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休日
16話 お風呂
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夜になるにつれて私のテンションが下がっていく。明日からまた仕事が始まる。いやだぁ…。仕事したくないお風呂入りたくない夜更かししたいぃぃ…。週休三日制の未来はいつ来るんですかぁぁ…。
「お風呂。そうだ花雫、お風呂に入らないとね!」
「ううう…めんどくさい…。ちょっと10分仮眠するからそのあとで…」
「そうやってあとであとでって言って結局夜入らずに朝入ってるじゃないか毎日~!」
「ギリギリまであがいていたいのよ…」
「花雫はなにと戦ってるの?!いくらあがいたって明日は来るんだよ!」
「綾目ぇ…なんて非情なことを言うの…?もしかしたらビルが台風で吹っ飛んで仕事休みになるかもしれないじゃない…」
「残念だけど今日も明日も晴れだよ!台風は来ないし来ない方がいいんだよ」
「分かってるわよぉ…」
布団に潜り込んだ私の腕を綾目がぐいぐいと引っ張ってお風呂に連れて行こうとする。私は引きずられながら「いやぁ~…」と弱々しい声を出す。薄雪は駄々をこねている私を興味深げに眺めながらあとをついてきた。
「そんなに風呂がきらいなのですか?」
「きらいです…。入ったらさっぱりして気持ちいんだけど入るまでが億劫すぎて無理…。あと髪を乾かすのがめんどくさい」
「めんどくさいことばっかりだなあ花雫は!」
「生きることがもうめんどくさいよぉ…」
「まだ29年しか生きてないのにそんなこと言う!」
「29年"も"生きたのよ!もう充分ですありがとうございました」
「きっとヒトとあやかしの時の流れかたが違うんだろう。…あと、なぜ入りたくもない風呂に入る必要があるんでしょうか。入りたくなければ入らなければよいのでは」
「くっさい頭で仕事行くなんてどんな目で見られるか分からない…。外ではちゃんとしないといけないからぁ…」
「思うままに生きられないのがヒトの苦しみだね。ヒトとはなんと窮屈なイキモノなのだろう」
「…そういえば薄雪と綾目はお風呂に入らなくてもくさくならないですね。むしろ花の良い匂いがする」
「あやかしの体はあってないようなものだから。くさくなんてならないよ」
「そっかあ…いいなあ。わたしもあやかしになりたい…」
「ふふ。本当になりたくなったらいつでもしてあげますよ。私の眷属として」
「その代わり何千年も生きないといけないけどね」
「…遠慮します」
くさくならない代わりに何千年も生きないといけないとか代償が大きすぎるでしょ。
「私は一度風呂というものに入ってみたいな。大昔に温泉に浸かったことがあるけれどとても気持ちがよかった」
「あ、入ってみますか?お湯ためないといけないけど」
「いいのですか?花雫の手を煩わせてしまいますが」
「大丈夫ですよ。お湯ためるだけですし。…あ、お風呂洗わなきゃ」
お風呂洗うのめんどくさい…。やっぱり明日にしてもらおうかな。いや明日は平日だからしんどいし来週にしてもらおう…。そんなことを考えていると、心を読んだであろう綾目がため息をつき頭をかいた。
「…薄雪さまが入るのなら僕が洗うよ。お湯もためとく。お湯ためる前に花雫はシャワーを浴びて!ユニットバスなんだから」
「分かりましたぁ…」
「さあ早く早く」
綾目は私が服を脱いでいる間に、湯がすぐ出るようシャワーの蛇口を前もってひねってくれた。地味にありがたい気遣いが沁みる。ユニットバスに入るとすでに暖かくなった空気のおかげで寒くない。シャワーの湯加減も完璧。やっぱりシャワーを浴びると気持ちがいい。頭を洗うと腕が疲れるけどシャンプーの香りは好き。
シャワーから上がると、浴室の外にバスタオルと下着、寝間着が置かれていた。お母さん、わたし綾目と結婚したい。
「綾目」
「ひぅっ…」
「明日から私が花雫のバスタオルを用意するからね」
「え?!いえ。そんなこと薄雪さまにさせられません!」
「するからね」
「…は、はぃぃ…」
「お風呂。そうだ花雫、お風呂に入らないとね!」
「ううう…めんどくさい…。ちょっと10分仮眠するからそのあとで…」
「そうやってあとであとでって言って結局夜入らずに朝入ってるじゃないか毎日~!」
「ギリギリまであがいていたいのよ…」
「花雫はなにと戦ってるの?!いくらあがいたって明日は来るんだよ!」
「綾目ぇ…なんて非情なことを言うの…?もしかしたらビルが台風で吹っ飛んで仕事休みになるかもしれないじゃない…」
「残念だけど今日も明日も晴れだよ!台風は来ないし来ない方がいいんだよ」
「分かってるわよぉ…」
布団に潜り込んだ私の腕を綾目がぐいぐいと引っ張ってお風呂に連れて行こうとする。私は引きずられながら「いやぁ~…」と弱々しい声を出す。薄雪は駄々をこねている私を興味深げに眺めながらあとをついてきた。
「そんなに風呂がきらいなのですか?」
「きらいです…。入ったらさっぱりして気持ちいんだけど入るまでが億劫すぎて無理…。あと髪を乾かすのがめんどくさい」
「めんどくさいことばっかりだなあ花雫は!」
「生きることがもうめんどくさいよぉ…」
「まだ29年しか生きてないのにそんなこと言う!」
「29年"も"生きたのよ!もう充分ですありがとうございました」
「きっとヒトとあやかしの時の流れかたが違うんだろう。…あと、なぜ入りたくもない風呂に入る必要があるんでしょうか。入りたくなければ入らなければよいのでは」
「くっさい頭で仕事行くなんてどんな目で見られるか分からない…。外ではちゃんとしないといけないからぁ…」
「思うままに生きられないのがヒトの苦しみだね。ヒトとはなんと窮屈なイキモノなのだろう」
「…そういえば薄雪と綾目はお風呂に入らなくてもくさくならないですね。むしろ花の良い匂いがする」
「あやかしの体はあってないようなものだから。くさくなんてならないよ」
「そっかあ…いいなあ。わたしもあやかしになりたい…」
「ふふ。本当になりたくなったらいつでもしてあげますよ。私の眷属として」
「その代わり何千年も生きないといけないけどね」
「…遠慮します」
くさくならない代わりに何千年も生きないといけないとか代償が大きすぎるでしょ。
「私は一度風呂というものに入ってみたいな。大昔に温泉に浸かったことがあるけれどとても気持ちがよかった」
「あ、入ってみますか?お湯ためないといけないけど」
「いいのですか?花雫の手を煩わせてしまいますが」
「大丈夫ですよ。お湯ためるだけですし。…あ、お風呂洗わなきゃ」
お風呂洗うのめんどくさい…。やっぱり明日にしてもらおうかな。いや明日は平日だからしんどいし来週にしてもらおう…。そんなことを考えていると、心を読んだであろう綾目がため息をつき頭をかいた。
「…薄雪さまが入るのなら僕が洗うよ。お湯もためとく。お湯ためる前に花雫はシャワーを浴びて!ユニットバスなんだから」
「分かりましたぁ…」
「さあ早く早く」
綾目は私が服を脱いでいる間に、湯がすぐ出るようシャワーの蛇口を前もってひねってくれた。地味にありがたい気遣いが沁みる。ユニットバスに入るとすでに暖かくなった空気のおかげで寒くない。シャワーの湯加減も完璧。やっぱりシャワーを浴びると気持ちがいい。頭を洗うと腕が疲れるけどシャンプーの香りは好き。
シャワーから上がると、浴室の外にバスタオルと下着、寝間着が置かれていた。お母さん、わたし綾目と結婚したい。
「綾目」
「ひぅっ…」
「明日から私が花雫のバスタオルを用意するからね」
「え?!いえ。そんなこと薄雪さまにさせられません!」
「するからね」
「…は、はぃぃ…」
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