【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

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合宿編:一週目・ご挨拶

【389話】反省会

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「あー!楽しかった!」

「面白かったなー!!またやりてぇな!!」

「うん!!」

治癒を終えた双子とS級冒険者は、「良い汗かいたー」くらいのテンションで応接間に入ってきた。すでに回復して休んでいたダフ、ライラ、クラリッサ、シリル、ベニートたちさえもが入ってきたバケモノたちをドン引きした目で見ている。

「えーっと、今まで戦っていたのですか?」

おそるおそるクラリッサが尋ねると、カトリナがにっこり笑って「ええ」とうなずいた。子どもたちは彼らの対戦を直接見ていないが、血や泥などで汚れている服を見てだいたいのことは察した。

対戦で瞬殺された上に双子たちのバケモノ度合いを目の当たりにして子どもたちは早々に自信を無くしていた。ダフとライラでさえしょぼんと肩を落としている。その様子にかまわずカミーユが口を開いた。

「おまえら、おつかれさん。さっきは早々に決着をつけてすまなかったな。瞬発力、判断力、あとは痛み耐性をまず知りたくてな。アーサーとモニカのことはだいたい分かってるからお前らから優先的に攻撃しただけだ。こいつらに劣ってるなんて感じる必要は一切ねえ。それだけは言っておく」

「はい…」

「今回の対戦であなたたちのことはだいたい分かったわァ。それを踏まえて今後の方針を決めていくわね」

「まずクラリッサ」

「はい」

「おまえはイレギュラーなことに弱い。魔法も体術もできるのに、動揺してどちらも使えなかった。あと痛み耐性がついていない」

「はい…」

クラリッサ自身、自分が一番動けなかったことは自覚していた。学院ではトップの魔法使いなのに、この場では一番弱かった。悔しくて情けなくて、今にも泣きだしてしまいそうだった。

「クラリッサー!!そんな落ち込まなくたっていいぞお?!瞬発力と痛み耐性は鍛えたらいくらでも身につくんだからな!!」

「リアーナさん…」

「ただし!かなりの苦痛を伴うがな!それに耐えられるかは、お前次第だ!」

「…が、がんばります!!」

「よし!いい返事だ!なんたっておまえは魔法と体術を使えるんだ!育てばこえぇぞぉー!?期待してるからな!」

「はい!!」

リアーナに激励され、クラリッサはぽろぽろ涙をこぼしながら大きな声で返事をした。あのリアーナが期待してくれている、それほど士気が上がることはない。

カミーユは次にシリルに目を向けた。

「シリル」

「はい」

「お前は瞬発力は弱いが判断力はかなり良い線行ってるな。痛み耐性についてはもうちっとつけたほうがいいかもな」

「はい」

シリルはカミーユのアドバイスを真摯に受け止め頷いた。現状の自分の改善点に、落ち込むわけでも悔しがるわけでもなく、"改善するためにはどうしたらいいのか"を考えているようだった。そんなシリルを見てジルは満足げに目じりを下げる。

(いいね。とことん僕好みの子だな。これは教え甲斐がある)

「ライラ」

「ひゃいぃっ」

カミーユに呼ばれ、ライラは体をびくつかせた。怒られるのではないかとすでにガタガタ震えている。カミーユは困ったように小さくため息をつき話をつづけた。

「…おまえは瞬発力、判断力、痛み耐性のすべてが合格点だ。とくに痛み耐性についてはアーサーレベルだな」

「……!!!」

褒められると思っておらず、ライラはぱっと顔を輝かせた。カトリナもライラの頭を撫で、優しく話しかける。

「さすがA級アーチャーね。幼少時代から厳しい訓練を受けてきたのが分かるわァ。今までよく頑張ってきたわねライラ」

「~~~!!」

「改善点としては、精神力。瞬発力があっても動揺して矢の精度を欠いたらもったいねえ。あと自己肯定感を高めること」

「は、はい!」

「それと…これは親父さんから依頼されてるんだが、魔法の訓練もしてもらうぞ」

「ま、魔法…」

やる気に満ちかけていたライラが一瞬にしてしぼんでしまった。ライラの家系は、クラリッサと同じく魔法と武術の両方を極めなければ認められない。そしてライラは、魔法が大の苦手だった。

「っとに大変だよな。ライラほどの実力があればアーチャー一本でいいだろって俺も思うんだが…。まあ、一流の魔法使いに一度習ってみろ。なにかつかめるかもしれねえからな」

「はい…」

「よーし、じゃあ次。ダフ」

「はい!!!」

ダフは返事をして立ち上がった。それを見てリアーナは爆笑する。

「だはは!!なんで立つんだよ!!おもしれえなダフ!!」

「すみません!!なんか立っちまいました!!」

「立っちまいましたってなんだよ!!ぎゃははは!!」

「リアーナうるさい」

「…ダフ。お前も瞬発力、判断力、痛み耐性すべていい線いってるな。特に瞬発力と判断力に関してはアーサーレベル。痛み耐性はモニカレベルくらいか」

「え!モニカってそんなに痛い耐性あったのか?!知らなかったぞ!!…いや、確かに俺の剣を受けてもケロっとしてた…。そうか、魔法ばかりに気を取られてほかのところに目がいってなかった!」

「そういうこった。いっとくがモニカは魔法抜きにしてもわりと優秀なんだぞ。魔法耐性、痛み耐性…体術もちっとは使えるしな」

「えへへ」

褒められたモニカは照れくさそうに頭をかいた。

「話を戻すがダフ。お前は明日からアーサーと同じ特訓を受けてもらう。つまりいろいろすっ飛ばして実践ってこった」

「おおおー!!ありがとうございます!!がんばります!!」

カミーユは期待を込めた目でダフを見たあと、双子に視線を移した。

「あとはアーサーとモニカか」

アーサーとモニカはうずうずしてカミーユを見上げていた。カミーユはジトっとした目で彼らを一瞥し、先ほどとは違うぼそぼそとした声でグチグチ彼らの改善点を指摘し始めた。

「お前らなんだ?あの開始直後の反応はよぉ。おいアーサー。クラリッサがノーガードだったがどういうことだ?冷静に考えてジルに守られてるリアーナをダフと攻めるより、クラリッサを守って魔法使い2人を確保してたほうがよかったんじゃないのか?味方を見てなさすぎる。お前の瞬発力と判断力ならダフがリアーナに仕掛けに行くことくらい分かろうと思えば分かっただろ?あと定石にとらわれすぎだ。視野を広く持てよ」

「うぅぅ…」

「モニカ。お前もだ。お前がまず狙うべきはカトリナだった。カトリナをはじめに潰しとけばライラもクラリッサも落ちることはなかったからな。あとなんで負傷した仲間に回復魔法をかけなかった?攻撃することに夢中で回復魔法のこと忘れてたんだろ?リアーナの毒魔法がチンカスなの知ってるだろ?お前の回復魔法は相殺されることがねえんだよ。自分の一番の武器を頭からすっぽ抜くな。あとアーサーが俺に切りかかったとき、なぜ一手目で毒魔法を使わなかった?それも、俺がお前の毒魔法が効くこと忘れてたんだよなあ?」

「ひぃぃん…」

「あとアーサーは僕とカトリナに苦手意識を持ちすぎ。表情でわかったよ。僕に適わないって内心思ってること。そんなかわいい顔されて僕はニヤケるのを抑えるのに必死だった」

「モニカ!やみくもにでかい魔法打ったって魔力擦切らすだけだって前に教えただろぉ?もっと頭使って打て!魔力を無駄遣いすんな!あとジルきもちわるっ」

「アーサー、モニカ。あなたたちずいぶん訛っちゃってるじゃないのォ。生まれ持った能力に頼りすぎだわ。この1か月でみっちりこってり、鍛えなおしましょうねェ」

「「ひぇぇぇ…」」

先ほどまで能天気な顔で合宿を楽しんでいたアーサーとモニカだったが、カミーユたちの"しっかりと叩きなおしますね"という意思を感じ取り縮み上がった。これはアーサーとモニカにとっても、過酷な合宿になりそうだ。
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