れられない。 心を開けば、過去が崩れてしまう。 それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。 ――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。 過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。 許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。 孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。 これは、ふたりの愛の物語であると同時に、 誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。 運命に抗うのは、誰か。 未来を選ぶのは、誰なのか。 優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。

この噛み痕は、無効。

ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋 α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。 いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。 千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。 そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。 その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。 「やっと見つけた」 男は誰もが見惚れる顔でそう言った。

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

処理中です...