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2章 魔王討伐
2-2 対峙
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父は、議員たちのこわばった顔を見回した。
「ケッティ伯爵には、食料の提供を頼みたい」
「ひっ!」
「グレイモア侯爵は、護衛の兵士を提供してください」
「うっ……」
「ほかにもありますよ。聖女たちが留守の間、王都を守るための私兵の提供と……」
父が口を開くたび、議員たちは肩を縮こめる。
「魔王を倒すためです。協力いただけますね」
評議室の空気が、さらに重くなる。
みんなカツカツで生活しているのだろう。
その中で、たぶん私だけは別のことで落ち込んでいた。
(そうだよね。ゲームなら移動コマンドを選ぶだけだから、意識してなかったけど。現実なら色々あるよね)
先日の大聖堂は、入り口までしか入らなかった。
だから日帰りで往復できたのだ。
魔王の棲家まで行くなら、片道二日はかかるだろうか。
物資も人手も、それなりに必要になる。
前世では旅行に行かなかったから、考えつかなかった。
だって外に出たらゲームできないし。
議員たちに続いて私もため息が出てしまう。
すると、私の隣にいるレオナルドが立ち上がった。
「魔王を倒せば、食料や人材の不足はすべて解決する。各々、出せる分だけでいい。協力してくれないか」
急に堂々としたと思ったら、足がものすごく震えている。
王様、頑張ってるなあ。
「出せるだけでよろしければ……」
「魔王を倒すためですから……」
父の鞭とレオナルドの飴で、議員たちは渋々と頷いた。
その後、誰が何を提供するかを細かく決めて、議会は終了。
私が廊下へ出ると、レオナルドとリリィが追いかけてきた。
「アナベル、私もエルディリスの兵士を連れて行くわ。少しでもアナベルを支えたいの」
「僕も親衛隊と一緒に行くよ」
「いや、そこまでは……」
「アナベル、甘えておけ」
声をかけられて振り返ると、父が立っていた。
「でも私、魔物なら──」
「近頃、盗賊が増えてきたらしい」
「えっ!な、なんで?」
「町や村の外で魔物が減った分、潜伏しやすくなったのだろう」
「……なるほど」
それならたしかに護衛がいる。
精霊は暴走でもしない限り、人間を害さない。
賊に襲われたら、私は何もできなくなる。
「アナベル!」
当然、リリィが私の肩をガシッとつかんだ。
「な、何?」
「私、聖女の資質は弱いでしょ?だから、代わりに魔法の素質がないか調べたの。そうしたら、暗黒魔法が使えるってわかったのよ」
「えっ、そうなの?」
「ええ。だから盗賊が襲ってきたら、麻痺させたり眠らせたりできるわ」
「それはありがたいけど、暗黒魔法って世間的に、その……」
「色々言われるでしょうね……特に貴族から。でも、殺されるわけじゃないもの。ルークの励みにもなるだろうし、頑張るわ!」
その一言で、私は目を丸くした。
レオナルドもぽつりと呟く。
「……リリィ、強くなったね」
マチルダの抑圧がなくなったせいだろうか。
か弱い彼女も好きだったから、ちょっと複雑だけど。
下を向いたままよりはずっといい──と、リリィを見つめる。
すると、彼女は華奢な腕でガッツポーズを披露した。
「だって、私もアナベルみたいに強くなりたいから!」
私の影響だった!
「ごめん、レオナルド……花のようなヒロインを竹みたいにしちゃって……」
「何が?」
レオナルドはニコニコしている。
妹の成長を見守るお兄ちゃんみたいな気持ちらしい。
喜んでくれてるなら、まあいいか。
「そういうことだから、私も頼りにして!」
「僕も国王としてしっかりしなくちゃな」
「わ、わかった。じゃあよろしく」
やる気あふれるレオナルドとリリィに別れを告げ、準備が整う日を待った。
◇
──そして、当日。
イザークもついていくというので、私は彼を同行させた。
魔王討伐の噂が王都に広がり、彼の耳にも入ったらしい。
頼りにはなるけど、これまでのことを考えると無茶をしそうで怖い。
私は馬車の中で、イザークにしつこく言い含めた。
「無理しないでよ。HPが三十%以下になったら駄目!」
「ひっとぽいんと……?」
「体力のこと!」
「承知しました」
本当に大丈夫かな。
でも魔王はさっさと倒せるだろうし。
今回はイザークの心配はしなくていいか。
あまりの大所帯に、盗賊は偵察にすら来ない……という話を小耳に挟み、私は完全に油断していた。
何も案ずることはない、と。
その考えは外れた。
しかも、まったく予想外の方向に。
魔王の棲家にたどり着くと、富士山みたいな形の山から、タール様の塊が盛り上がり、漆黒の巨人が現れた。
ドラゴンの角と尾、羽が生えていて、さながら竜人だ。
膝をついているのに、山を二つ重ねてもまだ足りないほど大きい。
その巨人は──魔王は、光る目で私たちを見下ろし、真っ黒な口を開けてニヤニヤと笑った。
「アルデリアの奴らがもう来たか」
意外とイケボだ。
ゲームの魔王はボイス無しだったから知らなかった。
もう少し聞いていたいけど、そうもいかない。
リリィにペンダントを借りて、こっそりと力を溜める。
私が最初の一撃を食らわせようとした時、魔王はある一点に目を留めた。
そして、不気味なほど楽しそうに笑った。
「イザーク、お前も来たんだな。家族の次は、俺の首を落とすのか?」
「ケッティ伯爵には、食料の提供を頼みたい」
「ひっ!」
「グレイモア侯爵は、護衛の兵士を提供してください」
「うっ……」
「ほかにもありますよ。聖女たちが留守の間、王都を守るための私兵の提供と……」
父が口を開くたび、議員たちは肩を縮こめる。
「魔王を倒すためです。協力いただけますね」
評議室の空気が、さらに重くなる。
みんなカツカツで生活しているのだろう。
その中で、たぶん私だけは別のことで落ち込んでいた。
(そうだよね。ゲームなら移動コマンドを選ぶだけだから、意識してなかったけど。現実なら色々あるよね)
先日の大聖堂は、入り口までしか入らなかった。
だから日帰りで往復できたのだ。
魔王の棲家まで行くなら、片道二日はかかるだろうか。
物資も人手も、それなりに必要になる。
前世では旅行に行かなかったから、考えつかなかった。
だって外に出たらゲームできないし。
議員たちに続いて私もため息が出てしまう。
すると、私の隣にいるレオナルドが立ち上がった。
「魔王を倒せば、食料や人材の不足はすべて解決する。各々、出せる分だけでいい。協力してくれないか」
急に堂々としたと思ったら、足がものすごく震えている。
王様、頑張ってるなあ。
「出せるだけでよろしければ……」
「魔王を倒すためですから……」
父の鞭とレオナルドの飴で、議員たちは渋々と頷いた。
その後、誰が何を提供するかを細かく決めて、議会は終了。
私が廊下へ出ると、レオナルドとリリィが追いかけてきた。
「アナベル、私もエルディリスの兵士を連れて行くわ。少しでもアナベルを支えたいの」
「僕も親衛隊と一緒に行くよ」
「いや、そこまでは……」
「アナベル、甘えておけ」
声をかけられて振り返ると、父が立っていた。
「でも私、魔物なら──」
「近頃、盗賊が増えてきたらしい」
「えっ!な、なんで?」
「町や村の外で魔物が減った分、潜伏しやすくなったのだろう」
「……なるほど」
それならたしかに護衛がいる。
精霊は暴走でもしない限り、人間を害さない。
賊に襲われたら、私は何もできなくなる。
「アナベル!」
当然、リリィが私の肩をガシッとつかんだ。
「な、何?」
「私、聖女の資質は弱いでしょ?だから、代わりに魔法の素質がないか調べたの。そうしたら、暗黒魔法が使えるってわかったのよ」
「えっ、そうなの?」
「ええ。だから盗賊が襲ってきたら、麻痺させたり眠らせたりできるわ」
「それはありがたいけど、暗黒魔法って世間的に、その……」
「色々言われるでしょうね……特に貴族から。でも、殺されるわけじゃないもの。ルークの励みにもなるだろうし、頑張るわ!」
その一言で、私は目を丸くした。
レオナルドもぽつりと呟く。
「……リリィ、強くなったね」
マチルダの抑圧がなくなったせいだろうか。
か弱い彼女も好きだったから、ちょっと複雑だけど。
下を向いたままよりはずっといい──と、リリィを見つめる。
すると、彼女は華奢な腕でガッツポーズを披露した。
「だって、私もアナベルみたいに強くなりたいから!」
私の影響だった!
「ごめん、レオナルド……花のようなヒロインを竹みたいにしちゃって……」
「何が?」
レオナルドはニコニコしている。
妹の成長を見守るお兄ちゃんみたいな気持ちらしい。
喜んでくれてるなら、まあいいか。
「そういうことだから、私も頼りにして!」
「僕も国王としてしっかりしなくちゃな」
「わ、わかった。じゃあよろしく」
やる気あふれるレオナルドとリリィに別れを告げ、準備が整う日を待った。
◇
──そして、当日。
イザークもついていくというので、私は彼を同行させた。
魔王討伐の噂が王都に広がり、彼の耳にも入ったらしい。
頼りにはなるけど、これまでのことを考えると無茶をしそうで怖い。
私は馬車の中で、イザークにしつこく言い含めた。
「無理しないでよ。HPが三十%以下になったら駄目!」
「ひっとぽいんと……?」
「体力のこと!」
「承知しました」
本当に大丈夫かな。
でも魔王はさっさと倒せるだろうし。
今回はイザークの心配はしなくていいか。
あまりの大所帯に、盗賊は偵察にすら来ない……という話を小耳に挟み、私は完全に油断していた。
何も案ずることはない、と。
その考えは外れた。
しかも、まったく予想外の方向に。
魔王の棲家にたどり着くと、富士山みたいな形の山から、タール様の塊が盛り上がり、漆黒の巨人が現れた。
ドラゴンの角と尾、羽が生えていて、さながら竜人だ。
膝をついているのに、山を二つ重ねてもまだ足りないほど大きい。
その巨人は──魔王は、光る目で私たちを見下ろし、真っ黒な口を開けてニヤニヤと笑った。
「アルデリアの奴らがもう来たか」
意外とイケボだ。
ゲームの魔王はボイス無しだったから知らなかった。
もう少し聞いていたいけど、そうもいかない。
リリィにペンダントを借りて、こっそりと力を溜める。
私が最初の一撃を食らわせようとした時、魔王はある一点に目を留めた。
そして、不気味なほど楽しそうに笑った。
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