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二週目
31話 ユメクイ
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応接間を出た薄雪と綾目はふよふよ浮いておばあさんの寝室へ入った。
広い和室の中央には、広げたままの布団と畳まれた布団が隣り合って敷かれていた。広げたままの布団の枕元には、小さな写真立てに入ったご主人の写真が飾られている。
薄雪は天井を見上げた。そこには、体が黒いモヤに覆われた獣型のあやかしが眠っていた。綾目はコソコソと薄雪に耳打ちした。
「薄雪さま」
「ああ。アレだね。彼女のユメをクウモノ」
「どうしますか?僕がアレを食えばいいですか?」
綾目が期待に目を輝かせて薄雪の袖を掴んだ。薄雪は扇子でぺちりと綾目の頭を叩き、首を振る。
「せっかく長年かけて清らかになった体をまた穢すつもりかい?」
「むぅ…」
「あんなモノを食えば、たちどころに醜くなりますよ。見てごらんなさい。見境なくユメを食ったものだから、悪いユメが体から溢れている。ああおぞましい」
「どうせ食うなら良い夢を食えばいいのに。なぜでしょう」
「コチラ側に来てしまったせいですよ。常に体をユメで満たしていないと消えてしまう。だからユメを選ぶ余裕がないのさ」
「ふうん。それで、どうするんですか?浄化して消滅させますか?それともシンプルに殺しますか?」
「浄化して、良いあやかしにしましょう」
「ああ、一番めんどくさいやつだ」
薄雪がパチンと扇子を閉じた。その音にユメクイが目を覚ます。ソレは薄雪の姿を見て震えあがった。
《ウ…ウスユキサマ…ダト…?ナゼ コチラガワニ イラッシャル…》
「おはようございます、ユメクイ。それはこちらの台詞です。なぜコチラ側に?」
《コチラガワニ ユメヲミテ シマッタ。 アチラガワニハ ナイユメ アルトオモッタ。 ダガ ナニモナカッタ。 ウツクシイユメナド ホトンドナイ》
「…それで、消えぬために食いたくもないユメを食い続け…そのような醜い姿になってしまったんですね」
《アア…。ミニクイカ ワタシハ…》
「ええ。とても」
「ちょっと!薄雪さま!デリカシーがないです!それ言われるとすっごく傷つくんですよ!!」
「醜いモノに美しいとは、とてもじゃありませんが言えません」
「ああ…昔を思い出す…」
悪びれもなくひどいことを言い放つ薄雪に、綾目は額に手を当ててため息をついた。そんな彼にユメクイが小さく笑った。
《カマワンヨ コワッパ。 ワタシハ キニシナイ。 ウスユキサマガ ソウオッシャルノデアレバ ワタシハ ヒドク ミニクイノダロウ》
ユメクイは伸びをしてぽとりと床に落ちた。そして薄雪の前でかしずいた。
「ユメクイ。なぜこの家に来たのですか」
《ヒサカタブリニ ウツクシイ ユメヲ ミツケタ。 アイタイト ネガワレ ムコウガワカラ アイニキタ カラダナキモノガ ミセル ユメ。 クワズニハ イラレナカッタ》
「確かに彼女のユメは美しい。あなたが食いたくなる気持ちも分かります。ですが私からの願いだ。彼女のユメを、そのままにしてあげてくれないか」
《ウスユキサマ。 タトエ ウスユキサマノ ネガイデアレド キキイレルコトハ ムズカシイ。 ワタシハ ユメヲ クウ アヤカシ。クイタイト オモウ ユメヲ クワネバ キエル》
「分かっています。なので、代わりに私のユメを差し上げましょう」
《エ》
「え!?」
薄雪の言葉に驚いたユメクイと綾目が目をしばたいた。綾目は薄雪の着物を掴み、ぐいぐいと引っ張っている。
「薄雪さま!?正気ですか!?あなたのユメは大吉夢…何よりも価値のあるユメです…!ソレが欲しくて何人の大あやかしが大切なモノを差し出そうとしたか…!そんなモノを、こんな小さなあやかしに差し出すなんて…!!」
「おおげさですよ、綾目。ただ私が見たユメなだけではありませんか。与えられたモノに最上の幸福が訪れるだけの、ただのユメですよ」
「それがとんでもないユメだと言っているんです!!!そんなモノ…しかも薄雪さまの妖力がたっぷり沁み込んだソレを与えられたら、このちっぽけなあやかしが一瞬にして大あやかしになってしまいますよ!!」
「いいではありませんか」
なにをそんなことで騒いでいるんだ、というように薄雪が呆れた顔をしている。綾目は綾目で、どうしてそんな簡単に大切なモノを差し出すんだと呆れた顔で返していた。
綾目がそのような反応をするのも当然だった。あやかしにとってユメは、魂の一部であり、生き筋を動かすほど大切なモノのだった。吉夢と呼ばれる良い夢を見れば幸福が訪れ、凶夢と呼ばれる悪い夢を見れば不幸が訪れる。そのため、あやかしの間では、吉夢を代償と交換に譲り受けたり、凶夢を代償と交換に食ってもらう、もしくは清めてもらうことはよくあることだった。
大あやかしの中でも特に清らかな妖力を持つ高貴な存在である薄雪の見る夢は、全てが大吉夢であり、その上ユメには彼の妖力が沁み込んでいる。彼から大吉夢を与えられようものなら、最上の幸福と最上の妖力を得ることができる。あやかしにとってそれは、手足の一本や二本失ってもお釣りが出るほど価値のあるものだった。
今まで幾度となく大吉夢を求めるあやかしが薄雪の前に現れたが、薄雪は代償を受け取ろうとしなかった。無償で与えられたモノにはいつか必ずツケがくる。それを知っているあやかしたちは、大吉夢を与えられたあとに降りかかるツケが恐ろしくて結局誰ももらわなかった。
ユメクイもそのことを知っていた。なので震えながら首を振った。
《シカシ…ソレヲ イタダイタトシテ ワタシニ カエセルモノハ ナイ》
「そうですよ!こんな小物に代償が払えるはずありません!」
「綾目」
「ひぅっ」
静かに呟いた薄雪に、綾目が震えあがり薄雪の背後へ引っ込んだ。薄雪は「それでいい」と囁き、ユメクイの前でしゃがんだ。閉じた扇子でユメクイのまわりに漂う黒いモヤを弄びながら、ソレに優しく声をかけた。
「ユメクイ。私のユメを与える代わりに、私の願いを叶えてください」
「薄雪さまが、はじめて代償を求めた…」
《ワタシニ デキルコトデアレバ ナンナリト》
「私のユメを食ったあなたは大あやかしとなるでしょう。どのようなユメを食っても、自然と浄化してあなたの命を繋ぎます。その力を以て、これからはヒトの悪夢を食ってあげ、ヒトに吉夢を運ぶ存在となりなさい」
《ソ…ソノヨウナコトデ ヨロシイノデスカ》
「はい。私はヒトを愛するあやかしです。ヒトが幸せになることが私にとっての幸せ。あなたは私の使者として、これからはヒトを幸せにしてほしい。それが例えユメの中だけだとしても、コチラ側のヒトにとっては嬉しいことだろうから」
ユメクイが深くこうべを垂れる。薄雪は微笑み、扇子を広げて一振りした。
《……!》
瞬く間に黒いモヤが浄化され、本来のユメクイの姿があらわになった。茶色の毛に覆われた、小さなイノシシのような姿をしている。
続いて薄雪が扇子に息を吹きかけた。無数の花びらが舞い、ユメクイの中へ溶け込んでいく。ユメクイは苦し気なうめき声を漏らした。
《オオ…オオオ…》
「浄化した体でも、私のユメと妖力が清らかすぎますか。しばらく苦しいでしょうが我慢なさい」
「薄雪さま、大丈夫でしょうか…?あなたの清らかすぎる妖力は毒にもなりえます…」
「大丈夫だよ。ヒトの食べ物を口にしている今の私は、森にいた頃よりもずっと穢れていますから」
「それはそうですが…それでも清らかなことには変わりありません…」
綾目が不安げに見守っている中、ユメクイは必死に苦痛に耐えていた。青い血を吐き、ブルブルと痙攣している。大きな叫び声をあげたかと思えば、バタリと倒れて意識を失った。
「わ!死んだ!!」
「死んでいません。気を失っただけです」
ぐったりと倒れていたユメクイが最後に大量の血を吐いた。その瞬間、ユメクイの体が何倍にも大きくなり、毛が真っ白になった。内心ヒヤヒヤしていたのか、薄雪が安堵のため息を漏らす。
「良かった。ユメクイの体に私のユメと妖力が浸透したようですね」
「一気に神獣っぽくなった…」
「ユメクイ。起きなさい」
薄雪が扇子でユメクイをつつく。ユメクイは体をビクつかせ、慌てて起き上がった。
《わ、私は意識を失っていたのでしょうか。薄雪様の前でとんだご無礼を。申し訳ありません》
「かまいませんよ。気分は?」
《澄み切っています。それに…妖力が沸き上がり、今までにないほどの満腹感》
「それはよかった。さて、早速ですがユメクイ。私からのお願いです。あなたが食った、ココの女性のユメを返してあげなさい」
《御意》
「それともうひとつ。ある女性の悪夢を食ってあげて欲しい。特にシゴトの夢は一片の欠片もなく。そしてこれ以上ないほどの吉夢を。できたら毎晩」
《御意》
「あー…」
綾目は呆れた顔で主人を見上げた。何よりも価値のあると言われている夢をやすやすと差し出したのは、どうやらこのためだったようだ。
「薄雪さまはいつもそうですね」
「ん?」
「そんなことをしていたら、また喜代春に怒られますよ」
「ふふ。叱られたってやめられない。なぜならソレが私の生きている意味なのだから」
広い和室の中央には、広げたままの布団と畳まれた布団が隣り合って敷かれていた。広げたままの布団の枕元には、小さな写真立てに入ったご主人の写真が飾られている。
薄雪は天井を見上げた。そこには、体が黒いモヤに覆われた獣型のあやかしが眠っていた。綾目はコソコソと薄雪に耳打ちした。
「薄雪さま」
「ああ。アレだね。彼女のユメをクウモノ」
「どうしますか?僕がアレを食えばいいですか?」
綾目が期待に目を輝かせて薄雪の袖を掴んだ。薄雪は扇子でぺちりと綾目の頭を叩き、首を振る。
「せっかく長年かけて清らかになった体をまた穢すつもりかい?」
「むぅ…」
「あんなモノを食えば、たちどころに醜くなりますよ。見てごらんなさい。見境なくユメを食ったものだから、悪いユメが体から溢れている。ああおぞましい」
「どうせ食うなら良い夢を食えばいいのに。なぜでしょう」
「コチラ側に来てしまったせいですよ。常に体をユメで満たしていないと消えてしまう。だからユメを選ぶ余裕がないのさ」
「ふうん。それで、どうするんですか?浄化して消滅させますか?それともシンプルに殺しますか?」
「浄化して、良いあやかしにしましょう」
「ああ、一番めんどくさいやつだ」
薄雪がパチンと扇子を閉じた。その音にユメクイが目を覚ます。ソレは薄雪の姿を見て震えあがった。
《ウ…ウスユキサマ…ダト…?ナゼ コチラガワニ イラッシャル…》
「おはようございます、ユメクイ。それはこちらの台詞です。なぜコチラ側に?」
《コチラガワニ ユメヲミテ シマッタ。 アチラガワニハ ナイユメ アルトオモッタ。 ダガ ナニモナカッタ。 ウツクシイユメナド ホトンドナイ》
「…それで、消えぬために食いたくもないユメを食い続け…そのような醜い姿になってしまったんですね」
《アア…。ミニクイカ ワタシハ…》
「ええ。とても」
「ちょっと!薄雪さま!デリカシーがないです!それ言われるとすっごく傷つくんですよ!!」
「醜いモノに美しいとは、とてもじゃありませんが言えません」
「ああ…昔を思い出す…」
悪びれもなくひどいことを言い放つ薄雪に、綾目は額に手を当ててため息をついた。そんな彼にユメクイが小さく笑った。
《カマワンヨ コワッパ。 ワタシハ キニシナイ。 ウスユキサマガ ソウオッシャルノデアレバ ワタシハ ヒドク ミニクイノダロウ》
ユメクイは伸びをしてぽとりと床に落ちた。そして薄雪の前でかしずいた。
「ユメクイ。なぜこの家に来たのですか」
《ヒサカタブリニ ウツクシイ ユメヲ ミツケタ。 アイタイト ネガワレ ムコウガワカラ アイニキタ カラダナキモノガ ミセル ユメ。 クワズニハ イラレナカッタ》
「確かに彼女のユメは美しい。あなたが食いたくなる気持ちも分かります。ですが私からの願いだ。彼女のユメを、そのままにしてあげてくれないか」
《ウスユキサマ。 タトエ ウスユキサマノ ネガイデアレド キキイレルコトハ ムズカシイ。 ワタシハ ユメヲ クウ アヤカシ。クイタイト オモウ ユメヲ クワネバ キエル》
「分かっています。なので、代わりに私のユメを差し上げましょう」
《エ》
「え!?」
薄雪の言葉に驚いたユメクイと綾目が目をしばたいた。綾目は薄雪の着物を掴み、ぐいぐいと引っ張っている。
「薄雪さま!?正気ですか!?あなたのユメは大吉夢…何よりも価値のあるユメです…!ソレが欲しくて何人の大あやかしが大切なモノを差し出そうとしたか…!そんなモノを、こんな小さなあやかしに差し出すなんて…!!」
「おおげさですよ、綾目。ただ私が見たユメなだけではありませんか。与えられたモノに最上の幸福が訪れるだけの、ただのユメですよ」
「それがとんでもないユメだと言っているんです!!!そんなモノ…しかも薄雪さまの妖力がたっぷり沁み込んだソレを与えられたら、このちっぽけなあやかしが一瞬にして大あやかしになってしまいますよ!!」
「いいではありませんか」
なにをそんなことで騒いでいるんだ、というように薄雪が呆れた顔をしている。綾目は綾目で、どうしてそんな簡単に大切なモノを差し出すんだと呆れた顔で返していた。
綾目がそのような反応をするのも当然だった。あやかしにとってユメは、魂の一部であり、生き筋を動かすほど大切なモノのだった。吉夢と呼ばれる良い夢を見れば幸福が訪れ、凶夢と呼ばれる悪い夢を見れば不幸が訪れる。そのため、あやかしの間では、吉夢を代償と交換に譲り受けたり、凶夢を代償と交換に食ってもらう、もしくは清めてもらうことはよくあることだった。
大あやかしの中でも特に清らかな妖力を持つ高貴な存在である薄雪の見る夢は、全てが大吉夢であり、その上ユメには彼の妖力が沁み込んでいる。彼から大吉夢を与えられようものなら、最上の幸福と最上の妖力を得ることができる。あやかしにとってそれは、手足の一本や二本失ってもお釣りが出るほど価値のあるものだった。
今まで幾度となく大吉夢を求めるあやかしが薄雪の前に現れたが、薄雪は代償を受け取ろうとしなかった。無償で与えられたモノにはいつか必ずツケがくる。それを知っているあやかしたちは、大吉夢を与えられたあとに降りかかるツケが恐ろしくて結局誰ももらわなかった。
ユメクイもそのことを知っていた。なので震えながら首を振った。
《シカシ…ソレヲ イタダイタトシテ ワタシニ カエセルモノハ ナイ》
「そうですよ!こんな小物に代償が払えるはずありません!」
「綾目」
「ひぅっ」
静かに呟いた薄雪に、綾目が震えあがり薄雪の背後へ引っ込んだ。薄雪は「それでいい」と囁き、ユメクイの前でしゃがんだ。閉じた扇子でユメクイのまわりに漂う黒いモヤを弄びながら、ソレに優しく声をかけた。
「ユメクイ。私のユメを与える代わりに、私の願いを叶えてください」
「薄雪さまが、はじめて代償を求めた…」
《ワタシニ デキルコトデアレバ ナンナリト》
「私のユメを食ったあなたは大あやかしとなるでしょう。どのようなユメを食っても、自然と浄化してあなたの命を繋ぎます。その力を以て、これからはヒトの悪夢を食ってあげ、ヒトに吉夢を運ぶ存在となりなさい」
《ソ…ソノヨウナコトデ ヨロシイノデスカ》
「はい。私はヒトを愛するあやかしです。ヒトが幸せになることが私にとっての幸せ。あなたは私の使者として、これからはヒトを幸せにしてほしい。それが例えユメの中だけだとしても、コチラ側のヒトにとっては嬉しいことだろうから」
ユメクイが深くこうべを垂れる。薄雪は微笑み、扇子を広げて一振りした。
《……!》
瞬く間に黒いモヤが浄化され、本来のユメクイの姿があらわになった。茶色の毛に覆われた、小さなイノシシのような姿をしている。
続いて薄雪が扇子に息を吹きかけた。無数の花びらが舞い、ユメクイの中へ溶け込んでいく。ユメクイは苦し気なうめき声を漏らした。
《オオ…オオオ…》
「浄化した体でも、私のユメと妖力が清らかすぎますか。しばらく苦しいでしょうが我慢なさい」
「薄雪さま、大丈夫でしょうか…?あなたの清らかすぎる妖力は毒にもなりえます…」
「大丈夫だよ。ヒトの食べ物を口にしている今の私は、森にいた頃よりもずっと穢れていますから」
「それはそうですが…それでも清らかなことには変わりありません…」
綾目が不安げに見守っている中、ユメクイは必死に苦痛に耐えていた。青い血を吐き、ブルブルと痙攣している。大きな叫び声をあげたかと思えば、バタリと倒れて意識を失った。
「わ!死んだ!!」
「死んでいません。気を失っただけです」
ぐったりと倒れていたユメクイが最後に大量の血を吐いた。その瞬間、ユメクイの体が何倍にも大きくなり、毛が真っ白になった。内心ヒヤヒヤしていたのか、薄雪が安堵のため息を漏らす。
「良かった。ユメクイの体に私のユメと妖力が浸透したようですね」
「一気に神獣っぽくなった…」
「ユメクイ。起きなさい」
薄雪が扇子でユメクイをつつく。ユメクイは体をビクつかせ、慌てて起き上がった。
《わ、私は意識を失っていたのでしょうか。薄雪様の前でとんだご無礼を。申し訳ありません》
「かまいませんよ。気分は?」
《澄み切っています。それに…妖力が沸き上がり、今までにないほどの満腹感》
「それはよかった。さて、早速ですがユメクイ。私からのお願いです。あなたが食った、ココの女性のユメを返してあげなさい」
《御意》
「それともうひとつ。ある女性の悪夢を食ってあげて欲しい。特にシゴトの夢は一片の欠片もなく。そしてこれ以上ないほどの吉夢を。できたら毎晩」
《御意》
「あー…」
綾目は呆れた顔で主人を見上げた。何よりも価値のあると言われている夢をやすやすと差し出したのは、どうやらこのためだったようだ。
「薄雪さまはいつもそうですね」
「ん?」
「そんなことをしていたら、また喜代春に怒られますよ」
「ふふ。叱られたってやめられない。なぜならソレが私の生きている意味なのだから」
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