貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ

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12話

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 尻すぼみに弱くなる音量で言うと、千明さんは目を丸くして固まった。何か聞かれる前に、間髪入れずに続ける。

「千明さん、キスはしてくれるけど、それ以上は何もないから、不安になってて!モテるだろうし、俺以外に相手がいても不思議じゃないし……!それに、やっぱり俺なんかじゃ、千明さんはその……」
「興奮出来ないんだと思った、ってこと?」

 さっきは固まっていた千明さんが、今では口元を緩めて俺を見つめている。怒ってないだろうかと不安で見つめ返すと、我慢できないといった様子で「はは」と笑われた。

「えっ、なんで笑うんすか」
「ごめんごめん。もしかしてこのまま別れ話でもされるのかと思ってたからさ」

 別れ話なんてするわけないじゃないっすか。
 と言う間もなく俺は千明さんに腕を引かれ、そのまま抱き締められた。

「付き合うのが嫌になったんじゃなくて、安心した」

 はぁ、と息を吐きながらつぶやく千明さんの背中に、俺はぎこちなく手を回す。

「……ホントに馬鹿みたいな悩みっすよね……」
「そんなことないって。俺が不安にさせたことに変わりはないしね」

 そこでいったん言葉を区切った千明さんは「……こんなこと暴露すんの、カッコ悪いんだけどさ」と言い訳のような口調で前置きをしてから続けた。

「キスしかしなかったのは、理性的な大人だと思われたかったからなんだよ」
「理性的……?」
「余裕無い年上って、ダサいじゃん」

 千明さんは俺の首元から顔を上げると、疑問をひとりごちる俺の唇を舌で舐めた。

「っ!?千明さ……ンっ」

 狼狽して口を開いたら、千明さんはキスを仕掛けてきた。舐めるような、舐め回すような、そんなキス。その刺激に、俺の中が再び熱を持ち始める。

「……まぁ要するに、『これ以上すると止まんなくなるな』って思ったからキスで止めてただけで」

 唇を離しただけの至近距離でそう言った千明さんは、顔を赤くした俺の体をベッドへ沈ませた。




 水音が部屋に響く。
 耳を塞ぎたくなるような、卑猥な水音だ。
 今まで自分一人でしか聞いてこなかったその音を、千明さんに聞かれていると思うと、俺は頭が沸騰しそうだった。

「い、千明さんっ……あ、待って……!」

 誘惑作戦とか自分で言ってたくせに、いざ千明さんに迫られると何故か拒否のような声が出る。俺の下半身を上下に扱く千明さんを止めようと体を上げた。

「強かった?」
「いや、そう、じゃなくてっ……」

 喋ってる間も千明さんは的確に刺激を与えてくる。
 手つきは完全にお手の物で、俺は為す術もなく快感を一身に受けていた。そもそも、千明さんに自分の下半身を見られていることだけでも耐えるのに精一杯で、千明さんの手が自分の局部を触っているなんて事象は到底耐えられる案件ではなかった。

「その、は、はずかしくて……!」
「でも巡の言う『キス以上』ってこういうことでしょ?」

 少し意地悪く笑った千明さんが言っていることは誠にその通りで、俺はぐうの音も出せない。出せるのは羞恥を含んだ吐息だけだ。

「ぁ、あっ……」
「巡、可愛い」

 まぶたにキスを落とされる。俺は羞恥やら快楽やら、『積極性を忘れたのか』と言ってくる自分やらと戦いながら、いろいろな感情に襲われて気が付けば千明さんのスラックスに手をかけていた。

「千明さんも脱いでくださいよっ……!」

 と半ばやけくそ気味に無理矢理ベルトを外そうともがく。自分だけ下半身丸出しでいることにそろそろ羞恥の限界が来ていた。

「待って待って。脱ぐから」

 千明さんは狼狽えた様子も無く、すんなりベルトを外してベッドの端に投げ、腰に手をかけるとスラックスごと下着を脱いだ。膝まで服を脱いでいる千明さんの姿は扇情的で、こんなあっさり脱がないと思っていた俺はその姿から目を離せないでいた。

「そんなに見られると流石にちょっと恥ずかしい」
「す、みません」

 慌てて目をそらすと、千明さんは俺の手を取って自分の下半身にあてた。びっくりして、結局そらした視線をすぐに元の位置に戻すことになる。

「ね?俺も興奮してるでしょ」

 欲情を孕んだ瞳でそう言われ、俺の脳には安堵と喜びが駆け巡る。
 小さい声で「……はい」と答えると、千明さんは体を密着させるように俺に覆いかぶさってきた。存在を主張する下半身同士が触れ合い、その行為のいやらしさに興奮が増す。俺はもう達してしまいそうだった。

「千明さん、俺、あの……!」
「もうちょっと頑張って。一緒に、ね」

 千明さんは局部をこすり合わせるように腰を緩く動かした。ふたり分の水音が部屋に流れ始め、俺は目も耳も感触も全てが快楽に飲み込まれていくのを感じる。

「は……ぁ……っ……!」

 千明さんが局部を手で包みこみ、俺のものと一緒に扱く。

 あぁ、気持ちいい。
 ワケが分からない。
 気持ちがいい。

 今までの人生で感じたことのない快感に眉を寄せながら、俺の頭は同じ感想を繰り返していた。

「ち、あきさんっ……俺、イっちゃっ……!」
「ん。俺も……っ」

 千明さんは俺の服を胸元あたりまでたくし上げて、ヘッドボードのティッシュを手に取った。さっきより余裕を無くした千明さんの表情に、腰が勝手にうずく。

「あ、出ますっ……もうっ…!」
「……っ」

 俺の言葉と同時に、ふたりで欲を吐き出した。
 汚れないようにティッシュで受け止める千明さんを見て、あぁやっぱり慣れてるなと感心と切なさを抱えながら俺は脱力する。

「はぁっ……は……」

 射精後特有の倦怠感が一気に襲ってきて、まぶたが重くなってくる。

「大丈夫?」

 ふき取り終わったティッシュをゴミ箱に投げた千明さんは、気が付けばもうベルトを締めている。

「だ、だいじょうぶです」

 急いで下着と部屋着を引き上げて起き上がろうとすると、

「いいよ、寝てて。疲れたでしょ」

 千明さんは俺に軽いキスをして、「俺風呂入ってくるから」と毛布をかけた。
 俺は「わかりました」と答えた時には既にまどろみの中に落ちかけていて、千明さんがもう1度額にキスをしたことには気が付かなかった。
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